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汚職疑惑で攻勢…朴大統領の計算された“病床政治”

登録:2015-04-29 01:53 修正:2015-04-29 08:29
朴槿恵大統領が再補欠選挙を翌日に控えた28日、国民向けのメッセージを発表し、「最近とソン・ワンジョン氏の2度にわたる赦免が問題となっている」と述べた//ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)大統領が再補欠選挙を翌日に控えた28日、国民に向けたメッセージを通じて「最近、故ソン・ワンジョン氏に対する2度にわたる赦免が問題になっている」とし、「私たち(韓国)の政治をもう一段階発展させるため、この問題についてもしっかりと真実を明らかにし、制度的に是正しなければならない」と述べた。事実上、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権末期に行われた特別赦免過程の調査を指示したものであり、野党が反発するなど、政局は激しい対立局面に入った。朴大統領はまた、「金品疑惑などがこれまでどのように蔓延してきているのかなど、すべて明らかにすべき」だとし、政界全般に対する不正腐敗清算を通じて「ソンワンジョン・リスト」問題に対処する意向も明確に示した。

 朴大統領はこの日午前、キム・ソンウ大統領府広報首席を通じて伝えた対国民メッセージで「国政の空白を最小限に抑えるために、これ以上先延ばしできない事案なので、残念だが、首相の辞意を受け入れた。今回の問題で国民の皆様にご心配をおかけしたことを遺憾に思う」と述べた。続いて「検察が今回の機会に、必ず国民の疑惑を解いてくれることを願う」とし「特別検事は、現在行われている検察の捜査を見守った後、国民的疑惑が残るなら、与野党が合意して当然行わなければならないと思う」と付け加えた。朴大統領が「政界全般捜査」という既存の態度を維持したまま、「赦免捜査」という指示をもう一つ出したのだ。

 一方、朴大統領はソンワンジョン・リストに側近の名もあることに対して、遺憾表明や謝罪はしなかった。李完九(イ・ワング)首相の辞任についても「残念だが、国政空白を最小限に抑えるために」受け入れたと、線を引いた。メッセージを代わりに伝えたキム・ソンウ広報首席も、与野党が(大統領)謝罪を求めたことについて、「具体的対象、つまり何に対して謝罪するのかについて考えてみる余地がある。現在捜査中なので、過程を見守りながら適切な立場を明らかにする時があると思う」とし、すぐには謝罪する意思がないことを明らかにした。

 朴大統領の意中が“真摯に理解”を求めるのではなく、“戦線拡大を通じた焦点ぼかし”を図ることにあるのは、今回のメッセージの核心が「過去の政権と野党代表を狙った露骨な捜査指針」という点でも繰り返し確認されている。朴大統領は、「故ソン・ワンジョン氏の相次ぐ赦免は、国民も納得し難く、法治の毀損と国の経済も混乱をもたらすとともに、結局今日においてあってはならないことが起こるきっかけを作った」とし「この問題についてもしっかりと真実を明らかにすべき」だと強調した。ソン前会長の赦免過程については、盧武鉉政権と李明博(イ・ミョンバク)政権、そして文在寅(ムン・ジェイン)新政治民主連合代表の間で責任問題になっていることを考慮すると、実質的に彼らを狙った捜査を指示したものと解釈できる。また、朴大統領のこのような見方には「誤った赦免が、ソン・ワンジョン前会長がロビーできるきっかけを作った」というこじつけの論理まで含まれている。このような論理的な飛躍を根拠に“焦点ぼかし捜査”の指示を下したのだ。検察がどのような結果を出しても、政治的中立性を疑われるような状況を、大統領自ら作ってしまったとも言える。

 ソン前会長が自ら命を絶つ前に公に告発した「2012年の大統領選挙資金」や「2006年ドイツの出張旅費」など、自分に関係のある内容はさておき、前政権の赦免をピンポイントで言及したのも非常識なことだ。朴大統領が自ら出て、自分の側近に向けた刃先を2つの前政権と文在寅新代表に向けさせる格好になったからだ。

 結局、朴大統領のこの日のメッセージは、自分の側近が大勢かかかわった今回の波紋を突破するために、野党との“強硬対決”を繰り広げるということであり、3年目の国政を不正腐敗清算によって治めていくという宣言に違いない。朴大統領がメッセージの末尾に「公務員年金改革と民生法案の速やかな処理」を促したことが空しく聞こえるのも、そのような理由からだ。大統領府と与野党間の長期的な対立局面は火を見るよりも明らかな状況だ

キム・ソンウ大統領府広報首席(前列中央)が28日午前、春秋館で、いわゆる「ソンワンジョン・リスト」と関連した朴槿恵大統領の対国民メッセージを発表した後、記者の質問を聞きながら、歩いている=青瓦台写真記者団//ハンギョレ新聞社

 朴大統領はまた、ソンワンジョン・リスト問題以降、これまで2回も言及したように、今回も事態を「過去の政界全般の問題」だとひっくるめて批判した。事態の核心をずらしていく典型的な“幽体離脱話法”であり、焦点ぼかしだ。

 「今回は必ず過去から続いてきた不正と腐敗の清算をして、新しい政治改革を成し遂げる」とか「これまで蔓延してきた地縁、学縁、人脈などの私たち(韓国)の政治文化」、「金品疑惑などがこれまでどのように蔓延してきたのかなどをすべて明らかにして」などに言及した部分が代表的である。「政界の暗い過去」に照準を合わせているが、その過去の政治の真ん中に自分がいたことはすっかり忘れたようだ。ソンワンジョン・リストで提起された疑惑が自分の大統領選挙資金や海外出張などに関するものなのに、自分は全く関係がないというような態度だ。

 朴大統領の幽体離脱話法は、ここで終わらない。いかなる形であれ自分自身とかかわる問題を、第三者または政界全体の誤りであるかのように規定し、この問題を解決しようとする“改革の主体”として自分自身を描く態度を見せた。朴大統領は、「今回の機会に政争と腐敗で点綴された政治史を正す」という覚悟を明らかにしたが、自分や内部に対する省察は示さなかった。

 健康状態が悪く絶対安静が必要とされていた朴大統領が再補欠選挙前日、参謀に代読してもらってまで強硬なメッセージを出したことについても、「選挙を意識したタイミング」という批判が出ている。朴大統領がこの日注文した「赦免関連疑惑捜査」も、実際の捜査では立証するのが非常に難しい問題であることから、実際には選挙を念頭に置いた対外メッセージとして捉える見方もある。

 「特検を受け入れる」という朴大統領の約束も、内容を詳しく検討して見ると、実際には野党や外部から求めた内容が全く反映されていない。厳正な特検のために、大統領が自ら身を削るようなことは何もしない、という批判が提起される理由だ。また、野党が要求してきた秘書室長の辞任や民情首席と法務長官の捜査関与禁止などは徹底的に無視され、せめて「私自身も、必要なら捜査せよ」という儀礼的な表現や「特検推薦権を放棄する」という破格的な提案もなかった。

ソク・チンファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-04-28 22:27

https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/688941.html  訳H.J

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