本文に移動

[特派員コラム] 周永康落馬と草の根腐敗の清算/ソン・ヨンチョル

登録:2014-07-31 20:46 修正:2014-08-01 06:47
ソン・ヨンチョル北京特派員

 休暇シーズンだ。 時間を見つけては中国を歩き回ってみると、あきれる経験をする時がある。

 先日、山西省大同を旅行した時のことだ。 大同は魏晋南北朝時代の遺産である雲崗石窟と絶壁にぶら下がるように建てられた寺である懸空寺などで有名な観光地だ。 ‘古都西安より見どころが豊富だ’と言われるこちらには多くの旅行客が集まる。

 夜汽車から降りて懸空寺行きの市外バスに乗り込んだ。 1時間余り走っただろうか。 突然、バスが路肩に止まる。 運転手が「懸空寺に行く人々は降りて下さい」と言う。 戸惑ったが乗客たちはバスの脇に待機していた‘黒車’(不法営業タクシー)に乗り換えなければならないという。 乗客たちは黒車の運転手に1人当り20中国元(約3500ウォン・350円)を追加で渡す。 黒車に乗って20分余りさらに走ると懸空寺に到着する。 連休や休暇シーズンならば100m以上の長蛇の列が出来るという。名所を結ぶ路線バスがないことにも当惑したが、区間を分けて利権を手にする体系的な‘ピンハネ’構造にはより一層驚いた。 懸空寺を見て戻ってくる時も全く同じ手順を踏まなければならなかった。 バスと黒車の運転手が密かに完ぺきな共生構造を構築しているわけだ。

 こうしたことは大同に限ったことではない。 ある知人は最近上海で汽車に乗り夜遅く北京南駅に到着した。 タクシー乗り場にはすでに乗客が数十mの行列をつくっていたが、深夜なのでタクシーはまばらだったそうだ。 考えあぐねている彼に、誰かが近寄ってきて追加金(チップ)を払えばタクシーをつかまえてやると言った。 金を受け取った客引きは堂々と駅の交通担当職員に頼んで、先に入ってくるタクシーを引き抜いてきた。 知人は「あろうことか厳然たる交通整理公務員が客引きとつるんでタクシーを斡旋する様子を見て驚いた」と話した。 上の二つの事例とも地方役人たちの黙認や介入なしには不可能と思われる。

 ついに中国で「腐敗の虎」と呼ばれた周永康 前中央政治局常務委員が落馬した。 わずか2年余り前には中国の司法・公安分野を左右した人物だ。 就任後の一年半「腐敗に関する限り虎だろうが蝿だろうが全て捕まえる」と公言してきた習近平 中国国家主席の最大成果だ。 周永康は1949年中国建国後65年ぶりに初めて腐敗疑惑で‘退場’させられる最高位職であるために、中国政治史でも一線を画す事件として記録されるだろう。

 だが、腐敗の清算がスピードを上げるほど、その政治的目的に対する疑惑の眼差しも増えている。 習主席が今後8年余りの執権基盤を磨き上げるために、反対派を探し出しその席を次々と側近で充たしているということだ。 周永康を含め7月初めに落馬した徐才厚 前中央軍事委副主席、そして有力な次の落馬予想者である令計劃 統一戦線部長は全て習主席の執権にとって潜在的脅威となった薄煕来 前重慶市党書記の友好勢力だ。反腐敗ドライブが権力闘争の一環という疑い混じりの解釈が出てくる根拠だ。 中国の著名な人権活動家のある人は「これは根本的な腐敗清算とは関係のない権力闘争」と話す。

 周永康の落馬は、習近平の腐敗清算において輝かしい頂点であり、真正性を計る転換点になるだろう。 周永康以後、反腐敗政策が制度化へと進展しないならば、また別の‘権力層だけの空中戦’として記憶されるだろう。 しかし周永康処理の後に公職者財産公開のような制度的枠組みを用意して、大同や北京南駅の事例のように庶民を挫折させる草の根の不条理まで除去するならば、その反対になる。 周永康に対する調査結果の発表は、腐敗清算に対する習近平の‘真心’を確認する時間が差し迫ったことを知らせた。 周永康が終止符なのか、休符なのかが注目される所以だ。

ソン・ヨンチョル北京特派員 sychee@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/649283.html 韓国語原文入力:2014/07/31 18:22
訳J.S(1721字)

関連記事