大田市大徳区(テジョンシ・テドック)の自動車部品製造工場「安全工業」で起きた火災で74人の死傷者が出た中、専門家は火災を惨事へと拡大させた背景を集中的に検証すべきだと指摘する。火が瞬時に広がった理由、労働者たちが避難できなかった理由を詳細に検討すべきだということだ。仕切りのない建物構造や油汚れなどの火が広がりやすい内部環境、違法増築などによる脱出口確保の失敗、サンドイッチパネルでできた建物の構造的な弱さなどが主に指摘されている。
22日の消防当局や専門家らの説明によると、工場火災が発生当初から急速に拡大した背景には、天井が高いうえに区画されていない建物の構造、油分を含んだ蒸気、加工工程で使用される切削油による油汚れなどがあると推測される。ソウル市立大学消防防災学科のチェ・ジンジュ元教授は「建物が講堂のように天井の高い構造であるうえ、工場内部に長きにわたって蓄積された油汚れと油を含んだ蒸気が相まって、燃焼の拡大が速かったと思われる」とし、「油を含んだ蒸気は温度が下がると壁に付着してベタベタとした油汚れとなり、気体状態の時は液化天然ガス(LNG)などの燃焼性ガスと違いはない。このような環境では火が広がるのは一瞬」だと説明した。
この日、ハンギョレの取材に応じた安全工業の元社員Aさんも、被害が大きくなった原因として「集じん施設」(作業の過程で発生した粉じんや煙を吸い込む設備)を指摘しつつ、「1800度以上に加熱して鉄を鍛造するが、マスクをしていても鼻が痛くなるほど煙がすごく出る。(集じん施設内部に)油が付着していると、火が機械に沿って広がっていく可能性がある」と語った。そして「目に見える部分は毎日掃除しているが、内部は掃除できないため、交換が必要で、どのくらいの周期で交換しているのかは分からない」と述べた。消防当局も、油を含んだ蒸気や油汚れなどが火災拡大の一因であると指摘している。大徳消防署のナム・ドゥグ署長は前日のブリーフィングで、「工場内の加工工程で切削油をかなり多く使用しており、切削油をはじめ、天井などに油汚れが多くこびりついていた」として、「地下の設備や配管にもスラッジ(こびりついた油汚れ)が多かった。それに燃え広がり、急速に火が広がったとみられる」と語った。
無許可増築などによる避難路の不備なども問題として指摘されている。9人の死者が発見された従業員休憩室(ジム)は、建物の図面にはない二層構造の空間であることが判明したが、この空間は窓が小さく、外へ通じる通路も限られていたという。火が燃え広がる中での避難は困難だっただろうということだ。2階の水タンク室のそばで発見された3人の死者も、脱出するために移動中に孤立した可能性が指摘されている。慶一大学消防防災学部のイ・ヨンジュ教授は「二重構造の空間そのものが違法であるため、安全を考慮した避難施設や通路、階段などが不十分だった可能性がある」とし、「何よりも天井の高い建物に勝手に階を分けて作った二重構造のかたちであるため、煙は階段や通路を通るのではなく、直に被害者のいる空間を襲ったはず」と指摘した。
組み立て式のサンドイッチパネルで建てられた構造も、火災を拡大させた原因として指摘されている。サンドイッチパネルを使用した建物は、火災が発生すると急速に火が燃え広がり、倒壊の危険性があるというぜい弱性を抱えている。消防当局は「建物そのものがプレハブ式で、燃焼拡大が速いうえ、建物の倒壊リスクもあるせいで、消防隊員が侵入しては撤退するのを繰り返したため、鎮火が遅れた」と説明した。実際に、火災当時、建物の外壁は紙がはがれるように崩れ落ちた状態だった。ただし、今回の火災が起きた工場では、火に1時間ほど耐えられる難燃2級パネルが内外ともに使用されていたという。
チェ・ジンジュ教授は避難経路の重要性を特に強調した。「今回の惨事は、被害者が避難施設で脱出できず孤立して亡くなったという点で、アリセル火災惨事などの以前の事故と類似する。まずは火災の危険性が高い工場や建物で二重、三重の安全装置を整備し、被害を最小限に抑える『フェイルセーフ(Fail-safe)』の概念を導入し、避難施設の整備義務をもっと強化すべきだ」
イ・ヨンジュ教授は「危険物を取り扱う大規模な工場は産業安全保健法に則って安全が評価されるが、危険物を扱わない場所は可燃性の高い材料を使用していても評価対象から除外されている」として、「各工場の危険特性に応じて消防設備、安全設備を適切に管理できるよう、体制を整える必要がある」と語った。