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ベトナム戦争での虐殺被害者、またも挫折…韓国司法「過去事法の究明対象ではない」

登録:2024-06-26 00:54 修正:2024-06-26 08:45
真実和解委の調査却下に続いて行政訴訟でも棄却
ハミ虐殺の被害者ら5人が真実和解委を相手取って起こした真実糾明却下処分取り消し訴訟の判決が言い渡された25日午後、ソウル行政裁判所前で支援者がプラカードを手に記者会見をおこなっている=チャン・ヒョヌン記者//ハンギョレ新聞社

 「私はとても失望したということしか申し上げられません。私たちハミ村虐殺の被害者は韓国軍に家族を奪われ、民間人虐殺の被害にあいました。過ちを犯したら当然責任を取るべきなのに、どうしてこんな判決が出るのでしょうか…。韓国政府にはあまりにも失望し、非常に悲しく思います」(グエン・ティ・タンさん)

 真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)にベトナムのハミ虐殺事件の真実糾明を申請したものの、調査段階で却下されたベトナム人被害者が、韓国司法にこの決定の取り消しを求めて起こした行政訴訟でも敗訴した。

 ソウル行政裁判所行政8部(イ・ジョンヒ裁判長)は25日、ベトナム人のグエン・ティ・タンさん(67)ら5人が真実和解委を相手取って起こした真実和解委却下処分取り消し訴訟で、「外国で起きた人権侵害事件まで(真実究明の対象に)含めることは、過去事整理法の目的に合致しない」として、原告の請求を棄却した。

 ハミ虐殺は、1968年2月24日、ベトナムのクアンナム省ディエンバン市社ディンズオン坊ハミ村で、韓国海兵隊が135人の住民を銃撃して殺害した事件だ。犠牲者の大半が老人、女性、子どもで、事件の翌日にはブルドーザーによる遺体の損壊まで起きていたことが分かっている。ベトナムのダナン市に住むグエン・ティ・タンさんらハミ虐殺の被害者と遺族ら5人は、2022年4月に真実和解委に真実究明申請書を提出した。2005年12月の真実和解委発足後、ベトナム戦争における民間人虐殺についての真実究明が申請された初の事例だった。

 だが真実和解委は2023年5月、ハミ虐殺事件の調査申請を却下した。真実和解委のキム・グァンドン委員長のこの時の判断は、「真実和解委基本法は外国人のために拡大適用される事案ではないと判断する」というものだった。グエン・ティ・タンさんらは、「過去事法には、外国人に対して外国で起きた事件を調査対象から排除する規定はない」として、昨年7月に真実和解委を相手取って行政訴訟を起こした。

 今回の行政訴訟の争点もやはり、「外国で起きた人権侵害事件は真実究明の対象に当たるか」だった。この日午後、市民団体のメンバー、取材陣ら30人あまりで埋め尽くされたソウル行政裁判所のB204号法廷で、判決は「この事件の申請は、過去事整理法の目的の達成のために真実究明が必要なケースに当たるとみなすことは難しい」とし、「過去事整理法の立法の趣旨は分断、朝鮮戦争、独裁などの時期に大韓民国国民の人権などが侵害されたケースについての真実だ」と述べた。そして「原告の主張に従った場合、真実究明の範囲が過度に拡大する可能性が高く、法の効力の及ぶ領土的、人的限界などにより調査や真実究明の現実的な実現が難しいうえ、外交的な摩擦などの様々な問題を引き起こす恐れがある」とし、「一方、過去事整理法に寄らずとも大韓民国には権利救済を申請する方法が存在する」と述べ、請求を棄却した。

 被害者の弁護人を務めたキム・ナムジュ弁護士(法務法人トダム)は判決後の記者会見で、「(権利救済には別の方法があるとした裁判所の判断について)戦争孤児として生き、すでに老人となっているベトナム人が、大韓民国の裁判所で訴訟を起こすのは本当に難しい」とし、「(事件当時)証拠を隠滅するために遺体まで燃やした。証拠も隠滅しておいて『加害国の法廷に来て訴訟を起こせ』という裁判所の態度は非常に遺憾」だと述べた。続いて「外国で起きた外国人に対する重大な人権侵害は調査しないというのは、この事件を調査しないようにするために作った論理だ。真実和解委の調査対象はそれほど偏狭ではない」と述べつつ、先に真実究明が決定された海外養子縁組に関する事件や在日同胞スパイ団事件などの例をあげた。申請人の1人であるグエン・ティ・タンさんはこの日の判決後、オンラインで「真実和解委が私たちの要求を受け入れて真相を究明するのは当然だと思う」と述べた。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1146388.html韓国語原文入力:2024-06-25 16:09
訳D.K

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