ユーチューブにアップロードされた「福島第一原発の汚染水を放出しても韓国に危険はない」という趣旨の韓国政府の広報動画は、大統領室が制作を直接主導していたことが確認された。大統領室が先頭に立って日本政府の汚染水放出を擁護しているとの批判の声があがっている。
21日のハンギョレの取材の結果、国務調整室が最近、共に民主党のウィ・ソンゴン議員室に「国内最高の専門家たちが語る福島汚染水の真実」(4分25秒)と題する動画の制作費3800万ウォン(約415万円)は大統領室の予算として執行されたと報告していたことが分かった。最近までは文化体育観光部が政府の「水産物の安全管理」政策の宣伝の観点から10億ウォンの予算を投入した動画であると認識されていたが、実際には大統領室が直に制作し、文体部は動画のアップロードに関与していただけだったことが明らかになったわけだ。
国務調整室の関係者はこの報告で「大統領室が(広報動画制作のために)大統領室の広報予算を直に執行し、(業者選定も)大統領室が行った」と明かした。福島第一原発の汚染水に関する汎政府タスクフォース(TF)を運営している国務調整室はこの過程で、動画に出演している専門家たちの説明が正しいのかなどの事実関係を原子力安全委員会などを通じて把握し、大統領室に伝えたという。
国務調整室は、動画制作業者がどこなのかについては「政府の契約に関する細部事項などは、法にもとづく契約当事者(業者および個人)情報の保護などの理由により、詳細な提出はできない」として答えていない。
先月7日に大韓民国政府の公式ユーチューブチャンネルにアップされたこの動画は「福島第一原発の汚染水は危険ではない」との内容を含んでいる。この広報動画は「コーヒーを1杯飲んでも、牛乳を1杯飲んでも、卵を1つ食べても、すべて放射性物質が含まれているため、(人体は)被ばくする。(汚染水が放出されれば)健康に問題が生じるという心配はまったくしなくてもよい」と述べており、韓国の水産物は安全だと強調する内容が含まれているため、物議を醸した。
大統領室が日本政府による原発の汚染水放出を擁護するような動画の制作に直接関与したことが明らかになったことで、波紋はさらに広がるとみられる。ウィ議員は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が福島第一原発の汚染水に対する国民の懸念を怪談とみなしてまで汚染水の安全性を宣伝しているのは、日本との関係などについての外交的・政務的判断が介入したからだと考えられる」とし、「安全性を徹底的に検証して問うどころか、汚染水の海洋投機を事実上容認し、先頭に立って宣伝する姿勢から考えると、尹大統領には果たして国民の命と安全を守る意志があるのか疑わしい」と批判した。これに対して大統領室の関係者は「国民の安全のための宣伝に政府および大統領室の予算を執行することは、予算運用の趣旨に合致する」と述べている。