hankyoreh

2021年10月1日、MBNの討論会に出演した尹錫悦前大統領の手のひらに、漢字の「王」の字が書かれているのが鮮明にみえる=MBNのYouTubeチャンネルより//ハンギョレ新聞社

　旧統一教会（世界平和統一家庭連合）のユン・ヨンホ元世界本部長が、最大野党「国民の力」のクォン・ソンドン議員に渡した1億ウォン（約1100万円）は半分ずつ分けて包装され、「王」の字の表示があったことが確認された。クォン議員に渡されたカネの一部は、尹錫悦（ユン・ソクヨル）前大統領の割り当て分として準備されたとみられる。

　18日のハンギョレの取材を総合すると、ユン元本部長は2022年1月5日、ソウル市汝矣島（ヨイド）の中華料理店で、紙箱に収められた帯封付きの現金1億ウォンをクォン議員に渡した。当時、1億ウォンは5000万ウォンごとにそれぞれ別の色の絹の布で包まれ、ノリゲ（チマチョゴリなどに付ける飾り紐）が付けられ、そのうち一つには「王」の字が刺繍されていたという。ユン元本部長の配偶者であり、当時は旧統一教会の財政局長を務めていたL氏は、同日午前10時ごろ、2つの箱を両方とも写真撮影した。そのため、旧統一教会内部では、渡されたカネの一部は当時大統領候補だった尹前大統領の割り当て分として準備されたとみている。ユン元本部長も特検チームの調査で、クォン議員に金品を渡した理由について、「大統領選を支援する目的」だとする趣旨の証言をしたという。尹前大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の疑惑を捜査するミン・ジュンギ特検チームも同様にこの事実を把握し、捜査中であることが分かった。

　尹前大統領は、クォン議員の仲介でユン元本部長に実際に面会したこともある。クォン議員は2022年3月22日、京畿道加平（カピョン）にある天正宮を訪問し、旧統一教会の韓鶴子（ハン・ハクチャ）総裁から金品が入っていたと疑われる紙袋を受け取った後、同日午後にユン元本部長を連れて、次期大統領の立場だった尹前大統領と面会していたことが調査によって判明した。尹前大統領はその際、「韓総裁に、大統領選での支援に対する謝意を伝えてほしい」と述べた。ユン元本部長による旧統一教会の懸案に関する請託については、「今後そのような事項を議論し、在任中に実現できるよう進める」と答えたという。実際に、旧統一教会の懸案のうち、アフリカへの公的開発援助の規模拡大など、一部については実現した。このため、尹前大統領が旧統一教会側からの金品授受の事実を知っていた可能性が指摘されている。

　金品を直接やりとりしたユン元本部長とクォン議員の身柄を確保した特検チームは、尹前大統領に金品が渡ったのか、旧統一教会の懸案が推進されるよう影響力を行使したのかなどについて調査するとみられる。特検の関係者は17日、記者団に「必要であれば、（尹前大統領に対する捜査が）行われるのではないかと考えている」と述べた。ただし、クォン議員側は金品を受け取った事実そのものを否認している。

　一方、特検チームはこの日、韓総裁と韓総裁の秘書室長であるC氏に対する拘束令状を請求した。2人には、政治資金法違反・請託禁止法違反・証拠隠滅教唆・横領の容疑などが適用された。特検チームの出頭要請に3回応じず、17日に自主的に出頭した韓総裁は、クォン議員に金品を渡すよう指示した疑いについて、ほぼ全面的に否認したという。特検チームは、韓総裁が証拠を隠滅する可能性が高いとみて、この日拘束令状を請求した。また特検チームは、旧統一教会の信者らが「国民の力」に集団入党した事実を確認するために、党中央事務所などに検察官と捜査官を送り、家宅捜索を行った。これに先立ち、特検チームは2回にわたり「国民の力」党中央事務所の家宅捜索を実施したが、重要な証拠となる党員名簿の確保には失敗した。