国家情報院が大統領選挙世論操作の疑いを受けている国家情報院職員キム・某(29)氏の活動を外部に知らせた前・現職職員を検察に告発し、掲げた容疑の中の一つが国家情報院法の‘政治関与禁止’違反だ。 不法な政治関与の疑いを受けているキム氏の活動を公論化させた行動を逆に政治関与だと追い込んだわけだ。
昨年4・11総選挙で民主統合党予備候補として登録した前職国家情報院職員K氏が大統領選挙局面で民主党に有利な世論を作るため現職職員N氏をして‘対北韓心理戦団’の業務内容を把握させたということが国家情報院側の主張の核心だ。 民主党を利する目的で国家情報機関の業務を外部に漏洩したために職務上秘密漏洩を禁じた国家情報院職員法はもちろん、政治関与を禁止した国家情報院法にまで違反したということだ。 国家情報院は20日報道資料を出し‘N氏は内部告発者ではなく不法政治関与犯罪者’という低劣な用語でタイトルを付けもした。
しかし罪が確定してもいない前・現職職員を‘犯罪者’と断定する国家情報院の‘超強手’により職員キム氏のインターネット活動が果たして‘正常業務’であるか否かをきちんと明らかにしなければならない正当性が高まった。 K・N氏らを処罰するためにも、2人が外部に流出させたという国家情報院対北韓心理戦団の活動内容などが国家情報院の正常業務に該当するか否かを突き詰めなければならないためだ。
ハ・テフン高麗(コリョ)大法学専門大学院教授は「捜査の結果、職員キム氏らの活動が国家情報院の正常業務だと判明すればK氏らを内部情報流出などで処罰できるが、万一、正常業務を外れた政治関与と判明すればむしろK氏らを内部情報提供者として保護しなければならないだろう」と指摘した。
大統領選挙世論操作疑惑を受けているキム氏は国家情報院対北韓心理戦団所属だ。 心理戦団は北韓情報を担当する3次長所属で、3~4ヶのチームに70人余りの職員が配置されていたことが分かった。 国家情報院は心理戦団の役割を‘対北韓心理戦’と明らかにしているが、李明博政府以後 政府の政策に反対する世論まで‘従北’として一括対応する業務を遂行しているという内・外部の証言が相次いだ。
実際、心理戦団所属であるキム氏が‘今日のユーモア’掲示板に作成した文を見れば、△野党圏大統領選候補批判△4大河川事業美化△大統領海外歴訪称賛△済州(チェジュ)海軍基地建設擁護など、対北韓心理戦と関係のない内容が多数含まれている。 その間、国家情報院は「キム氏が作成した文は国家情報院の固有業務」と説明してきた。 キム氏が野党を批判し政府・与党の政策を擁護する文を書くことが心理戦団の業務だということだ。
国家情報院法9条は国家情報院職員が「特定政党や特定政治家に対して支持または反対の意見を流布したり称賛・誹謗する内容の意見または事実を流布」する行為を禁止している。 したがって専門家たちは国家情報院の不法行為をK・N氏らが公的利益のために外部に知らせたと見なければならないと指摘している。
パク・ジュミン民主社会のための弁護士会事務次長は「職務上得た機密を外部に知らせ国家情報院法などに違反したといっても、より大きな公的利益のためにしたならば違法性は認められない」と指摘した。 チャン・ジョンウク参与連帯市民監視チーム長は「国家情報院がネチズン・記者に続き、前・現職の職員まで告訴・告発しているのは一種の‘恐怖政治’」と指摘した。 外部の批判世論拡散を遮断しながら内部の追加的な‘良心的情報提供’を阻もうとしているということだ。
経実連はこの日論評して「国家安保と国益増進のためにすべての力量を集中しても足りない国家情報院が、政権安保のために国内世論を操作したことはもちろん、国家情報院の名誉と信頼を失墜させた職員を保護し、内部公益情報提供者らを罷免したことは自ら政権の下手人であったことを証明する処置」と批判した。
チェ・ユビン、チョン・ファンボン記者 yb@hani.co.kr