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韓国「救急患者の受け入れ先が漸減」10カ所以上に電話、ようやく搬送

登録:2024-05-21 09:10 修正:2024-05-21 09:57
医療の空白3カ月、医療システム緊急点検 
 
43の圏域救急医療センター中、18センターが 
医療スタッフの疲労蓄積で一部診療が困難 
 
状況室の医師は少なくとも30人必要 
首都圏以外の全羅、忠清、慶尚は未確保
今月10日、ソウル中区の国立中央医療院中央救急医療センター内の「首都圏広域救急医療状況室」で、スタッフが救急室の情報などを確認している=イム・ジェヒ記者//ハンギョレ新聞社

 20日で医療の空白が丸3カ月となった。ハンギョレは、医療現場の最前線である広域救急医療状況室(広域状況室)と医療脆弱地を点検した。救急室を問い合わせる電話は急増しており、地方の患者たちは必要な時に治療を受けられていない。これこそ、一日も早く医療連絡システムを正常化すべきもう一つの理由だ。<編集者注>

 「薬物中毒が疑われますが、意識が回復しないため検査が必要な状態です」

 ソウル中区(チュング)の国立中央医療院「首都圏広域状況室」に10日午後4時30分、緊急電話が入った。江原道のある地域救急医療機関の医療スタッフは焦っていた。近隣の5つの病院に問い合わせたものの、断られていたのだ。意識のない40代の患者を治療するには、より大きな病院での検査や診断が必要不可欠だった。首都圏広域状況室の支援を仰ぐしかなかった。広域状況室も緊迫した。江原道の大病院に電話した末に、「患者を送ってよこせ」との返事をもらった。広域状況室に連絡が来てから23分たっており、10回目の電話だった。広域状況室の関係者は「普通は10カ所以上に電話をかけて、平均1時間ほどかかるが、運が良かった」と話した。

 政府は専攻医(インターン、レジデント)が離脱した医療の空白を埋めるため、非常診療システムを稼動している。救急患者の転院を支援する「広域状況室」もその一つだ。4~5月に首都圏、忠清圏、全羅圏、慶尚圏などに設けるとしていた計画を、医療の空白を受けて1~2カ月前倒しした。

 広域状況室は、患者の重症度や病院治療が可能かどうかなどを考慮して適正な病院を探す。国立中央医療院によると、10人に1人が救急室を利用し、後に適切な治療を受けるために他所に移る。2022年の転院患者は48万5844人で、救急室の患者総数(506万1764人)の9.6%。

 転院はスピードがカギだ。代表的な重症救急疾患である心筋梗塞は、胸の痛みの発生から2時間以内に治療しなければならない。広域状況室は2~4人の状況要員、1人の状況医師がチームを組んで24時間歯車のように動く。状況要員は患者の状態を、状況医師は患者に合った医療機関を判断する。別の状況要員は電話で転院が可能な救急室を探す。医療の空白の長期化で重要性は増している。保健福祉部によると、4つの広域状況室の処理件数は3月433件、4月693件。5月は16日までで419件にのぼる。この日、状況医師を務めた国立中央医療院中央救急医療センターのキム・ジョンオン災害医療政策室長は、「(転院要請件数は)右肩上がり。(専攻医がいないため)手術が難しくなったり、入院する部屋がなかったりで転院する大学病院の例が3月から少しある」と語った。

 問題は、業務は増えているにもかかわらず、医療の空白で人材がいないことだ。特に、所属病院の勤務時間を割いて広域状況室で交代勤務している状況医師の確保が急がれる。状況の切迫さを判断するために、状況医師は救急医学科、内科、外科の専門医でなければならない。正常に運営するためには1つの広域状況室に少なくとも30人必要だが、確保されているのは首都圏のみ。地域間の医療格差はここにも表れている。全羅圏は5人にとどまっており、慶尚圏は12人、忠清圏は13人のみ。専攻医の離脱で救急室の人員も足りていないため、志願者を探すのも難しい。福祉部は12人の公衆保健医(公保医)を広域状況室に配置しているが、家庭医学科や小児青少年科の専門医も含まれているため「弥縫策(びほうさく)」だと評される。

 さらに、転院にかかる時間も長くなっている。医療の空白の長期化により、重症患者や救急患者の診療能力が最も高い最上位の救急室である圏域救急医療センターですら、43センター中18センター(16日現在)で一部の診療が難しくなっている。専攻医の割合が低い2次医療機関の救急室も状況が悪化している。キム・ジョンオン室長は、「3月までは(専攻医の割合が低い)2次病院が多くの患者を受け入れてくれたが、2次病院の医療スタッフの疲労も蓄積してきているため、2次病院が転院を要請してくるケースも増えた」と語った。

 医療の空白は、韓国の救急医療システムの虚弱さをあらわにした。政府は今月から、最重症救急患者を救急車で搬送する過程でも、広域状況室の支援が受けられるようにしている。しかし、専攻医が離脱して徐々に疲労が蓄積していっている救急室は、広域状況室の要請にも次第に応じなくなりつつある。大韓救急医学医師会のイ・ヒョンミン会長は、「患者を連れてきても手術を担うべき診療科が患者をみられないため、(転院を)断らざるを得ない。2次病院の力量もほぼ消耗しているため、患者の被害が大きくなるのではないかと心配だ」と話した。「健康権実現のための保健医療団体連合」のチョン・ヒョンジュン政策委員長は、「集中治療室の業務を担ってきた専攻医がおらず運営がうまくいかないものだから、救急患者が治療後に行くべき集中治療室に余裕のない救急室は患者を受け入れるのが難しい。専攻医が復帰してくれたらと思うが、難しいなら政府は直ちに病院が専門医をさらに雇用したり集中治療診療に集中したりできるよう、実質的な対策を打ち出すべきだ」と述べた。

イム・ジェヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1141347.html韓国語原文入力:2024-05-21 05:00
訳D.K

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