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韓国でジャガイモ栽培危機…「種イモ植えられない3月は初めて」

登録:2024-04-09 00:55 修正:2024-04-09 14:57
[現場]高冷地作物をも襲った地球温暖化 
春川のジャガイモ農家キム・ドクスさん 
3月に雨が降ったりやんだり 
種イモが植えられず気が気でない
韓国のジャガイモの生産量と栽培面積 //ハンギョレ新聞社

 「20年ジャガイモを栽培してきて、こんなに異常な3月は初めてです」

 今月5日、江原道春川市西面(チュンチョンシ・ソミョン)のジャガイモ農場で取材に応じたキム・ドクスさん(53)は、約5千平方メートル(約1500坪)の何も植わっていない畑を眺めながらため息をついた。キムさんをはじめとするこの地域の農家は普通、3月中旬ごろに「スミ(正式名称はスペーリア)」という品種のジャガイモの種イモを植え、梅雨前の6月中旬ごろに収穫するが、今年は3月中に雨が降ったりやんだりしたため時機を逸してしまったのだ。前日になってようやく耕されはじめた畑には、所々に黒い堆肥がまかれているのが見えるだけだった。

 キムさんは「地面が湿っていてこの時期になるまで種イモが植えられなかったのは今年が初めて。梅雨の期間に集中豪雨にまで襲われ、今年のジャガイモが台無しにされるのではないかととても心配している」と話した。植えるのが遅れ、収穫が梅雨のさなかの6月末以降にずれ込めば、土の中のジャガイモが腐ってしまう恐れがあるというのだ。

 キムさんがジャガイモ栽培を選択したのは、ジャガイモが他の作物より気候変動の影響を受けにくい作物だからだ。「ジャガイモは寒冷地ややせた環境でもよく育ちます。他の作物より天気の影響もあまり受けません。世界中でジャガイモが重要な食糧資源になっているのも、どこでも育てられるからです」。実際にひどい干ばつや台風で周囲の果物農家が泣いていた時も、キムさんのジャガイモ栽培は「ごく普通だった」と話した。

 だが、それもすべて昔の話だ。ここ数年は異常気象のせいで大きな被害を受けることが多くなった。特に2022年の夏には、集中豪雨でジャガイモ農業が「完全に」台無しになった。「普通は強い雨が降ったとしても一日二日だが、あの時は四日以上の記録的な豪雨で、畑が浸水しました。西面は川の周りの堆積層で排水がよい方だから、そのようなことはなかったんですが、あの時の浸水では土の中のジャガイモがすべて腐ってしまいました」

 ジャガイモ栽培農家にとって収穫期の集中豪雨と同じくらい避けたいものが「高温」だ。国際ジャガイモ研究所によると、ジャガイモは「熱ストレス」に敏感なため、気温が1度上昇するごとに生産量が5%減少する。加えて、気温の上昇によって高温多湿な環境になると、ジャガイモのような高冷地作物の病害虫被害も増える。国立食糧科学院高冷地農業研究所のイ・ヨンギュ研究官は、「特に国内のジャガイモ農家が最も多く植えるスミは、気温上昇に伴って2016年以降は土壌病害である『半身萎ちょう病』の発症率が高まっている」と語った。

5日、江原道春川市西面のジャガイモ畑で取材に応じたキム・ドクスさんが、まだ種イモの植わっていないジャガイモ畑を眺めている=オク・キウォン記者//ハンギョレ新聞社

 実際にキムさんが農業をはじめた1993年から1998年にかけての春川の平均気温は10.8度だったが、ここ5年(2019~2023年)の平均気温は12.2度に上昇。キムさんは「(病害虫が深刻化しているため)4年前からは使っていなかった薬も使っている」と話した。

キム・ドクスさんが栽培予定のスミ品種の種イモ。韓国を代表する品種であるスミは、地球温暖化と梅雨の長期化のせいで病害虫の被害が深刻化している=オク・キウォン記者//ハンギョレ新聞社

 そのせいでジャガイモの生産量も激減している。キムさんは、「2010年ごろには、うまくいった時には坪当たり15キロだった生産量が、最近では10キロにまで落ち込んでいる」と語った。統計庁の農作物生産調査によると、2011年には約62万2千トンだった韓国のジャガイモ生産量は、2022年には48万1千トンと22.6%も減少。ジャガイモの栽培面積も同期間に2万7千ヘクタールから2万ヘクタールにまで減っている。農家では、2010年までは韓国ジャガイモ市場シェアの80%以上を占めていたスミは、気温上昇による病害虫被害で最近は50%にまで落ち込んでいるとみている。

 キムさんの隣人の農家の中には、2022年の集中豪雨でジャガイモ栽培が台無しになり、秋冬のハウス野菜栽培へと転向した農家もあったという。かつてはジャガイモや白菜などの高冷地作物が主に栽培されていた江原道旌善(チョンソン)は、完全にリンゴの栽培地へと変貌しているほどだ。「2060年以降は、江原道を除く南部地域でのリンゴ栽培は事実上不可能になる」(農村振興庁リンゴ栽培適地予測図)との見通しに従って、農家が江原道に移住したのだ。旌善郡臨渓面(イムゲミョン)でリンゴ農場を経営するイ・ミョンギュさんは、「10年前にジャガイモ畑だった土地でリンゴを育てている。うちの地域の180軒あまりのリンゴ農家中、100軒以上は南からやって来た外地人」だと話した。

 韓国農村経済研究院のパク・ハヌル果物果菜観測チーム長は、「高冷地野菜を育てていた江原道にまでリンゴのような果物栽培地が北上していることで、韓国の農作物の栽培地図が変化しつつある。春や秋のヒョウや集中豪雨のような異常気象現象がひどくなり、農業の予測不可能性を高めている」と語った。

春川/オク・キウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1135617.html韓国語原文入力:2024-04-08 07:00
訳D.K

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