北朝鮮人権財団の設立も合意したが
対北朝鮮ビラ散布団体の支援が物議
与野党が合意直前の北朝鮮人権法案の表現を巡り極度の神経戦を繰り広げているのは、この法案の基本原則に対し異見があるためだ。 「北朝鮮人権増進」と「南北関係発展(改善)・朝鮮半島平和定着努力」が国家の責務ということについては与野党の意見は一致している。 だが、法案でこの二つの関係をどう設定するかについて両者が激しく対立している。 セヌリ党は「南北関係」と「平和定着」を「北朝鮮人権」の付随的概念として規定しようとしている。 反面、共に民主党は二つを並行させなければならないと強く主張している。
法の条文の表現より、含まれる意味の差ははるかに大きい。 セヌリ党と政府の見解どおり「国家は北朝鮮の人権増進努力と共に南北関係の発展と朝鮮半島の平和定着のためにも努力しなければならない」とすれば、北朝鮮人権増進という目的が南北関係や平和定着に先んじることになり、「北朝鮮圧迫用法」として悪用される素地が大きいとするのが南北関係の専門家と人権学者たちの憂慮だ。 国際的に孤立して体制的劣勢に置かれた北朝鮮は、北朝鮮人権法案制定の動きを「体制統一の目的を実現するための対決的内容」(労働新聞1月5日付)として吸収統一の意図が隠れていると見て拒否感を示している。 一方、共に民主党は「国家は北朝鮮の人権増進努力を南北関係改善と朝鮮半島の平和定着努力と共に推進しなければならない」という表現を要求している。 南北関係・平和定着を人権増進活動の限界線として設定しているのだ。 北朝鮮人権問題の研究者でソウル大平和統一研究院のソ・ボヒョク研究教授は25日、「人権も平和も人類普遍の価値だ。“人権原理主義”では人権も改善されず平和も保証されない」と話した。 国連の北朝鮮人権決議も人権侵害者に対する刑事処罰に言及しているが、同時に南北和解・平和会談なども求めている。
与野党は、統一部の傘下に北朝鮮人権財団と北朝鮮人権記録保存所を設置する方案には合意したが、まだ論議の余地がある。 まず、財団が北朝鮮人権団体を金銭的に支援できるようになることにともなう弊害が憂慮される。 25日、北朝鮮脱出難民人権連合の幹部2人が南北ハナ財団の補助金1億3500万ウォン(約1340万円)を流用した疑いで送検されるなど、一部の北朝鮮人権団体のモラルハザードが俎上に上がっている。 政府の支援金が一部の北朝鮮人権団体の対北朝鮮ビラ散布財源として使われる可能性も憂慮される。