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[ルポ]仁川空港の拾得物「税関競売」

登録:2015-03-15 21:48 修正:2015-03-16 07:52
2014年仁川空港税関競売現況 アクセサリー53件、化粧品82件、酒類167件。//ハンギョレ新聞社

 9日午後3時、仁川空港旅客ターミナル地下1階。 「滞貨倉庫」(Customs Warehouse)という表札の懸かった事務室の鉄製ドアは堅く閉ざされていた。 ここには税関が空港免税区域で拾得落し物や、入国場で通関出来なかった物品が保管されている。 これらの物品は所有者が一定期間(通常1~2カ月)以上訪れず「税関競売」に出されたものだ。

 「トン、トン、トン」。人の気配を知らせるノックの音がすると職員が用心深くドアを開けた。「税関競売物品の供覧にきました」。仁川空港税関は翌日の10日に今年の第1次4回目競売を開く予定だった。 入札予定者は競売前日の午後1~5時に滞貨倉庫を訪問し物品の状態を確認できる。

 ドアを開けて入ると約200平方メートルの空間に化粧品、酒、カバン、香水、カミソリ、サングラス、食料品、たばこなど、あらゆる種類の物品が並べられていた。6列に整列した3段のスチールラックでも足りず、床のあちこちに新しい主人を待つ物品が散在していた。 滞貨倉庫の管理人は「仁川空港は一日で飛行機340便、4万人が入国する。 一便あたり拾得物が一件だけ出てもかなりの量だ。 大人が1、2人入るほどの箱4個が月に一回ずつ競売物品としてこちらに入ってくる」と語る。

 物品の競売価格は専門鑑定人が鑑定した価格に税金を付加して決められる。 競売回数が一回増す毎に最初の競売価格から10%ずつ価格が下げられる。競売は年に5次(各次、一週間間隔で6回競売)まである。 次数が変わるたびに競売物品は入れ変わる。 例えば1次1回の競売価格が1万ウォンだった物品は、1次2回では9000ウォン、1次3回では8000ウォンと1000ウォンずつ安くなる。

 税関の競売はこのように税関を訪問する一般入札もあり、インターネットを通した電子入札も可能だ。 電子入札は2005年12月から留置物品を効果的に処理する趣旨で導入されたが、一般入札に比べて物品が少ない。 仁川空港税関のある関係者は「電子入札は一般人の便宜のために導入した。 あえて直接物品の状態を確認しなくても良い品名と規格が決まったものだけを出す」と話した。 関税庁が運営する「ユニペス」(portal.customs.go.kr)で入札できる。

 この日、滞貨倉庫を訪れた理由は、競売物品の中に入札してみることにしたニコンのカメラ(D3200)とレンズ(18-55ミリ)の物品状態を確認するためだった。競売物品は競売2週間前に該当税関のホームページ競売広告で見ることができる。 供覧するには供覧前日に滞貨倉庫(032-740-4135)に電話し、あらかじめ頼んでおけば良い。今年の1次競売には計56点が出された。

仁川空港税関倉庫のラックに競売する外国産酒類が陳列されている。//ハンギョレ新聞社

 物品を直接確認してみると、疵もなく包装状態も良かった。 問題は価格だ。 ニコンカメラの1次1回競売価格は29万7000ウォン(約32000円)、同レンズは8万3160ウォン(約8900円)だった。 今回は1次の4回だったため、それぞれ17万8200ウォン(約19000円)、4万9896ウォン(約5400円)まで値が下がっていた。 インターネット価格比較サイトで見てみると、市中最低価格はそれぞれ41万1560ウォン、8万2450ウォンだった。 この日の供覧台帳を見ると滞貨倉庫を訪れた人は一人だけだった。 入札競争者が少ないようで、まら2回残っているので価格が最低になる1次6回競売予定日(3月24日)を狙うことにして、今回の競売には参加しないことにした。

 滞貨倉庫で1次競売物品を確認していると、そのそばにいっぱいに置かれた洋酒が自然に目に入った。 バレンタイン30年モノ3本を筆頭に、グレンフィディック21年、ジョニーウォーカーゴールドラベルなど有名洋酒が並んでいた。 管理人に「いつ競売するか」と尋ねると、「今後2週間後に行われる予定だが、競売予定価格はまだ決まっていない」という答を聞いて、2週後の訪問を約束した。

鑑定価格に税金を付加し競売開始
売れなければ10%ずつ下がり、6回目には半額

競売の2週間前にホームページで物品確認
税関訪問せずに電子入札も可能

6回目も入札流れになれば報勲公団に
高価品が多く、物量も多くない

 翌日の10日午前10時、仁川空港貨物庁舎2階の競売場。 この日、競売場には計4人の入札者が現れた。 通常は価格が大幅に下がる5,6回に入札者が多いという。 仁川空港税関通関支援課は午前10時までに競売場に入った人に限り入札資格を与える。 入札書の提出が締め切られれば直ちに最高額を書いて出した入札者に落札される。 落札者は代金を納付した後に物品搬出証を受け取り滞貨倉庫に行き物品を手にすることになる。

 この日の落札物品は計3点。 落札物品を見ると、いったいどういうわけなのか? 何故か目をつけていたニコン カメラとレンズが含まれていた。 ニコンカメラは17万8200ウォン、レンズは4万9900ウォンで落札者のふところに抱かれた。様子見作戦を展開してもっと安く買おうとしたが不覚を取ったようだ。 忍耐心と決断力のコントロールに関する“初歩的”ミスだった。 この日、他の落札物品であるイヤホンは入札者2人が並んで入札した結果、価格を高く書いて出した側が持っていった。

 全国の税関で次数別に最後の6回競売まで行って、結局入札流れとなった物品は全て税関委託物品販売指定機関である報勲福祉医療公団(bohunshop.or.kr)へ渡される。ここでは販売されるまで競売を行うことになる。 公団は事業者登録証を持つ卸小売業者には電子入札で競売を進め、一般人に売る物品は陳列販売(オンライン販売を並行)を行う。 ソウル・江南(カンナム)区 鶴洞路(ハットンロ)の税関委託物品販売場(平日午前9時30分~午後6時30分営業)で陳列販売物品を見て買うことができる。 公団の電子入札とオンライン購買を行うには、個人も企業会員も認証手順を踏んで会員加入しなければならない。

 報勲福祉医療公団の年度別委託販売額を見れば、2012年56億ウォン、2013年62億ウォン、2014年72億ウォンと年々増加している。

 公団は税関から委託物品が入ってきた日から一カ月過ぎれば価格を10%ずつ下げて、その後10日が経過するたびに10%ずつ価格を下げる。 全国各税関の競売で100ウォンの物品が6回まで入札流れとなり価格が50%下がり50ウォンで公団に渡されれば、一カ月後には40ウォンに下がり、その後10日が過ぎるたびに10ウォンずつ値段が安くなるという話だ。 ただし物品ごとに価格の引き下げ時点が異なり、仕様が変わり生産終了した一部の品目は例外的に値が高い。

 公団委託物品は種類が多くないので、気合いを入れて訪問してがっかりするケースが多いという。 実際、一般人を相手にした公団の税関物品ショッピングモールを調べれば、数百万ウォン台の高価時計やカバン、衣類が大部分で、雑貨類など関心を持つに足る中低価格物品は多くなかった。 公団流通事業団のある関係者は「基本的に物量自体が多くない。 各入札ごとに物品が20件程度に過ぎない」と話した。

仁川/キム・ジョンピル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/682263.html 韓国語原文入力:2015/03/15 15:56
訳J.S(3194字)

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