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韓国政府の不参加で中途半端な6月民主抗争記念式…「民主化の歴史をおとしめる」

登録:2023-06-12 04:03 修正:2023-06-12 08:22
記念事業会が後援した団体が「政権退陣」広告出したことを理由に、政府不参加 
後援撤回でも方針変えず…国の記念日制定後で初
10日午前、ソウル中区の明洞聖堂で開催された第36周年6・10民主抗争記念式で、参加者たちが「広野で」を歌っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 6月民主抗争が2007年に国の記念日(6月10日)に指定されて以来初めて、「6・10民主抗争記念式」が政府の参加なしに行われた。記念式を主催してきた行政安全部は、主管機関である民主化運動記念事業会が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領退陣のスローガンを掲げた行事を後援したことを問題視し、事業会が後援を撤回したにもかかわらず記念式への不参加を撤回しなかったことから、尹錫悦政権は「自由民主主義」に対する後進的な認識をあらわにしているとの激しい批判が起きている。6月民主抗争は軍部独裁に抗して1987年6月に全国で起きた民主化運動で、大統領直選制改憲を引き出した大韓民国民主主義の歴史における象徴的な事件だ。

 今年で36周年を迎えた「6・10民主抗争記念式」は10日、当時独裁打倒座り込み闘争が起きた象徴的な場所であるソウルの明洞聖堂で開催された。この行事は2007年以降、行政安全部が主催し、行安部傘下の公共機関である民主化運動記念事業会が主管してきた。当初は、今年もハン・チャンソプ行安部長官職務代行が出席し、記念演説を行う予定だった。しかし行安部は行事前日の9日に突如として「民主化運動記念事業会が後援した進歩団体の行事の広告に『尹錫悦政権退陣』との文言があった」として不参加を通知してきた。広告の文言が分かった後の8日、民主化運動記念事業会は説明資料で「当該団体が協議なしに大統領退陣要求などの政治的内容を入れた。(当該団体の2023年民主化運動精神継承協力事業)公募選定取り消しを通知し、支援金も執行しない」として収拾に乗り出したが、行安部が立場を曲げなかったことで記念式は「主催者のいない中途半端なもの」となった。

 政府の記念式不参加は、保守政権である李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権でもなかった。そのうえ、発足以降数回にわたって「自由民主主義」の価値を強調してきた尹錫悦政権が、実務団体の公募事業が気に入らないとの理由で民主化運動の最も象徴的な記念式に参加しなかったことで、これまでの発言の真意さえ疑われると評する声まであがっている。自由言論実践財団のイ・ブヨン名誉理事長は「韓国社会の民主化運動の成就を完全に無視したことは、尹大統領が普段から叫んでいる『自由』という価値がどれほど選択的かをよく示している」と批判した。また「尹大統領は保守政権の大統領としては初めて5・18光州民主化運動記念式に2年連続で参加したが、その真意すら疑われる」とし「光州(クァンジュ)精神を改めて胸に刻もうとしたのではなく、単に票を意識した政策の一環だったようだ」と語った。韓国外国語大学のパン・ビョンニュル名誉教授(史学科)も、「政権批判を口実として法律で定められた記念日の行事に出席しないというのは、政府自らが民主政権ではないと認めたもの」だとし、「国民の大半が共有する民主的価値を無視した行動」だと指摘した。

 民主化運動記念事業会側の他の団体からの批判も激しい。5・18民主化運動ソウル記念事業会のチャン・シンファン会長は「国の記念日に政府がこのように幼稚で偏狭な態度を示したことに少なからず当惑した」とし、「民主化運動記念事業会に対する追加的な特別監査も予告しているが、腹いせにしか見えない」と述べた。イ・ハンニョル記念事業会のハン・ドンゴン理事長は「政府支援金を受け取って政権退陣の声をあげたのは適切なスローガンではなかったかもしれないが、なぜそのような声があがっているのかを振り返ってみるのが民主主義国家のなすべきこと」だと述べた。パク・ジョンチョル記念事業会のパク・レグン理事も「国の記念日への出席は政府の任務だ。不参加の理由も納得できないが、後援が問題だったとしても、それは記念式不参加とは別であるべきだ」と指摘した。

 建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ教授は「6月民主抗争は、現行憲法体制で言うところの民主秩序の基本的な価値をなす歴史的な事件」だとし「現行憲法体制を基盤として発足した現政権ならば、当然6月民主抗争の憲法的な意味を尊重し、改めて胸に刻むべき。記念式への不参加は公式に6月民主抗争の憲法的意味をおとしめるもの」だと批判した。

 全国民族民主遺族協議会のチャン・ドゥヨン事務局長は「政権退陣スローガンを小さく広告に掲げたと言って激怒し、特別監査を予告して記念式に参加しなかったのは『政府を批判すればただではおかない』と言っているのと変わらない」とし「そのような時間があるなら、政府は国民生活のための政治をしてほしい」と語った。

クァク・チンサン、パク・チヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1095456.html韓国語原文入力:2023-06-11 19:13
訳D.K

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