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異例の騒動の末、与党大統領候補にキム・ムンス氏…中道拡張への可能性を自ら遮断か

登録:2025-05-12 08:15 修正:2025-05-12 10:34
候補登録直後「弾劾反対」パク・テチュルを事務総長に任命
国民の力から大統領選に出馬したキム・ムンス候補とハン・ドクス前首相が11日、ソウル汝矣島の国民の力の大統領候補事務所で、会合に先立って抱き合っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 一晩で変わっていた与党「国民の力」の大統領候補が、キム・ムンス氏に確定した。6月3日の大統領選挙は、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補と、与党「国民の力」のキム・ムンス候補の2者構図で行われることになった。ここに改革新党のイ・ジュンソク候補、民主労働党のクォン・ヨングク候補らが加わる。

 国民の力が9~10日の2日連続で演出した候補交代をめぐる「深夜のどろどろドラマ」、かつて労働運動をしていた時代に拷問されたことまで掘り返して訴えたキム候補の「粘り腰」は、大統領選挙の支持率にどのような影響を及ぼすだろうか。ハン・ドクス前首相への一本化を望んだ保守層の票がどのように反応するか、親尹錫悦(ユン・ソクヨル)派の圧力に打ち勝ったキム候補に中道層の一部が乗り換えるかがカギとなる。

 ハンギョレとSTIが、昨年12月4日から今年5月9日までの間に中央選挙世論調査審議委員会に登録された115の世論調査を総合して抽出した予測調査(世論調査メタ分析)の3者仮想対決の結果(10日現在)は、イ・ジェミョン候補49%、キム・ムンス候補28.9%、イ・ジュンソク候補6%だった。「ハン・ドクス」で3者仮想対決を実施した場合はイ・ジェミョン候補50.2%、ハン・ドクス候補33.3%、イ・ジュンソク候補5.1%だった。国民の力の候補が誰になってもイ・ジェミョン候補の圧倒的優位が明らかな中、ハン・ドクス候補にしたとしても、その差は3.2ポイントほど減るにとどまる。候補交代劇の騒動の前も、一本化の効果は3ポイント程度だったということだ。

 12日から大統領選挙の公式の選挙運動がはじまる。選挙は有権者の関心をつかむことが肝要であるという点で、国民の力としては、敗色が濃厚な中、選挙運動序盤の候補騒動によってひとまず有権者の視線を向けさせることには成功した。キム候補は候補交代の強制に立ち向かい、勝算がなさそうな中で逆転ドラマを作り出した。

 キム候補としては、支持の中道への拡張の最大の足かせだった親尹錫悦派と正面衝突したことが、中道層へのアピールの好材料となる。キム候補は11日午前に中央選挙管理委員会に国民の力の候補として登録を終えた後、「我が党だけでなく、より幅広い陣営を組織して国民の意思を収れんする」と述べた。

 ただし、中道層への拡張は現在のところは微々たるものとみられる。早速、キム候補は拡張の可能性を自ら遮断する人事を断行している。キム候補は候補登録の直後、党の組織や予算などに責任を負う事務総長に、当選4回のパク・テチュル議員を内定した。パク議員は極右勢力の主催した尹錫悦弾劾反対集会に参加しており、弾劾の却下を求める国民の力の議員の嘆願書にも名を連ねている。

 民主党は、国民の力に戦列を整える隙を与えず、猛攻に打って出た。内乱残党(ハン・ドクス)から内乱同調者(キム・ムンス)に候補が変わったに過ぎないということだ。民主党の中央選挙対策委員会のハン・ミンス報道担当はこの日の書面ブリーフィングで、「尹錫悦党がチョン・グァンフン党に変わるに過ぎない。内乱の本丸の『国民の力』は依然として国民の審判の対象」だと攻撃した。キム・ミンソク常任共同選対委員長も「チョン・グァンフン牧師の自由統一党と連帯して極右陣営を結成するのか」と批判した。

 中道層はもちろん、保守層がキム候補に心を開くかも問われる。保守層は複数の世論調査で、ハン・ドクス候補との一本化が必要だとの立場が強く示されていた。最終候補についても、ハン・ドクス候補であるべきとする回答の方が多かった。粘って事実上一本化の約束を覆したキム候補としては、選挙運動初日から「固い支持層」とみなされていた保守層をまず固めなければならない状況にある。

 「党員の意思」がキム候補を救ったとはいえ、それもやはり問うべき部分が多い。ハン前首相への候補変更の賛否を問う党員世論調査の結果は公開されていない。国民の力は「わずかな差」だったという。党員の意思が動いたといわれているが、キム・ムンス候補ではなくハン・ドクス候補を望む主要支持層も堅固だったわけだ。ハン前首相側のイ・ジョンヒョン報道担当は、党員の意思の変化について、「推測はしているが、終わったことなので評すべきことはない」と述べた。前日にはホン・ジュンピョ、ハン・ドンフン、アン・チョルス、ナ・ギョンウォンら党員動員力のある人々が、候補の強制交代を激しく批判している。焦ったハン前首相は緊急記者会見を行い、「(ハン・ドクス個人の意思を殺して)ホン・ドクス、アン・ドクス、ナ・ドクスになる」と訴えた。

 それを意識したかのように、キム候補は候補登録後、ハン前首相と会って抱擁しあう場面を演出した。キム候補はその場でハン前首相に選挙対策委員長への就任を提案したが、ハン前首相はすぐには受諾せず、「適切かどうか議論してみる」という中途半端な返事をするにとどまった。

キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/election/1196795.html韓国語原文入力:2025-05-11 11:03
訳D.K

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