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[人が中心だ-公共性が崩れた国-(3)公共分野にまで踏み入った銭の論理/鉄道]

登録:2014-05-23 20:25 修正:2014-09-03 15:17

「私の家族が汽車に乗ると言ったら、乗るなと言いたい。」

ソウルと大田、大邱などを行き来するセマウル号の機関士キム・グヮンチョル(仮名・47)氏の繰り言だ。去る13日、退勤途中で会ったキム氏は「KORAIL(韓国鉄道公社)の職員の間ではこのような話が公然と交わされている」と言った。何があったのだろうか。

 彼は「鉄道は予防整備が重要だが、今は故障したら直すというレベルだ」と語った。2009年以前にはまだセマウル号は終着駅に乗客を降ろす度に整備(検査)を受けたものだが、今は3500キロを走った後でなければ受けられない。KTXも検査周期が3500kmから5000kmに延びた。

 このような整備縮小は人員削減が主な原因だ。KORAILの車両整備人員は2003年には7000人程だったが、現在は5181人に減った。KORAIL側は2018年までに1144人をさらに減らす計画だ。 昨年2月には、1200両余りのセマウル号、ムグンファ号列車のうち、160両余りが検査時期を過ぎたまま運行していたことが明らかになった。パク・ヒョンス鉄道労組車両局長は「昨年11月のムグンファ号事故と今年2月に発生したセマウル号事故などがすべて、検査周期を過ぎた状態で運行していて起きた」と述べた。最近も、3月中旬から4月中旬までの1か月間だけで12件の列車故障事故が発生している。

 「数回にわたる人員削減の過程を経て、整備部門で経歴の長い熟練職が見られなくなった。また線路の保守・維持業務が相当部分外注下請業者に渡り、重大事故時の有機的対応も難しくなった」として、キム・グァンチョル氏は言葉を続けた。すべて安全が後回しにされているために現れた問題だった。にもかかわらず「大型事故が起こるまでは、このような慣行は容易に変わらないと思う」とも言うのだった。

 全国民を衝撃に陥れた“セウォル号惨事”は沿岸旅客船の運営が完全に民間会社に任せられたことが発端となった面もある。船会社と、いわゆる“ヘピア”(海洋水産部(ヘヤンスサンブ)+マフィア)が掌握している韓国海運組合が一手に引き受けるシステムだった。救助業務も費用削減のために民間企業が投入された。“安全”よりは“収益”に没頭する構造だった。今回の事故発生後、政界では旅客船の“公営制”あるいは“準公営制”導入論が出ている。<社会公共研究院>のイ・ヨンス研究委員は「セウォル号の惨事は、1997年以降一貫して推進されてきた鉄道民営化の未来を見せてくれたようだ」として「公共性が強く作動されるべき領域が、収益性と効率を中心に運営されれば、安全は保障され難いという教訓を残したものだ」と述べた。

「鉄道は予防整備が重要なのに
今は故障したら直すという水準」
整備人員は11年間に2000人ほど減少
検査時期を超過して、この3~4月には12件の故障事故

政府、赤字解消のために民営化を力説
脆弱階層サービスは“公共会計”が必要

ソウル恩平区(ウンピョング)水色(スセク)駅/キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr (訳注:鉄塔の中間部分にかけられた垂れ幕には「ただの一人も送り出すわけにはいかない。 強制転出撤回!」と書かれている。)

 セウォル号のような沿岸旅客船よりはるかに多くの国民が利用する大衆交通手段である鉄道の民営化は、通貨危機(IMF)以後、金大中(キム・デジュン)政府で本格推進された。当時、労組のストライキでこのような試みが座礁すると、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は2005年、鉄道庁を公社化(KORAIL)する線で妥協を見た。以後、李明博(イ・ミョンバク)政府が任期末の2011年、水西(スソ)発KTX事業の民間委託カードを取り出したが、再び世論の反発に押されてひっこめた。朴槿恵(パク・クネ)政府はより迂回的な方式で鉄道民営化論議に火をつけた。 2016年に開通する水西発KTXを、昨年12月に子会社形態に分割・設立したのだ。政府は子会社の持分の41%をKORAILが、残りの59%は公共資金が占めるようにした上で、民間には売ることができないようにしたという立場だ。 しかし鉄道労組と市民団体・野党などは民営化への始発点と見て対抗しており、論議はまだ“進行形”だ。

 キム・グァンチョル氏は1995年に鉄道庁に入った。公務員の身分だった彼も、2005年に公企業の職員になった。給料は少し上がったが、人員削減で労働強度はより高まった。2000年に4万1970kmだった1人当たり輸送距離は、2012年には6万5000kmまで増えた。公社化を1年後に控えた2004年、KTXの開通を基点として多くが変わった。費用削減のために業務の相当部分が外注化されたため、同じ列車の中で働く職員同士も所属会社が異なるようになった。不法派遣の論議を呼んだKTXの女性乗務員が代表的だった。

 収益性が重視されたため、庶民の移動権も大きく制約を受け始めた。収益性が高いKTXの運行本数は多くなり、安い料金のためにセマウル号やムグンファ号に乗りたい人たちも“泣き泣きカラシを食べる”式に高い列車を利用しなくてはならない状況が生じた。「ソウル駅の電光板に運行時刻表がスルルッと浮かぶ時、KTXばかりなのを見ると複雑な心境になる」と彼は言った。

 鉄道公社の資料を見ると、2008年に455回だった一般鉄道(セマウル号、ムグンファ号など)の運行回数は昨年388回に急減した。2018年には275回に減るだろうと公社側は予想している。赤字路線が廃止され、地方の幹線鉄道も利用者たちの不便はさらに強まるに違いない。以前から韓国鉄道は営業距離が短くてネットワーク交通として機能するのに限界があるという指摘を受けてきた。1971年に約3200kmだった鉄道の営業距離は、2012年にも3378kmと依然3000km台前半にとどまっている。

 一般鉄道が減ったのは赤字が大きいためだ。2009年基準で営業係数を比較してみれば、KTXの75に対し、セマウルとムグンファ号はそれぞれ170と200だ。 営業係数100以上は、採算が合わないことを意味する。

 実際「ソウル→釜山」の列車時刻表を確認してみると、20日基準でKTXは運行本数が早朝5時30分から夜11時まで61回にもなるが、セマウル号は午前8時43分から午後10時50分まで6回(“ITX-セマウル”が別途に6回運行)、ムグンファ号は午前6時10分から午後10時50分まで15回にとどまっている。KTXの運賃は5万3300ウォン(特室(グリーン車)は7万4600ウォン)、セマウル号とムグンファ号はそれぞれ4万700ウォンと2万7300ウォンだ。相対的に安価な運賃で移動しようとする一般鉄道利用客の選択権が極度に狭められているわけだ。「お金にならない」という理由から、いつムグンファ号がピドゥルギ号のように歴史の中に消えていくかも分からないということだ。国土交通部は昨年、KTXの“料金上限制”を廃止する案まで検討したと言われる。

 一部では、2012年に料金引き上げ問題で苦労したソウル地下鉄9号線の事例が、民営化されたKTXの鏡だという指摘も出ている。民間資本で建設されたソウル地下鉄9号線の既存大株主だった<マッコーリー韓国インフラ投融資>が料金を50%以上 上げると言い出して論議が増幅し、現在はソウル市が再び運賃決定権を取り戻した状態だ。民間市場に任せたからといって効率が高まるわけではないという教訓を残したわけだ。シン・ジョンワン聖公会大教授(社会科学部)は「概ね民営化反対運動の脈絡では、基本的財貨と公共サービスに対する全ての社会構成員の平等なアクセス性と関連している。高校平準化廃止論に対抗してきた“教育の公共性”や、金融圏で取引することが困難な企業や階層の接近性強化の必要性を語る際に取り上げられる“金融公共性”も、このような性格のものといえる」と話す。

 キム・グァンチョル氏は「前だけを見て一生懸命に走ってきたが、いつのまにか労働者が放漫経営・非効率の主犯になっていた」と言って、力が抜けたような笑いを浮かべた。鉄道をはじめとする公企業の民営化を推進する政府側の論理は一貫している。公企業の過大負債問題がその中心にある。鉄道公社は発足以来、年間5000億ウォン以上の赤字が続いて、2005年に4兆5000億ウォンだった赤字規模が昨年は17兆3000億ウォンに急増した。赤字解消のためには競争体制の導入と果敢な構造改革が必要だと政府側は強調する。民営化推進の火種もここにある。

 しかし、物価上昇に及ばない料金引き上げを考慮しなければならないし、負債の急増には仁川(インチョン)空港鉄道買収や社会的脆弱階層サービス提供のような政策的要因も作用したという反論が出ている。<グローバル政治経済研究所>のオ・ゴンホ研究室長は「鉄道公社の運営赤字は、社会的な脆弱階層および地域に鉄道サービスを提供することから来ている面があるという点を考慮しなければならない。公共機関の評価において、従来の企業会計方式だけでなく、公共的付加価値を計量化して反映させる“社会公共会計”が必要だ」と主張した。

 昨年から、政府と鉄道労組は水西発KTX株式会社設立が民営化に進む布石かどうかを巡って激しい論争を続けている。安全と公共性強化という公共機関本来の役割にさらに重きを置くのか、それとも収益性が一層強調される組織に再編されるのかの岐路に立っているわけだ。

ファン・ボヨン記者 whynot@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/638118.html 韓国語原文入力:2014/05/20 23:29
訳A.K(4109字)

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