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国際投機資本の遊び場になった北韓、韓国企業は差別され…

登録:2012-12-02 00:27 修正:2013-01-29 10:45
平壌(ピョンヤン)市内の様子. 写真左側に高く聳え立った三角錐が柳京(ユギョン)ホテル/ハンギョレ資料写真

 李明博政府の登場以後、南北関係が梗塞し北韓は韓国以外の海外投資家誘致に多大な努力を傾けてきた。 その結果、国際社会の各種制裁にも関わらず中国資本を筆頭に中東とヨーロッパ資本の対北韓投資が明確に増加した。 その中でもエジプトのオラスコムグループの投資が代表的だ。

 オラスコムグループは2007年7月、平壌(ピョンヤン)サンウォン セメント連合企業所の持分50%引き受けを筆頭に、2008年1月には北韓逓信庁と75対25の合弁で‘高麗リンク’という移動通信会社を設立した。 また、2008年4月からは平壌の柳京ホテル工事再開にも参加した。 現在までにオラスコムグループの対北韓投資(契約基準)規模は約5億~6億ドル(約5500億~6500億ウォン)と推算される。

産業資本的でない金融資本的投資

 ところが最近オラスコムグループが北韓投資で期待した収益を出せず、資金難のために対北韓事業から撤収していると一部言論が報道した。 オラスコムグループの対北韓投資と関連して、フランスのラパズグループ、アラブ首長国連邦のエマールグループ、ドイツ-スイスのケムピンスキーグループなどが新たな投資家として言及されている。 しかし種々の西欧情報消息筋は「(資金難のために)対北韓事業から撤収するということはオラスコムグループについてよく知らない人々が言うこと」と一蹴する。「オラスコムの対北韓投資には当初からこの間に韓国や中国がしてきた対北韓投資とは異なる性格の経営戦略と目標があった」ということだ。

 オラスコムグループは創業者のオンシー・サウィリス(82)が起こしたエジプト最大の企業集団だ。 現在は創業者の三男に持分と経営権が分割継承されている。 長男のナギブ・サウィリス(68)が移動通信・メディア部門を、次男のサミー。サウィリス(65)がホテル・不動産開発部門を、三男のナセプ・サウィリス(61)が建設・セメント事業部門を運営している。

 オラスコムグループ2世らは、グループの名称は共同で使うものの、それぞれが独立的な企業集団を運営している。 あたかも現代グループが‘現代’という名前を共有しながらも、チョン・モング(自動車)・故チョン・モンホン(建設・商船・証券・対北韓事業)、チョン・モンジュン(重工業)等に分かれたのと同じだ。オラスコムグループの3兄弟の中で対北韓投資を主導した人は長男のナギブであり、後に三男のナセプも参加することになる。

 イスラム国家であるエジプトでコプト教というキリスト教信仰を持つオラスコムグループ2世らは、スイスと米国で主に成長して教育を受けた。 エジプトよりは西欧的アイデンティティを持つ彼らは事業を受け継いだ後、情勢が不安定な中東・アフリカ・西アジア国家に集中していたグループの事業構成と資産の性格を根本的に変化させる中・長期的経営戦略を模索することになる。

 ちょうど2000年代に入り世界セメント業界で吸収合併を通じた首位競争が激化し、ヨーロッパ通信市場の自由化で通信サービス業界の吸収合併市場が大きくなった。 このような状況で西欧の先導企業が地政学的理由で進出できない国家で主に事業基盤を固めてきたオラスコムグループの事業ポートフォリオはむしろ吸収合併市場で売り物でその価値を認められることになる。

 この時、ある仲介人の提案で注目することになったのが北韓投資であった。 2007年頃から推進されたオラスコムの北韓投資は、実際 産業資本的利益よりは今後売却および吸収合併を通した金融資本的利益を考慮した経営戦略次元で進行された。 吸収合併市場で彼らのポートフォリオの特性強化を考える時、費用対効果が悪くないという判断であったし、グループ全体の事業規模を考える時に投資額もまたそれほど大きな負担ではなかったためだ。

セメントに続き移動通信まで売却する模様

 オラスコムグループ2世らのこのような経営戦略の最初の結実は2008年に表面化する。 世界セメント業界において首位争奪競争を行ったフランスのラパズ グループがオラスコム建設産業のセメント部門の吸収を提案する。 オラスコムが持つ全世界のセメント事業場はほとんどラパズ グループの未開拓地であったために、ラパズとしては非常に魅力的な取引であった。 結局、三男ナセプはオラスコム建設産業からセメント事業だけを分離してフランス ラパズ グループに何と150億ドル(約17兆ウォン)で売却した。

 ナセプはが売却代金の一部でフランス ラパズの持分を確保し、一気にこの会社のNO.2株主となる。 表向きはナセプの個人持分は1671株しかない。 だが、この会社の株式持分の14.6%を持つNO.2株主である英国領ケイマン諸島にある‘NNSホールディングス’という持株会社が実際にはナセプの個人資産を管理する会社だ。 そのため現在、ナセプはフランス ラパズ理事会にも社内理事として上がり、直接経営に参加している。 さらに彼の側近2人が‘NNSホールディングス’持分により理事陣として経営に関与している。 この売却成功以後、ナセプにとってもはや対北韓投資は関心事ではなくなった。 ラパズ グループ次元でも今となっては過去のオラスコム建設側の契約内容遵守以上の関心はないことが知られた。

 オラスコムグループ2世らのもう一つの大規模吸収合併は長男のナギブが所有したオラスコム移動通信部門でなされた。 ナギブは2011年4月オラスコム テレコムの中東・アフリカ・西アジアなど8ヶ国の移動通信業者事業をオランダに本社を置きロシアと東ヨーロッパで主に移動通信事業をしている‘VimpelCom’側に65億ドル(約7兆ウォン)で売却した。 彼は売却代金の一部をVimpelCom株式で受け取り、世界5位通信事業者となったこの会社のNO.3大株主になり、残りは現金で受け取り、やはりケイマン諸島にある資産管理会社を通じて今年初めカナダの金鉱業者ラ マンチャの吸収などに使った。

 VimpelComの売却リストから外れたエジプト・レバノン・北韓 3ヶ国の移動通信事業は‘オラスコム通信メディア技術’という新設分割法人を設立し現在も管理中だ。 ナギブは収益性が高く安定したエジプト移動通信事業は継続所有する予定だが、レバノンと北韓での移動通信事業は今後適当な時期に売却を推進する計画だと知らされた。

 オラスコムはセメント事業に続き移動通信事業まで事業権売却が推進されるならば、北側当局の反発が予想されるので、これに対する方案を摸索中だ。 しかしオラスコムグループと北韓当局の事業的関係がすでに破局段階に達したといううわさは事実ではない。 ナギブは去る10月に北韓を訪問し事業議論をした後に金正恩国防委員会第1委員長に贈り物を渡しもした。

 オラスコムグループの種々の対北韓投資に共に名前を上げているラパズ・エマール・ケムピンスキー グループも、実際の内容はこの間知らされていることとは少し違ったことが多い。 まず、ラパズ グループは先に述べたようにオラスコム建設のセメント事業吸収合併に絡むこと以上のグループ次元追加投資計画はない。

オラスコム 資金難のせい撤収説 事実ではない

 エマール グループの対北韓投資説も同じだ。 ドバイの超高層ビルディング プルジュ ドバイ開発で有名なエマールグループが柳京ホテル工事に投資家として参加したという説が2009年初めから出回ったが、エマールグループの対北韓投資検討開始時期は2007年中旬に遡る。 その年の9月、エマールグループのモハメド アルラバル会長が韓国を訪問した直後、ソウルから専用機に乗って異例的に西海(ソヘ)直航路を通じて電撃平壌を訪問したのだ。 彼は平壌に一日留まり、北韓訪問を斡旋した統一教側が平壌で運営する世界平和センターと普通江(ポトンガン)ホテルなどを訪問し、北韓当局者から対北韓投資環境について簡単な紹介を聞いたことが分かった。

 しかしアルラバル会長は北韓訪問以後、エマールグループ次元で意味ある水準の北韓投資をしないことに方針を定めたという。 ヨーロッパのある情報消息筋は「ゴルフ愛好家であるアルラバル会長が北韓ゴルフ場投資には若干の関心があった。 エマール グループの人材と技術が柳京ホテル工事に一部関与したとしても、それは本格的な投資を意味するものではない」と伝えた。

 北側では当初オラスコムグループで中東5星級ホテルを多数所有している次男のサミーが柳京ホテル事業に参加することを内心期待したという。 だが、サミーは二人の兄弟らとは異なり、北韓事業に参加する意思はなかった。 そのため以後スイス、ジュネーブを中心にケムピンスキー グループなど他企業の柳京ホテル運営権参加を議論することになった。

 このようにオラスコムグループの対北韓投資は現在までに明らかになったことによれば健全な産業資本の投資活動とは見難い。 彼らにとって対北韓投資は租税回避区域である英国ケイマン諸島に立てた持ち株会社を通じて運用する個人資産だけで30兆ドルを越えるオラスコムグループ2世らが中東基盤の危険資産を西欧基盤の安全資産に再編するための企業吸収合併過程で利用した小さな道具に過ぎない。

 しかしオラスコムグループの北韓投資を巡り対北韓事業の隠れた高収益性と潜在力にヨーロッパと中東資本が注目したという一部の分析はあまりに純真すぎるアプローチだ。 オラスコムグループが北韓当局の行き過ぎた干渉で収益性が悪化して資金難に直面し、最近事業決裂に達したという主張もまた これまでの事情と脈絡を知らない誤った分析だ。

 この間の大規模対北韓投資誘致には世間には良く知られていない仲介人が投資初期から介入したケースが多かった。 彼らは主に北韓政権および指導者との特殊関係を活用して仲介人の役割をした人々だ。 最近ではジュネーブなどヨーロッパでも対北韓投資と関連した新しい仲介人が活動している。 彼らは数十兆ドルの巨大資本を転がすヨーロッパと中東の富豪のために租税回避区域に多段階持株会社を作り、多様な資産管理戦略を企画している。 彼らの北韓投資の動機および戦略は論理自体が以前に韓国企業らが行った産業資本的対北韓投資とは性格が完全に違う。

2012年 韓半島の自画像

 このように去る5年間、中国が北韓の地下資源と社会間接施設事業権を大挙確保しただけでも足りなくて、中東と西欧資本は金融資本的利益追求手段として北韓を活用してきた。 その間、国内政治のために南北経済協力面で犠牲にしてきた韓国当局と企業をむしろ外国企業に比べて公然と逆差別した北韓当局、韓国、北韓共に歴史的教訓を得なければならない2012年韓半島の自画像だ。

 パリ(フランス)=ユン・ソクチュン通信員・パリ政治大学(シアンスポ)ヨーロッパ学研究所博士課程研究員 semio@naver.com

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/563323.html 韓国語原文入力:2012/12/01 18:57
訳J.S(4730字)

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