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南山「慰安婦記憶の場」撤去決定に「歴史性無視」と反発=韓国

登録:2023-09-02 08:36 修正:2023-09-02 10:21
ソウル市、強制わいせつで有罪のイム・オクサン氏が設置参加したことを理由に「記憶の場」撤去 
推進委員会「市民2万人の寄付による集団創作物」
ソウル中区南山に造成された「記憶の場」公園内の造形物「大地の目」(左)と「世界のへそ」=ソウル市のウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ソウル市は4日から、日本軍「慰安婦」を追悼するソウル中区南山(チュング・ナムサン)にある「記憶の場」の造形物の撤去作業に着手する。造形物の設置に、最近強制わいせつで有罪判決を受けた美術作家のイム・オクサン氏が参加しているという理由からだ。だが、「記憶の場」にある造形物はイム氏個人の作品ではなく、国民2万人あまりの募金によって作られた「集団創作物」であるだけに、性急な撤去措置は適切でないとする反発も出ている。

 「記憶の場」造成募金に参加した市民100人は1日、立場表明文を出し、「ソウル市は『記憶の場』の場所性と歴史性、市民参加の価値を無視したまま、性急な決定を下してはならない」として、撤去決定の再考を要求した。これに先立ち、ソウル市は7月28日、市立施設で設置・管理中のイム氏の作品を一審判決が出た後に撤去すると明らかにしている。ソウル中央地裁は8月17日、強制わいせつの容疑で起訴されたイム氏に懲役6カ月、執行猶予2年の判決を下した。

 ソウル市立施設に設置されたイム氏の作品は、中区南山の「記憶の場」▽市庁西小門(ソソムン)庁舎前の「ソウルを描く」▽麻浦区(マポグ)ハヌル公園の「空を入れる器」 ▽城東区(ソンドング)「ソウルの森」の「バリアフリーの遊び場」 ▽鍾路区(チョンノグ)光化門(クァンファムン)駅内の「光化門の歴史」の5つ。このうち、「光化門の歴史」「ソウルを描く」「空を入れる器」はすでに撤去が完了した。市は今月6日までに残りの2つの作品の撤去作業を完了する計画だ。

 議論になっているのは、南山の「記憶の場」にある作品だ。イム氏個人の創作物というよりは、集団の意志を集めて作った創作物であるという性格が濃いためだ。「記憶の場」は、ソウル市が2016年に日本軍「慰安婦」を記憶し追悼しようという趣旨で作った空間。女性運動団体らと市民社会が参加した「設立推進委員会」が作られ、市民からの募金も行われた。当時、設立募金に参加した人たちは、「イム・オクサン氏の事件に悲痛な心情を禁じえない」としながらも、「イム氏が設計を担当したとはいえ、数多くの人たちの意見を集めた集団創作物であるだけに、撤去を再考すべきだ」とする立場だ。

 実際、そこに設置された「世界のへそ」には、フェミニズム作家のユン・ソンナム氏の絵が彫られている。「大地の目」には、慰安婦被害女性のキム・ボクトンさんの要請で、「慰安婦証言録」から抜粋した被害女性たちの証言と名簿、慰安婦被害女性のキム・スンドクさんの作品「連れ去られる少女」が彫られている。2016年の開幕式の際には、日本軍「慰安婦」被害女性が直接来て見学したりもした。

 これらの人たちは「イム氏の過ちのために、慰安婦被害女性の絵と名前、『忘れないでほしい』という痛ましい証言まで、すべてぶち壊さなければならないのか」と問い、「歴史は守り、個人の過ちは別に問い詰めたい。対策なしに撤去するのであれば、必ず2万人ほどの同意を得なければならない」と述べた。また、イム氏が「記憶の場」から自分の名前を消してほしいとソウル市に要請したことから、作品はそのまま置いておき、イム氏の名前だけを消す方式もあわせて検討すべきだというのが人々の主張だ。

 「記憶の場」設立推進委員会のチェ・ヨンヒ委員長は「ソウル市は、推進委員会や募金参加者などの関係者の意見を『十分に』聴取する手続きを進めると報道資料にも明記したにもかかわらず、協議なしに急ぐかのように撤去手続きを進めた」と批判した。推進委員会は前日(8月31日)、ソウル行政裁判所に「工作物撤去禁止」の仮処分を申し立てたが、裁判所はこれを却下した。

 ソウル市は、他の作品との公平性を合わせるためにも、撤去は避けられないとする立場を貫いている。ソウル市関係者は「該当の空間は、引き続き日本軍『慰安婦』を追悼する場として残る。(代わりに)内部を再造成する」としたうえで、「推進委員会がこの空間をどのように作るかについて提案してくれれば、積極的に受け入れる」と明らかにした。

パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/1106753.html韓国語原文入力:2023-09-01 21:29
訳M.S

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