今月1日の夜、ソウル都心で歩道に突っ込み、9人の命を奪った加害車両は、ホテルの地下駐車場を出る瞬間に急加速を始めていたことがわかった。駐車場を出た後、一方通行の道路に誤って進入し、操作ミスをしたという一部の推測とは異なる状況だ。加害車両の同乗者は「ブレーキが効かなかった」との証言を続けている。
ソウル南大門(ナムデムン)警察署は3日のブリーフィングで、加害車両の急加速が始まったのはいつかについて、「ホテルの地下駐車場の出口のところにハンプ(スピードを落とすために若干盛り上がった場所)があるが、そのハンプから加速が始まったことが映像で確認された」と説明した。地下駐車場の出口を出て右に90度ほど曲がると、事故が起きた一方通行の道路(世宗大路18道)へと逆方向に進入することになる。加害車両が地下駐車場を出る際に他の車と衝突しそうになったなどの突発状況もなかった。サムスン火災交通安全研究所のチャン・ヒョソク責任研究員は、「慎重に申し上げるが、ハンプを越えるためにアクセルペダルを踏み続けたため急加速が始まった可能性もある」と語った。
この日、ハンギョレがホテルの地下駐車場の出口を確認したところ、傾斜の緩やかなハンプを越えながら右折し、大通りに進入する構造だった。この地下駐車場から車を運転して出てきた運転経歴40年のLさん(67)は、「運転経歴のある人だったら、ハンプを越える際に自然にアクセルから足を離してスピードを落とす。大通りに合流するためには、左右を確認しなければならないからだ。バスの運転手だという人がハンプを越える際に急加速したというのは理解できない」と話した。
事故原因をめぐって混乱が続く中、警察はこの日、「ドライバーは夫婦げんかの途中で腹立ちまぎれにアクセルを踏んだ」という一部のうわさについて、「加害車両のドライブレコーダーに録画された音声と、ホテルおよび周辺のCCTV映像などを総合すると、まったく事実ではない」と述べた。
加害車両のドライバー側は、重ねて「急発進」を主張している。同乗していたドライバーの妻は前日の警察の参考人調査で、「ブレーキを踏んだが作動しなかった」と主張した。制動装置をかけると現れる「スキッドマーク(タイヤ痕)」は事故現場では発見されていない。急加速から事故直後まで、ブレーキは踏まれていないか、作動していないということだ。EDR(事故情報計測・記録装置)にフルアクセルの90%ほどにまで加速した跡が残っているともされるが、警察は「捜査中の事案」だとして回答を避けた。警察は独自のEDRの分析結果、加害車両、ドライブレコーダーとCCTVの映像を国立科学捜査研究院に送り、鑑定を依頼した。
加害車両のドライバーの調査はまだ行われていない。警察の関係者は、「体調が好転すればできるだけ早いうちに取り調べる」と述べた。事故の被害者はこの日、1人(軽傷)が追加された。現在のところ、死傷者はドライバーを含めて16人(死亡9人、負傷7人)。