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[コラム]賃金凍結で思惑異なるサムスンと政府

登録:2015-03-08 23:07 修正:2015-03-09 06:51

 先月26日、サムスン電子が今年の社員の賃金を凍結すると発表した。「予測不能の経済状況を突破するため」と説明された。 昨年、サムスン電子の営業利益は前年より31.9%減少した。減って25兆ウォン(約2兆7000億円)になった。ある証券会社の研究員は「危機意識を感じるに足る状況だ。あって不思議でない経営判断と思う」と話した。別の研究員は「赤字が出たのでもなく、20兆ウォンを超える利益が出たのに、適切な措置だとは思えない」と話した。 二人が意見の一致を見た部分がある。 「サムスンは今は本当に政府の顔色を見なくなったようだ」ということだ。

 チェ・ギョンファン副首相兼企画財政部長官は昨年7月の就任以後、経済が生きるためには家計所得が増えなければならず、そのためには企業の賃金引き上げが必要だと繰り返し強調してきた。 勤労所得増大税制、企業所得還流税制のような複雑な名前の税制まで作った。 今年、公務員の給与を3.8%引き上げもした。 チェ副首相は「そのような税制導入や公務員報酬引き上げは、政府が企業に賃金を上げる必要があるというメッセージを強力に与えることが本当の目的」と話した。

 このような状況であれば、誰が見ても政府の体面が丸つぶれになった。 企画財政部は公式的には「企業の自律的判断にコメントすることは適切でない」と明らかにしたが、心中は穏やかでない。 ある関係者は「25兆ウォンの利益を出した企業が賃金を凍結してしまったので、我々のシグナルが他の企業に受け入れられるか」と話した。 問題はサムスン電子自体より、“1等企業”のこのような決定がサムスン電子の協力業者数百社をはじめ、他企業に広がる可能性だ。 別の関係者は「サムスンが我々の言うことを聞くか。不快だが手段がない」と自嘲した。

 別の解釈もあるだろう。 ある専門家は「これまでのサムスンの行動パターンに照らしてみれば、今回の発表をする前に政府や大統領府の幹部とあらかじめ協議し了解を得た可能性が高い。 協力業者支援、投資や配当など他のカードを提示したかもしれない」と話した。 彼は「特に今のようにイ・ジェヨン副会長の継承問題がかかっている敏感な時期に、政府と対立することを願いはしないだろう。 今回のことを“経済権力の傲慢”とする見方は正確でない」と話した。

 内部的にどんなことが起きているかは分からない。 少なくとも今までサムスン電子が外国人と大株主に恩恵が集中する配当拡大の他には特別な方案は発表していない。 他のサムスン系列会社が続々と賃金凍結に乗り出しているだけだ。 チェ副首相が4日、改めて賃金引き上げ要求発言をしたが、韓国経営者総協会はその翌日に「賃金引き上げは最小化する必要がある」と真っ向から対立して見せた。

アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長//ハンギョレ新聞社

 企業が政府の言うことを聞く“ふり”でもした時期が終わったとすれば、互いに“クールに”マイウェイを行くのも一つの方法だ。 企業が自分たちの事情により“自律的な”判断を下すように、政府も政府がしなければならない仕事をすれば良い。 賃金引き上げを強要する手段はないが、最低賃金は政府の意志どおりに方向を定めることができる。 幸い久しぶりに政府と与野党が揃って最低賃金を大幅に引き上げる必要があるということで意見の一致を見たようだ。 大企業に対して税金を割り引く非課税・減免規模が適正なのか、“企業の負担”を名分に法人税を現在の水準に置いておくのが妥当かを確かめてみる必要がある。 大企業と中小企業の格差を減らすための制度強化も必須だ。 主要財閥で3世への経営権継承と持分相続が進行しているだけに、その過程で不法・脱法が行われないかも目を大きく開いて見守らなければならない。 政府が市場に“権力”を譲り渡してから長い時間が経ったとはいうものの、政府ができることは相変らず多い。問題は“意志”の有無だけだ。

アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/681298.html 韓国語原文入力:2015/03/08 18:45
訳J.S(1768字)

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