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[時論]これが 内乱陰謀罪なら民主主義はどうなる/イ・ホジュン

登録:2014-08-04 21:15 修正:2014-08-05 07:12
イ・ホジュン西江(ソガン)大法学専門大学院教授

 7月28日に行われた検察の求刑と被告人最終陳述を最後に、内乱陰謀事件は控訴審判決の宣告だけが残っています。 検察は第1審裁判と同じく、イ・ソクキ議員に懲役20年の重刑を求刑したといいます。

 内乱陰謀罪というのは、政権に対する反対派や少数政治勢力を除去するために乱用されやすい罪目です。韓国の歴史で内乱陰謀罪が適用された1974年の「民青学連事件」と1980年の「金大中内乱陰謀事件」を振り返ればわかります。この二つの事件で検察は「民青学連」や「韓民統」という組織が内乱を謀議したと主張しました。

 当時は有罪判決が下されましたが、後の再審ですべてでっち上げ事件であることが明らかになり、無罪という結論が出されました。この残酷な歴史を体験した私たちは、内乱陰謀罪の乱用により民主主義の前提である思想の多様性と表現の自由を侵害してはならないという歴史的教訓を得ました。

 だからこそ内乱陰謀罪の処罰は厳格かつ慎重でなければなりません。最高裁は陰謀罪が成立するには、犯罪を実行しようとする‘合意’がなければならず、その合意に‘実質的危険性’が認められなければならないと説明したことがあります。この基準に照らしてみた時、今回の内乱陰謀事件はどうなるのでしょうか。

 まず、検察は5月12日の集いが内乱を謀議した場だったと主張していますが、その集いで内乱を企む‘合意’があったという明確な証拠はありません。内乱罪は単純に暴力的な破壊行為をするのではなく、国家機関転覆など国憲紊乱を目的に暴動することを要件にします。したがって内乱陰謀の‘合意’があったと言うなら、当時の集いの参加者がいつどのように暴動を起こし、国家機関をどのように転覆させるかについての計画を具体的に合意した場合になります。裁判所が証拠として認定した録音ファイルによれば、5月12日の集いは情勢講演と討論の場だったにすぎず、その集いで暴動や国家機関転覆の具体的な行動を‘合意’した事実はまったくありません。討論したことと合意したこととは明確に次元が異なる概念ですから。

 そして、‘実質的危険性’も認められません。 実質的危険性とは、計画した内乱行為が直ちに実行に移される切迫した危険がなければならないという意味です。そのためには、内乱計画が具体的でなければならず、また様々な準備がされていなければなりません。しかし、今まで明らかになった証拠では、こうした実質的危険性を認めるには不十分です。

 検察は「RO」という地下革命組織が実在し、危険だと主張しています。 第1審判決ではROが存在するとされましたが、その組織など具体的な実体は明らかにできませんでした。 ただ単にROという組織が“ある”と推論し、ROが内乱を謀議したので危険だとした第1審判決には法理的に多くの問題があります。

 合意も、実質的危険性も明確に立証されていないのに、第1審判決のように「ROだから危険だ」という推論を根拠として内乱陰謀罪で処罰すれば、いったいどうなるでしょうか。それは民主主義の破壊に他なりません。特定の政治思想を持っているという理由だけで危険な集団という烙印を押し、その政治的少数集団を除去しようとするからです。

 民主主義は政治思想の多様性を認める社会的寛容を必要とします。たとえ自分と反対の意見や主張であっても、そうした意見を持つ相手を社会的に認めることにより、憲法が保障する思想の自由、表現の自由が私たちの社会で機能するためです。イ・ソクキ議員の講演内容に同意しなくても、彼の思想自体を内乱陰謀罪で断罪してはいけません。だから私は内乱陰謀事件において民主主義を弁護します。控訴審裁判所の賢明な判断を期待したいです。

イ・ホジュン西江(ソガン)大法学専門大学院教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/649752.html 韓国語原文入力:2014/08/04 18:47
訳J.S(1715字)

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