朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン副部長が4日、米軍の原子力空母が釜山(プサン)に入港しことを「挑発行為」だとし、「我々も当然、戦略的抑止力の行使において記録を更新せざるを得ない」と述べた。第2次ドナルド・トランプ政権発足後、キム副部長が談話文を発表したのは今回が初めて。キム副部長はこれまで、口語体の荒い表現を混ぜて論評してきたが、今回は文語体の精製された文を発表した。専門家たちは、北朝鮮が米国と交渉を始めるのに必要なそれなりの「ガイドライン」を、トランプ米大統領の機嫌を損ねないレベルで示したものとみている。
キム副部長はこの日、北朝鮮官営「朝鮮中央通信」を通じて発表した談話で、「米国は朝鮮民主主義人民共和国の安全上の懸念を無視し、情勢を悪化させる挑発的な行為を常習的に敢行している」とし、「戦略的抑止力の行使」方針を示した。さらにキム副部長は、「2024年の一年を通して、事実上史上最大の反共和国的な戦争演習策動で新記録を立ててきた米国は、新政権が発足するやいなや、今年も前政権の対朝鮮敵対視政策を継承し、我々に反対する政治・軍事的挑発行為を段階的に拡大・強化している」と論評した。
キム副部長はまた「我々はじっと座って情勢を論評することだけにはとどまらない」とし、「米国が引き続き軍事的な力の示威行為で記録を更新していくならば、我々も当然、戦略的抑止力の行使で記録を更新するしかない」と述べた。それと共に「朝鮮半島における米戦略資産の展開が悪習化された形で固まり、これにより我々の安全権に否定的影響が及ぶことに対処し、我々も敵国の安全権に対する戦略的水準の威嚇行動を増大させる選択肢を慎重に検討する計画」だと述べた。
北朝鮮は第2次トランプ政権に入り、必要な時は国防省、外務省などの名義で論評を出したが、キム副部長が談話や論評を発表したことはなかった。今回、キム副部長の名前で談話を発表したのは、事実上金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の意向と捉えることができるため、その重みはこれまでとは違う。キム副部長は談話で、米国の行動を批判しながらも、トランプ大統領については直接触れなかった。ただし、トランプ政権がジョー・バイデン前大統領の政策を「継承」するなら、行動に出るという方針を示した。バイデン前大統領のような条件では交渉の場に出られないという「シグナル」と言える。
専門家らは、キム副部長の談話がかなり精製されていると評価し、米国に交渉のための一種のガイドラインを提供するものだと分析した。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「対話の先決条件として、朝鮮半島における米国の戦略資産の展開を中止すること、韓米軍事演習の中止などを挙げたと思われる」と診断した。統一研究院のホン・ミン先任研究委員は「昨年、韓米合同演習、韓米日共同演習を含め55回の演習を行ったが、このような状況が続くなら、北朝鮮もより多くの軍事的オプションを実行に移せざるを得ないという『条件付きの脅し』」だとし、「それも直ちに行うというのではなく、選択案を慎重に検討すると述べており、かなり精製された文章」だと評価した。
国防部はキム副部長の談話について、「北朝鮮のキム・ヨジョンが、FS(フリーダムシールド)演習を控え拡大抑止コミットメントの履行に向けた米戦略資産の展開や韓米合同演習などを非難したのは、核ミサイル開発を正当化し、挑発の名目を作っていくための詭弁に過ぎない」と批判した。