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金正恩委員長に親書用意したトランプ大統領、朝米外交再開の6つのシナリオ

登録:2025-06-13 06:42 修正:2025-06-17 09:32
崔鍾賢学術院、米ハドソン研究所とともに韓米専門家報告書を発表
米国のドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が2018年、シンガポールで首脳会談を行った後、散歩している=シンガポール情報通信部提供//ハンギョレ新聞社

 ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の金正恩国務委員長に親書を送ろうと試みてきたという報道があり、ホワイトハウスも朝米首脳会談の再開を望んでいるとの意向を表明したことで、朝米外交がどのように再稼働するかに対する関心が高まっている。

 2018年6月12日に行われたシンガポール朝米首脳会談7周年を迎え、崔鍾賢(チェ・ジョンヒョン)学術院(Chey Institute for Advanced Studies、理事長:チェ・テウォンSK会長)は12日、米シンクタンクのハドソン研究所と共に、報告書・政策提言書の「交渉、膠着、そして抑止:朝米外交再開に向けたシナリオ」を発刊した。

 今回の報告書は朝中ロの連帯強化と北朝鮮の核・ミサイル能力の高度化、第2次トランプ政権と大韓民国の新政権発足など、急変する外交環境を反映して企画された。報告書には韓米両国の外交・安全保障専門家らが多く参加し、朝米間の外交再開の可能性とこれにともなう戦略的対応を6つのシナリオを基に分析した。

 報告書の執筆には、米ハドソン研究所のパトリック・クローニン・アジア太平洋安全保障部長をはじめ、米平和研究所のフランク・オム元上級研究員、米国スティムソンセンター傘下「38ノース」のジェニー・タウン局長、全米北朝鮮委員会(NCNK)のキース・ルース事務局長、ジョセフ・デトラニ元米国務省北朝鮮特使、ケイトー研究所のダグ・バンドウ上級研究員、韓米核協議グループ(NCG)の米国側代表を務めたビピン・ナランMIT教授など、米国内の著名な外交安全保障専門家らが参加した。韓国政府に対する政策提言は、報告書執筆陣のオンライン・ワークショップにおける議論を基に、ソウル大学政治外交学部のチョン・ジェソン教授が代表で執筆した。この報告書と政策提言書は、崔鍾賢学術院のウェブサイト(www.chey.org )で閲覧できる。

 崔鍾賢学術院のキム・ユソク代表は発刊の辞で、「ここのところ国際的関心が関税とサプライチェーンなど経済安全保障イシューに集中している中、朝鮮半島の安全保障と関連した不確実性と突発要因も依然として存在している」とし、「6・12シンガポール朝米首脳会談7周年という象徴的時点を機に、今回の報告書が両国の政策当局者に実質的な戦略的示唆点を提供することを願う」と述べた。

 多くの専門家が、交渉再開や軍縮、凍結など、北朝鮮の核のリスクを管理する対話に重点を置く提案をした。

 フランク・オム元上級研究員は、朝米間の「安定的共存」に向けた案として、「スモール・ディール(small deal)」のシナリオを示した。「短期的に実質的なスモール・ディールを成功させていくことで、今後包括的で友好的な交渉の雰囲気につながる可能性がある」との見通しだ。特に「交渉での米国の影響力は弱まった状態であり、2019年のハノイ朝米首脳会談当時よりさらに多くの譲歩をする可能性もある」と診断した。 そして、過去にも論議された「北朝鮮の核実験および長距離ミサイル発射実験の中止と、米国の合同訓練の縮小、戦略資産の展開縮小の交換」に言及し、ここに寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄と対北朝鮮制裁の一部緩和(繊維、海産物、労働力、石炭、鉱物など)を交換するスモール・ディールの推進も予想できると強調した。

 オム元研究員は5日に報告書執筆の一環として開かれたオンライン・ワークショップで、「バラク・オバマ政権とジョー・バイデン政権の慎重な対北朝鮮外交アプローチは結局、北朝鮮の核危機に対する実質的対応を遅らせ、朝鮮半島の安全保障状況を悪化させた」として、第1次トランプ政権が見せた果敢な対北朝鮮外交の再開を強く主張した。

 ジェニー・タウン局長は「持続可能な解決策は朝鮮半島の戦争を正式に終息させ、外交関係を樹立することから出発しなければならない」とし、「北朝鮮の体制の持続性と朝中・朝ロ関係の戦略的重要性を冷静に再評価しなければならない」と述べた。キース・ルース事務局長は、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長との個人的な親交を外交資産とみなし、四半期ごとに高官級会談を制度化すべきだと提案した。そして、「これを通じて終戦宣言と非核化交渉の再開に向けた土台を作ることができる」とし、「究極的には両国首脳の相互訪問と外交正常化へと導くこともできる」と語った。

 ダグ・バンドウ上級研究員は「北朝鮮を事実上の核保有国として認め、米国の非核化目標を再調整しなければならない」とし、「根本的な解決策よりは抑止と脅威管理、軍備統制を優先視すべきだ」と主張した。

 一方、バイデン政権で最近まで韓米核協議グループの米国側代表だったビピン・ナラン教授は、早急な外交は北朝鮮を有利にし、韓米同盟にも亀裂を招きかねないと警告し、抑止力の強化を強調した。ナラン教授は「北朝鮮は2019年以降、核とミサイルの能力を大きく高度化させ、ロシアとの密着で制裁の解除を切実に求めている状況ではない」とし、「このような現実の中で、実質的な外交よりは北朝鮮の核に対する抑止力の強化がむしろ朝鮮半島内の危険を減らす最も効果的な案」だと強調した。ナラン教授は抑止力強化の一環として、朝鮮半島における核推進巡航ミサイル(SLCM-N)の前進配置のような実質的措置を提案し、李在明(イ・ジェミョン)政権にも「拡大抑止に対する公開的支持を表明することで、韓米連携の一貫性を明確にする必要がある」と助言した。

 ナラン教授はオンライン・ワークショップで「1994年から2002年まで北朝鮮の核外交が活発だったのは、北朝鮮が核実験をせず、交渉で活用するテコがなかったため」と分析した。一方、オバマ政権時代は金正恩委員長が指導者として権力を強固にした時期だったため、北朝鮮が交渉に無関心だったことを強調した。さらに「バイデン政権も北朝鮮の核問題をめぐる外交の再開に向け北朝鮮と数回接触を試みたが、北朝鮮はこれに応じなかった」と語った。

 韓国の専門家たちは「米国の対北朝鮮交渉過程で、同盟である韓国の利害が排除されてはならない」と強調した。政策提言書を代表執筆したソウル大学のチョン・ジェソン教授は「トランプ大統領は『行動対行動』方式の可視的で実質的な合意を好む可能性が高い」とし、「たとえトランプ大統領が個人的アプローチを取っても、交渉過程で韓国が排除されないよう、事前に米国と緊密に協議することが何より重要だ」と述べた。さらに「朝米交渉の再開に備え、韓国は中長期ロードマップを用意しなければならず、いかなる方式の交渉が行われても韓米同盟が損なわれないよう、徹底した事前調整が必要だ」と強調した。

 梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮は事実上、核保有国の地位を既成事実化し、米国との核軍縮交渉を試みる可能性がある」と診断した。さらに、「このような状況であるほど、米国と韓国は『北朝鮮の非核化』という原則を明確にし、交渉に乗り出さなければならない」と強調した。また「在韓米軍の撤退など北朝鮮の過度な要求に対応するためにも、交渉の基本原則とガイドラインを事前に設定しておく必要がある」と語った。

 韓国国防研究院のイ・サンギュ室長は「朝米交渉を成功させるためには、韓米間の長期的目標に対する共感の形成、明確なレッドラインの設定、そして北朝鮮が合意を履行しなかった場合、元に戻すことができる相応措置の用意が重要」だと強調した。特に「在韓米軍の削減はいかなる場合にも交渉カードとして使われてはならない」と強調した。

 これに先立ち、北朝鮮専門メディア「NKニュース」は匿名の高官級消息筋の話として、トランプ大統領が対話再開を目標に北朝鮮の金正恩国務委員長に送る親書の草案を作成したが、親書を渡そうとする数回の試みにもかかわらず、ニューヨーク・マンハッタンの北朝鮮外交官たちが受け取りを拒否したと報道した。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官はこの報道に関する質問に対し、「2018年に彼(トランプ大統領)の初任期の時、シンガポールで開かれた(朝米)首脳会談で成し遂げられた進展を見ることを望んでいる」と答えた。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1202530.html韓国語原文入力: 2025-06-12 18:47
訳H.J

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