ベトナムの権力序列1位であるトー・ラム共産党書記長が9日、平壌(ピョンヤン)で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長と会談した。北朝鮮の官営「労働新聞」が10日付で報じた。トー・ラム書記長は8月10〜11日に韓国を国賓訪問し、李在明(イ・ジェミョン)大統領と首脳会談を行った。2カ月間でソウルと平壌を相次いで訪問したということだ。冷え込んだ南北関係改善の架け橋の役割を果たすことになるか、注目が集まる。
金総書記とラム書記長は会談で「協力関係を時代的要求に合わせて拡大していくことに伴う問題と相互の関心事について、虚心坦懐に意見を交わした」と同紙は報じた。金総書記は北朝鮮を「国家(国賓)訪問」したラム書記長の歓迎式典に出席し、歓迎宴会を主催した。ラム書記長は同日、平壌・綾羅島(ヌンラド)の「5月1日競技場」で行われた朝鮮労働党創建80周年慶祝大会で、主席団の金総書記のすぐ隣に立つなど、手厚いもてなしを受けた。
「労働新聞」は、両首脳が「会談結果に大きな満足感を示した」とのみ記し、両者の会談内容については具体的に報じなかった。
一方、ベトナムの官営メディアは、ラム書記長が主に取り上げた議題を比較的詳細に報道した。「ベトナムニュース通信」(VNA)の報道によると、同書記長は金総書記に「経済協力の強化を提案し、ベトナムの経験を北朝鮮と共有する用意ができている」と述べた。社会主義政治体制を維持しつつ改革開放政策で経済の復興に成功したベトナムの経験を、北朝鮮と共有することを提案したものとみられる。事実上、ラム書記長が金総書記に「改革開放」を勧めたともとれる内容だ。
VNAはさらに、「朝鮮半島問題に関して、関連当事国間の対話の促進、平和的な手段を通じた対立の解決、平和で安定的かつ協力・発展的な環境を共同で維持するための取り組みを支持する」というラム書記長の発言も報じた。同書記長が「対話と協力を通じた問題解決」を強調したという意味だが、これは核武装を前面に押し出した「力による平和」を強調し「韓国を一切相手にしない」という金総書記の政策基調とは異なるアプローチだ。「労働新聞」は両首脳が会談で核問題・南北関係などに関してどのような議論をしたのかについては報道しなかった。
これに先立ち、ラム書記長は李在明大統領との会談で、「朝鮮半島の平和と北朝鮮の核問題解決の実質的な進展に向けた協力」に同意したと、大統領室が明らかにした。
ラム書記長が2カ月間隔でソウルと平壌を相次いで訪問したことで、ベトナムを媒介にした南北首脳の「三者間接対話」を通じて南北関係の改善に向けた架け橋の役割をベトナムが果たせるのではという期待につながっている。
ベトナムは南北双方と格別な関係を結んでいる。北朝鮮とは社会主義政治体制を共有し、1960~70年代のベトナム戦争当時、米国に対抗して北朝鮮が空軍を派兵した歴史を持つ「理念のパートナー」だ。韓国とベトナムはベトナム戦争で「敵軍」として対抗して戦った痛ましい歴史があるが、2015年に自由貿易協定(VKFTA)を結び、今や互いに「3位の交易国」として緊密な協力関係を保っている。韓国はベトナムに直接投資を最も多く行う国だ。今年8月の会談で李大統領とラム書記長は「韓-ベトナム重要鉱物(クリティカルミネラル)サプライチェーンセンター」の設立に合意するなど、「韓-ベトナム包括的戦略パートナー関係の深化のための共同声明」を採択した。