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金正恩委員長、国内向けには「人民と経済」、対外的には「核と通常武力の並進」を強調

登録:2025-10-13 06:44 修正:2025-10-13 09:23
【ニュース分析】朝鮮労働党創建80周年記念行事 
北朝鮮の金正恩総書記兼国務委員長が10日夜遅く、平壌の金日成広場で行われた「労働党創建80周年祝賀軍事パレード」で演説をしている。左から中国国務院の李強首相、金総書記、ベトナムのトー・ラム共産党書記長、統合ロシア党のドミトリー・メドベージェフ議長/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「労働党創建80周年祝賀行事」を通じて内外に明らかにした政策指向は明確だった。国内向けには「人民大衆第一主義の政治理念」を掲げ、「10年以内にすべてを新たに変化」させることで、「社会主義の全面的発展」を追求すると述べた。対外的には「核+通常武力の並進政策」と共に、中国やロシア、ベトナムなどいわゆる「グローバルサウス」と協力し、米国に対抗する「正義が保たれ平等な多極化世界秩序」の構築に乗り出すと語った。

 金正恩総書記は「党創建80年」を「勝利と栄光、創造と変革の80年」と意味づけたうえで、「党は社会主義の偉業遂行の進歩を目指した次の段階の闘争を開始する」と宣言した。2026年1月に予想される党第9回大会を機に、「金正恩第3期」の政治的支持と動力を集めることに今回の慶祝行事の焦点が当てられていることをうかがわせる。

今月10日夜、平壌の金日成広場で開かれた「朝鮮労働党創建80周年慶祝軍事パレード」で初めて公開された北朝鮮の最新大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲20」型。まだ発射実験を行っておらず、諸元・性能が正確に知られていないが、移動式発射車3台が参加した/朝鮮中央通信・聯合ニュース

■「火星砲20」型と「天馬20」型

 金総書記は、降り注ぐ秋雨にもかかわらず10日深夜に強行した軍事パレードで、いわゆる「最強の核戦略兵器体系」の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲20」型と、「現代式主力戦車」の「天馬20」型を初めて公式行事に登場させた。発射実験を行っておらず開発段階である「火星砲20」型は、米国全域が射程圏に入るとして北朝鮮側が「最終完結型」と自賛した「火星砲19」型より、諸元と性能が改善されたものと推定される。

 今回の軍事パレードの目的は「核+通常最新兵器」を共に宣伝することだ。金総書記は9月11〜12日に国防科学院を訪れ、「党の第9回大会は核武力と常用(通常)武力の並進政策を提示することになるだろう」と予告した。「核抑止力」がある程度整ったという判断に基づき、韓米同盟に大きく立ち後れた通常軍事力の向上を図るという意味だ。これは軍拡競争をさらに刺激し、「安保ジレンマ」を悪化させ、北朝鮮の経済建設をさらに制約しかねないという懸念を抱かせる。

■人民と経済

 金総書記は「慶祝行事」期間に3回の公開演説を行った。演説の焦点は「党幹部-人民-人民軍」でそれぞれ異なっていた。8日の「党創建史跡館」訪問記念演説では、「すべてを新しく変化させなければならない」とし「すべてが幹部たちにかかっている」と強調した。9日の「慶祝大会」(5月1日競技場)の演説では、「人民」という言葉を52回も使い、「人民の信頼に忠実であるために、もっと一生懸命に奮闘し、社会主義の楽園を実現させる」と誓った。10日の軍事パレードでの演説では、人民軍を「社会主義建設の突破口を開く尖兵隊伍」だと持ち上げたうえで、経済における役割の強化を求めた。3件の演説はいずれも「人民のための経済建設」という政治シグナルの発信と要約できる。

今月11日夜、平壌の金日成広場で開かれた「朝鮮労働党創建80周年祝賀・群衆デモおよび松明夜会」の様子。行事に参加した市民が作り上げた「朝鮮労働党」の文字の上に「金正恩」という文字が刻まれ、金総書記が朝鮮労働党を率いる「首領」という政治的シグナルを発信している/朝鮮中央通信・聯合ニュース

■「グローバルサウス」との協力強化

 金総書記は中国国務院の李強首相、ベトナム共産党のトー・ラム書記長、統合ロシア党のドミトリー・メドベージェフ議長と会談・面会し、軍事パレードや慶祝大会、国家宴会などに同行することで、「協力の意志」を固めた。ただし、これら3国との外交の結果は微妙に異なる。ベトナムとは「外務省、国防省、保健省など様々な分野での相互協力に関する合意文」を発表した。ロシアからは「労働党と統合ロシア党の共同声明」で、「(北朝鮮が核武装など)国防力の強化に向けた措置に対する確固たる支持」を引き出した。一方、中国とは多くの励ましの言葉を交わしたにもかかわらず、文書の合意は発表しなかった。2018年以降、金総書記と中国の習近平国家主席が6回にわたって会談したにもかかわらず、一度も文書による合意がない現実を思い起こさせる。

■対南・対米政策は?

 金総書記が祝賀行事期間中に数回にわたる演説で、一度も韓国と米国を直接狙って威嚇的な発言を行わなかったのは注目に値する。9月21日の最高人民会議の施政方針演説を通じて「米国が非核化への執念を捨て、平和共存を望むなら、向き合わない理由はない」としたうえで、「韓国は一切相手にしない」と「分離対応基調」を明らかにしており、今回は別途のメッセージを出さなかったものとみられる。

 ただし、軍事パレードの報道で、北朝鮮の官営媒体である労働新聞は「火星砲20」型を「我々の主敵を狙った」大陸間弾道ミサイルと述べ、朝鮮中央テレビは「江原道会寧郡(フェリョングン)第1軍団」を「最も敵対的な国家との尖鋭な対峙線」である「共和国南側国境の鋼鉄の砦」だと紹介した。米国は「主敵」、韓国は「最も敵対的な国家」という認識の表現だ。

イ・ジェフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1222885.html韓国語原文入力:2025-10-12 19:26
訳H.J

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