キム君がツイッターにイスラム国(IS)への参加意思を明らかにした翌日、IS募集担当者と思われるツイッター利用者が話かけてきます。中東で唯一の未修交国シリアに行くのは難しくありませんでした。フランスではジハード勢力に関連したフランス人が1000人を超し、政府は頭を抱えています。社会現象にまでなってしまったフランスを通して、孤立した若者を誘惑するISの戦略と歴史を調べました。
キム君 どうすればISIS(イラク・シリア・イスラム国。ISの前身)に合流できるか知っている人? ISISに合流したいです。(how to join isis Does anyone know? i want join isis)
アフリキ おまえがISISに合流したいなら、まずトルコに行くのが最も簡単だと誰かに聞いた。(Someone just tell me that if u wanna join #ISIS go to turkey first than from there is easy to join)
キム君 兄弟よ、僕はISISに加入する準備ができた。どこの国に行かなければならないのだろう?(my dear brother. I was ready to join isis where I going to country?)
アフリキ イスタンブールにいるハサンという兄弟に連絡しろ。彼の電話番号は053********だ。(Try this brother his name is hassan he is in istanbul his number is 053********)
トルコで失踪したキム君(18)は昨年10月3日なんの躊躇いなくツイッターにイラク・シリア・イスラム国への参加方法に関する質問を投げかける。その文は78回リツイートされ全世界に散らばった。“アフリキ”という対話名を使うツイッター利用者(@habdou5038)が翌日キム君の質問に答え二人の関係は続いた。アフリキは「(インターネット秘密メッセンジャーの)シュアスポット(surespot)でga***を探せ。彼が君を助けてくれるだろう」と具体的な助言も惜しまない。
身元を確認できないアフリキは別のツイッター利用者(@Dewla_account)の文を数回リツイートしてイスラム国(IS)を宣伝する。「イスラム国で生きムスリムとしてとても気分がいい。君も他のどこにもないここで名誉を感じることだろう」、「ムジャヒディーン(イスラム戦死)は少ない人数で多くの人数と戦って勝てる唯一の人々だ」、「メディアがムジャヒディーンについて騒ぐいかなる嘘も信じるな」。キム君がツイッターでたった一日で知り合えたアフリキはイスラム国の募集担当者か募集を助けている追従者である可能性が高い。
ジハーディストとの合流を防ぐ電話相談
アフリキから情報を得て約3カ月後の今月10日、キム君はトルコのキリスにあるメルトゥル・ホテル前のモスクで身元未詳の男性と一緒に消えた。キム君が消えた後、ツイッター利用者たちの間で安否を尋ねたり帰るよう促す文が残された。あるツイッター利用者は20日にキム君のツイッターにこんな文を残した。
「よく聞いてくれ。イスラム教にはISが話している内容などない。3年以上勉強したけどそんな内容はなかった。君は騙されているんだ。まともな宗教が人を斬首したり強姦させたりするか?ISは暴力だ」
ジハーディストになる先進国の若者たち
フランスでは関連者だけで1000人
意外に多いのが中産層や無神論者出身
「情操的にうつ病、過敏性」
西欧体制もムジャヒディーンが作った
シリアの反乱軍と政府軍の内戦に乗じ
イスラム国はネットワーク活動
宣伝用にヨーロッパの若者を誘引
深まる内戦に欧米は無力で
シリアの民衆だけが死んでいく
キム君はイスラム国へ向かったと推定される唯一の韓国人だ。だがフランスはすでにイスラム国に急流に巻き込まれた若者たちのために頭を抱えている。フランス政府は昨年11月、フランス人1132人がジハード(イスラム世界拡大のための戦争)と関連し、このうち376人がイスラム国が活動するシリアとイラクにいると推定した。フランス極右政党の国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペン代表は「政府はジハード参加者のうちフランス国籍を持つ二重国籍者はフランス人として集計していまい」と指摘し、政府推定値より実際のフランス人の数がさらに多くなると主張した。
大きな社会問題となるとフランス政府は自国民がイスラム武装勢力に合流しないように彼らのパスポートを押収できる権限を警察に与えた。フランス政府は10代の青少年がジハーディストと合流するのを防止するため電話相談サービスも用意している。米国人救援活動家のピーター・カシッグとシリア軍捕虜18人を斬首するイスラム国の動画に、フランス人と思われるイスラム国戦闘員2人が登場すると、昨年11月、フランソワ・オランド大統領は再び深刻な憂慮を表明した。
無神論者の中産層家庭で生まれた15~21歳。フランスでジハードに関連する者たちの平均値だ。フランスから戦争のためにシリアやイラクに向かうムジャヒディーンは低所得、移民者、ムスリムだとする考えは偏見だ。フランスのイスラム宗派予防センター(CPDSI)がジハードと関連したフランスの160家庭を調査した結果、67%が中産層、16%が労働者階級、17%が富裕層の家庭出身であることが分かった。80%が無神論者の家庭で生まれ、移民出身者は10%だ。前科があるのは5%にすぎず、それも些細な軽犯罪だった。
調査を進めた宗教研究学者のドゥニア・ボザールは「ジハードに関連したフランス人は情緒的な面でほとんどが長期間うつ病を体験したり過敏性」と分析した。誘引策はインターネットまたはソーシャル・ネットワーキーング・サービス(SNS)が91%を占めるほど圧倒的だった。
「こちらに来たらいいアパートに住ませてあげる」
「ISの西洋人募集担当は武装組織としては役に立ちません。専門知識もなく訓練も受けていないのです。西洋人を人質や宣伝用として使うことを扇動する道具なわけです。孤立した青少年は極端で崇拝的な理念にあっという間に魅了されます。もしISに魅惑されるとしたら、それは銃であるとか古代文明発祥地のユーフラテス川の日没のようなイメージとともに勝利者になるというメッセージにあるでしょう」
フランスのイスラム史家でありパリ政治大学教授のジャンピエール・ピリウは英国BBC放送とのインタビューでイスラム国の外国人誘引戦略をこう説明した。イスラム国に加担したフランス人ミカエル・ドス・サントス(22)はオンライン動画を通じ「友達の中から4、5人を集める任務を引き受けることになる」と明らかにしたこともある。
自らを被害者と認識し報復心を抱くのもイスラム国に合流した外国人の共通した情緒だ。フランス政府のジハード対応チームに属したピエール・ウンガネは「極端な転向者と一般的なイスラム改宗者とは異なる」と線を引いた。「極端主義者らはモスクを重視しない。彼らは西欧社会による被害者として自身を認識する一種の叙事に引きずられる。その過程で神に特に選ばれたと考える」。
ジハーディストたちはSNSを積極的に利用して10代を誘っていると英国紙デイリーメールは報じている。イラクの少数派ヤジディ教徒の女性を拉致して性奴隷として売り、功績を立てたイスラム国隊員が報償として女性をもらい受けたりしたことを自慢げに公開した英国人イスラム国隊員アブ・パリス。彼はSNSを通じて接触した15歳少年に「アラーのために戦うのに若いなどということはない」と助言する。18歳少女には「君より若い少女もISにいる」と答える。英国出身のイスラム国隊員は英国の“兄弟や姉妹”にどうやったら戦争中のイラクに来れるか教え、両親を拒みジハーディストになれと強調する。イスラム国隊員になろうとする真剣な返事が来れば、彼らはモバイル・メッセンジャーのキック(Kik)やシュアスポットを通してメッセージを送って懐柔すると同紙は伝えた。
記者であることを隠しイスラム国と接触し、彼らの懐柔戦略を紹介した本も最近出版された。フランスの女性フリー記者のアナ・エレル(仮名・30)は『ジハーディストの仮面をかぶり』でイスラム国の戦略を紹介する。エレルはフェイスブックに20代女性“メラニー”という偽アカウントを作りテロリストグループの写真やビデオを共有し、イスラム極端主義に関心があるフリをして罠を仕掛けた。イスラム国隊員を名乗る者が「友達リクエスト」をしてきて彼らとエレルの対話が続いた。彼らはエレルにシリアに来たらいいアパートに住め金も儲けられるようにしてあげると伝えた。
「この時代は男性が性差別を受ける時代だ。私はフェミニストを憎悪する。だからISISが好きだ」。自分を男性被害者だと考えるキム君がツイッターに残した文だ。キム君がISと思われる募集担当者と対話をしたインターネットのメッセンジャー、シュアスポットは、すでにデイリーメールに紹介された懐柔通路だ。
シリア戦争とイスラム国
インターネットを通じ全世界の青年に誘惑の手を伸ばすイスラム国はシリア内戦が長期化するなかで生まれた。しかし正確に言えばシリア反乱軍も政府軍もイスラム国ではない。では若者たちはなぜシリアに行ったのだろうか。
イスラム国が誕生するまでの過程はやや複雑だ。シリア大統領のバッシャール・アサド政権の退陣か維持かをめぐり反乱軍と政府軍が内戦をするなか、イスラム国は一つのイスラム国家という宗教的幻想と目的で内戦に紛れ込んだ部隊だ。現在三つの武装勢力がシリアを地域別に分け占領中だ。
2011年にアサド独裁政権に反対するデモ隊と政府軍の流血衝突が始まりシリア内戦は始まった。市民などが主軸となる反乱軍と政府軍が戦争を行う間に、一種の外国人部隊であるヌスラ戦線が介入する。イラク内のアルカイダ勢力であるイラク・イスラム国(ISI)隊員がシリアに潜入して2012年に結成したヌスラ戦線は、アルカイダとの連係勢力であることを示さず反乱軍と協力した。この過程でヌスラ戦線は占領地域で厳格な律法を強要せず住民たちの支持を得た。
しかし、2013年4月にイラク・イスラム国の指導者アブバクル・パグダディが、シリアで活動するヌスラ戦線と自分の組織をイラク・レバント・イスラム国(ISIL)に統合すると発表したことから新たな局面を迎える。統合を拒否したヌスラ戦線のアブ・ムハンマド・ジャウラーニーはアルカイダ首長のザワヒリに仲裁を要請した。ザワヒリは「パグダディはイラクに集中し、ジャウラーニーもシリアに集中せよ」と指示した。しかしパグダディは直ちにこれを拒否する肉声の声明を発表した。
シリア北東地域での拠点を掌握したヌスラ戦線はまもなく分裂した。外国出身の戦士たちのほとんどがパグダディのイラク・レバント・イスラム国に加担し、ヌスラ戦線はシリア出身の組織に変わった。イラク・レバント・イスラム国はその年5月にヌスラ戦線の本拠地であるシリアの都市ラッカを武力占領し、この地域ではイスラム法シャリアによる強力な統治がなされる。2014年2月、イラク・レバント・イスラム国はアルカイダと決別し、指導者のパグダディは昨年6月29日にイスラム国を宣言した。イスラム国はシリア北東部とイラク北部地域を掌握し領土と宣言した。
シリア内戦は複雑に分化していき、国際社会による対応方法も解決するのが困難なほどこじれている。シリアの反政府勢力と協力し、地上軍投入の代わりに反乱軍の訓練支援などの間接的援助をした米国は、シリアのアサド政権より頭の痛いイスラム極端主義武装勢力イスラム国と向き合うことになる。
拙速な介入を躊躇してきたバラク・オバマ政権は昨年9月からイスラム国占領地域の空襲を継続させている。しかし米軍が空襲してもシリア内のイスラム国占領地域は次第に広がっている。反乱軍はイスラム国とも背を向けることになり戦力に損失が生じた。シリア反政府勢力の連合体であるシリア国民委員会(SNC)のハディ・バフラ議長は昨年11月にロンドンを訪問し、「現在のシリアの問題はイスラム国ではなくバッシャール・アサド政権が招いたものだが、米国が主導する連合軍はアサド政権ではなくイスラム国と戦っている」と指摘した。さらに「イスラム国に対する空襲はアサド政権の犯罪に目を瞑る紛らわしい政策の結果」と批判した。バフラ議長はアサド政権が得る利益を憂慮し「米国のイスラム国空襲でアサド政権は反乱軍勢力に軍事力を集中する余裕ができた」と話した。
米軍と反乱軍との協力も効率的でない。バフラ議長は昨年9月、米ニューヨークでスーザン・ライス国家安保補佐官に会いイスラム国に対抗する米軍と反乱軍の武装連合組織である自由シリア軍(FSA)の合同作戦センター開設を要請したが拒否された。
国際社会の無関心のなか混迷を深めてきたシリア内戦は、2011年の内戦勃発以来、昨年の人命被害が最も多かった。シリア人権観測所(SOHR)は戦争が始まった初年度の2011年の7841人から2012年に4万9294人、2013年に7万3447人、2014年に7万6021人を記録し死亡者数が最高値を更新したと明らかにした。
韓国語原文入力:2015.01.24 10:58