慶尚道選出議員「大統領の意向は、自分が党を掌握して総選挙を行うという意味」
首都圏選出議員「国民からは検察共和国という意見が出てくるだろう」
与党「国民の力」が21日に尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領の側近であるハン・ドンフン前法務部長官を非常対策委員長に指名したことは、3カ月後に控えた総選挙を「党政一心同体」で進める道を選択したものだと読み取れる。党内では、刷新の中心に指定された「垂直的な党と大統領室の関係打破」とは反対の選択とみる懸念が少なくないなか、一方ではハン長官は言うべきことは言うとして、ひとまず見守ろうという反応も出ている。
「ハン・ドンフン非常対策委員会」体制への転換は一気に進められた。「国民の力」は13日、キム・ギヒョン元代表の辞任の8日後に、ハン前長官を非常対策委員長に指名した。党内での懸念と反発は少なくなかったが、主流派である親尹錫悦派は、はばかることなくハン前長官を非常対策委員長の指名者に押し上げた。ユン・ジェオク党代表権限代行兼院内代表は、ハン前長官を指名した理由として、若さ、斬新さ、保守結集を挙げた。ユン権限代行は「ハン前長官は最も若く斬新な非常対策委員長になるだろう」としたうえで、「わが党と保守支持層も再結集させなければならない」と述べた。「国民の力」は前回の大統領選挙を尹大統領を迎え入れて進めたのに続き、来年の総選挙もハン前長官を迎え入れて進めることになった。
党内では、尹大統領が総選挙を前に党を掌握したと解釈されている。ある慶尚道選出の有力議員は「尹大統領の“意中”は、自身が党を掌握して選挙を行うという意味ではないか。支持率が低い状況でどのようにするのか分からない」と述べた。嶺南大学のチョン・ビョンギ教授は「民意とは関係なく党まで掌握しようとすることと同じだ」とし、「ハン前長官にしたのは、党に人がいないからではなく、『尹錫悦の人』がいないとみなしたもの」だと述べた。
しかし、これは、尹錫悦大統領に苦言を呈することができる党と政府の関係の水平化という「刷新」からはかけ離れているという意見が出ている。ある首都圏選出の議員は「国民がみれば、検察共和国という意見が出てくるのではないか。それをどのように説得できるのか心配」だと述べた。ただし、別の首都圏選出の議員は「ハン前長官の目標も総選挙勝利なのだから、党と政府の関係で主導的な声を出すと期待する」と述べた。
ハン前長官はこの日、党と政府の関係についての質問に「大統領も与党も政府もすべて、憲法と法律の範囲内で国民のために仕事をして協力しなければならない機関」だと述べた。ハン前長官は19日には、「キム・ゴンヒ女史特別法」を「悪法」と言及したことがある。ある慶尚道選出の初当選議員は「党と政府の関係で言うことができず、引きずられていく姿をみせれば、ハン前長官も滅びて党も滅びることになる」と述べた。ホン・ジュンピョ大邱（テグ）市長は前日、フェイスブックに、今後は党務については言及しないとしたうえで「ハン・ドンフン体制は（尹大統領）直轄体制であるため」だと書いた。
党内外では、ハン前長官が尹大統領の低い支持率を克服する可能性について懸念する声が少なくない。尹大統領の支持率は30％強だ。ハン前長官は保守と進歩で好悪がはっきり分かれる。
イ・ジュンソク元代表はこの日、CBSラジオのインタビューで「（ハン前長官は）人気がない大統領が立てた非常対策委員長」だとしたうえで、「チーム元均（ウォン・ギュン、壬辰倭乱で李舜臣と対立して戦死した将軍）」から出た非常対策委員長が、どのようにして李舜臣の12隻を持ってくるのか」と述べた。
政治経験のないハン前長官が、議員の政治生命がかかる公認候補選出の過程を円滑にやり遂げるのかどうかについても関心が持たれている。非常対策委員長は、非常対策委員会の構成とともに、総選挙の選挙対策委員長と公認管理委員長を任命する強大な権限を持つ。特に、ハン前長官が革新を前面に出して慶尚道選出の有力議員を中心に総入れ替えに乗りだし、その選挙区に尹大統領に近い検察出身者や大統領室参謀出身者を公認する場合、反発が強まるとみられる。
キム・ギヒョン前代表の失脚を目撃した慶尚道選出の議員の危機感はかなり強い。ハン・ヨンナム議員は「ハン前長官は借りのない人だ。（人員の）総入れ替えを負担なく行うだろう」と述べた。
訳M.S
