朴槿恵(パククネ)大統領が、今月24日に野党が主導し国会本会議で可決されたキム・ジェス農林畜産食品部長官に対する解任建議案を、受け入れないことにしたと、大統領府が25日、公式発表した。国会で決議された解任建議案を受け入れない、憲政史上初めての大統領になったのだ。これは野党を「妨害勢力」と規定し、事実上の「全面戦争」を宣言したもので、朴大統領自ら「非常時局」であるとして安保・経済危機を強調しながら、かえって政局混乱や国民の不安感を高めているという批判の声もあがっている。
チョン・ヨングク大統領府報道官は、朴大統領が解任建議の受け入れを拒否した理由として、職務能力とは別に解任が建議されたことや人事聴聞会の過程で疑惑がすべて解消されたこと、セヌリ党が今回の解任建議案を受け入れないことを要請したことを挙げた。朴大統領は前日、大統領府で開かれた「2016長官・次官ワークショップ」でも、「非常時局に農林部長官の解任建議案を通過させたことは遺憾だ」として、解任建議案は「不当な政治攻勢」だと反論した。朴大統領はまた、「第20代国会には国民が望む共生の国会ははるかに遠いようだ」として、「協治の終息」を事実上宣言した。
朴大統領のこのような強硬な対応には、キム・ジェス長官の解任建議案を受け入れた場合、与党が過半数割れした第20代国会で、野党に政局の主導権を奪われる恐れがあるとの判断が働いたものとみられる。
しかし、国会を通過した長官解任建議案が大統領によって拒否されたことは、歴代のどの政権でもなかったことだ。特に、1987年の改憲で解任建議の強制性が弱まってからも、解任建議案が可決されたイム・ドンウォン長官(2001年)とキム・ドゥグァン(2003年)長官は自ら辞任した。当時も、解任建議の事由をめぐり、与野党の間で正当性について攻防が繰り広げられたが、金大中(キムデジュン)大統領と盧武鉉(ノムヒョン)大統領は共に解任建議を受け入れた。最高権力者である大統領が、その法的拘束力にかかわらず、与党が過半数割れした国会で野党の国政協力を得るために行った政務的判断であり、高度の政治行為だったのだ。盧武鉉政権時代の2003年当時、大統領府で勤務したある関係者は、「野党の協力が必要な状況で、他の国政全般の事案を考慮し、納得はできなかったが、やむなく受け入れた」と説明した。
安保・経済の同時危機と「影の実力者」疑惑などの難局で、朴大統領が野党と対決構図を作れば、その被害はそっくり国民に及ぶとの批判の声も上がっている。外国語大学のイ・ジョンヒ教授(政治外交学)は「北朝鮮の核・ミサイル危機により、国民の間で不安が高まっているのに、大統領が対話のドアに鍵をかけている」として、懸念を示した。韓神大学のユン・ピョンジュン教授(政治哲学)も「朴大統領自らが政争を誘発して、内政と外交の動力を消尽し、自らを孤立させて総体的な国家危機状況をもたらしている」と指摘した。
朴大統領が強硬な態度を崩さない中、セヌリ党も国会議事日程を拒否しており、26日から始まる国政監査も空転を避けられなくなった。
韓国語原文入力: 2016-09-25 22:05