今月8日、韓米両国が韓国にTHAAD(<サード>高高度防衛ミサイル)を配備すると発表した直後、日本政府の公式立場の発表を待っていた。日本のマスコミがしばしば使う表現どおり、韓国外交は現在「イタバサミ(板挟み)」になっている。日本語で「イタ」は板、「ハサミ」は間に挟まるという意味だ。二枚の板の間に挟まって身動きできない状態。ここで二枚の板とは、他でもない朝鮮半島を巡る二つの大国、米国と中国だ。
この日、首相官邸の記者会見に出てきた萩生田光一・官房副長官は、韓米のTHAAD配備決定に対して「この件に関し米韓協力が進展することは、地域の平和と安定に寄与することで、日本もこの決定を支持する」と述べた。続いて「中国の反発が予想される」という質問には「米韓によって配備が決定されたのであり、第3国に対して私たちがコメントすることではない」というコメントで終わった。
「コメントすることではない」または「コメントを控えたい」という表現は、特定の懸案と距離をおこうとする時に日本政府が慣用的に使う表現だ。しかし、日本は自国と格別の関連がない事案にも、それが自国に役立つと感じる時は「コメントは控えるが、一般論として言うならば…」という但し書を付けて立場を明らかにする。聞く人によってその評価は分かれるだろうが、萩生田氏の反応から「中国の反発は韓国が適宜対処すること」という冷たさが伝わってきた。
過去4年間続いた韓日の軋轢(あつれき)の根本原因は、中国に対する両国の路線の対立にあったと言える。中国の浮上に対抗するために、日本政府は米日同盟の強化という道を選んだ。日本は2015年4月、米日防衛協力指針を改定し集団的自衛権を行使できるようにした。それにより米日同盟は名実共にグローバル同盟に格上げされた。
これに対し韓国は、核とミサイル実験を繰り返す北朝鮮をコントロールするため、中国との関係強化に出た。おりしも慰安婦問題など歴史懸案に火が点き、一時は韓中が手を握って日本を牽制するように見えた。こうした状況に対して日本は露骨に不快感を示し、「それで、韓国はどっちの側か」と執ように問い質した。いわゆる「対中傾斜論」だ。米中の間でそれなりの「均衡外交」を繰り広げようとした韓国に向かって「それでうまくいくかお手並み拝見」という日本の政府とマスコミの訓戒を逐一書き写すことはできない。
解放以後70年以上続いた複雑極まる韓日外交史の中で、最もあきれるエピソードは駐韓日本大使を務めた小倉和男氏が書いた『秘録・日韓1兆円資金』という本に出てくる。12・12クーデターを通じて政権を取った全斗煥(チョンドファン)政権は、1981年4月、日本に向かって突然「韓国は自由陣営の主軸として国家予算の35%を国防費に使っている。それによって最大の恩恵を受けている国は日本」とし、100億ドルの資金を出せと要求する。これに対する日本政府の最初の反応は「韓国政府が狂った」(当時アジア局長の木内昭胤氏)だったが、公式と秘密ラインを織り交ぜた1年半にわたる奇妙な交渉の末に、結局40億ドルの借款を供与することになる。
韓国にTHAADが配備されて最大の利益を得る国は他でもない日本だ。在韓米軍の資産のTHAADを通じて得られる情報は、リアルタイムで米日間で共有されるためだ。THAADの導入により「板挟み」になった韓国は、国家の存亡をかけた選択を強いられているが、「こっちに来い」と執拗に口を挟んできた日本は知らぬフリを決め込む。国際関係とは本来そういうものだということは分かる。それでも呆れて言ってみた。