朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)総書記兼国務委員長が「8700トン級核動力(原子力)戦略誘導弾潜水艦の建造事業」を現地指導し、韓国の原子力潜水艦建造の推進を「必ず対応すべき安全への脅威」とみなしたと「労働新聞」が25日付で報じた。この報道には、いくつかの注目すべき「対外シグナル」が含まれている。
韓国政府の原潜建造の動きと関連し、北朝鮮が公開で反応を示すのは初めてではない。北朝鮮は11月18日の「朝鮮中央通信社論評」で、「韓国の原子力潜水艦保有は、『独自核武装』の道に進むための布石」であり、「(北東アジア)地域での『核ドミノ現象』を招き、より激しい軍拡競争を誘発するだろう」と主張した。「韓国の原潜建造推進」など10月29日の慶州(キョンジュ)韓米首脳の合意内容を文書でまとめた「共同説明資料」(ジョイント・ファクトシート)が11月14日に発表されてから4日後に初めて示した反応だった。
北朝鮮の原子力潜水艦建造事業は、「韓国の原潜」に関する韓米首脳合意に対する直接的な対応ではない。金総書記はすでに2021年1月、労働党第8回大会で「原潜と水中発射核戦略兵器」の開発を「国防力発展5カ年計画5大課題」の一つとして提案し、今年3月には「原子力戦略誘導弾潜水艦の建造実態」を現地指導した。にもかかわらず、金総書記が建造中の原潜の胴体をこの時点で外部に公開し、「韓国の原潜開発計画」を公開的に問題視したのは、国内外で複合的な効果を上げようとする戦略的判断によるものとみられる。
まず、韓国初の原潜建造に対する韓米合意発表後に中国と日本で起きている微妙な連鎖反応を煽り、韓国の原潜建造を遅らせる「軍事外交的圧力」を高めようという目的だ。中国は「不快感」を隠しておらず、高市早苗首相は24日に読売新聞に掲載されたインタビューで、日本自衛隊の原潜導入について、「あらゆる選択肢も排除せず、抑止力・対処力向上に必要な方策を検討していく」と述べた。さらに金総書記は、「原潜に関する限り、我々が韓国より一枚上手で、戦力化も進んでいる」ことを内外に印象付けようとした側面もあるとみられる。
金総書記は同日、核武装を「国威であり国体であり、共和国の絶対的安全の担保」だとしたうえで、「党と共和国政府の決意は変わらない」と繰り返し強調した。さらに「労働新聞」は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が朝ロ関係を「親善的で同盟的な関係」とし、「不敗の親善と戦闘的友誼」を強調した18日付の祝電全文の発表を1週間を遅らせ、同日付で掲載した。来年2月に予想される労働党第9回大会を控え、「核武装強化」路線に変化がないことを明確にし、ロシアとの同盟を軸にした「陣営外交」にさらに力を入れることを予告するものといえる。