31日から開かれる韓国主催の多国間海洋封鎖訓練「アジア太平洋循環訓練」に参加する日本の海上自衛隊の艦艇が、「自衛艦旗」を掲げて29日に釜山港に入港しました。
これに先立ち、自衛艦旗をめぐり旭日旗についても議論が再燃し、国防部は「国際的な慣例」に従うだけだとしたうえで、「自衛艦旗と旭日旗は多少の違いがある」と明言しました。忘れた頃に再燃する「旭日旗論争」、これをどのように見るべきでしょうか。
(1)「自衛艦旗」と「旭日旗」は違う?
25日、国防部のチョン・ハギュ報道官は今回の議論について「自衛艦旗と旭日旗は多少の違いがある」と述べました。
国防部のこうした説明は初めてではありません。昨年11月、日本で開かれた国際観艦式に韓国海軍が参加し、旭日旗論争が起きたときも、韓国軍は「日本の自衛艦旗は旭日旗と形態が少し違う。形態が完全には一致しないので、我々は自衛艦旗と考える」と述べました。旭日旗は赤い円形の「日の丸」が中央に位置するのに対し、自衛艦旗では日の丸が左に寄っているから異なるということです。
ところが日本はそのようには考えていません。日本の外務省が2019年に掲示した旭日旗の広報資料によると、自衛艦旗を旭日旗の一種として紹介しています。外務省は「海上自衛隊の自衛艦旗と陸上自衛隊の自衛隊旗は、1954年に制定された自衛隊法施行令によって、旭日模様を使用している」とし、広報資料には、1998年に自衛艦旗を掲げて釜山港に入港した自衛隊艦艇の写真を掲載しました。
日本は「自衛艦旗は旭日旗であり、旭日旗に問題はない」という立場であるのに対し、韓国軍は「自衛艦旗は旭日旗ではない」と主張している状況です。
(2)「旭日旗掲揚」は国際法では問題ない?
なぜ韓国軍は「自衛艦旗は旭日旗ではない」と主張してまで釈明するのでしょうか。韓国の国民感情としては容認しがたいけれど「旭日旗掲揚」を防ぐ国際法的な根拠がないという点のためでしょう。
国際慣例上、海軍艦艇が海を航海するときは、船尾に自国の国旗を揚げます。そして、艦艇が外国の港に寄港するときは、海軍旗を追加で掲揚することになっています。日本の立場としては、海上自衛隊の旗である自衛艦旗を艦艇に掲揚するのです。
しかも、自衛隊の艦艇が釜山港に入港しても、自衛隊の艦艇は事実上「日本の領土」です。通常、国際法的に海軍艦艇は治外法権の地域と認定されます。海軍艦艇は外国領海に入っても、その国の国内法の適用を受けることはなく、艦艇が所属した国の法律が通用されるという意味です。日本の国内法では、自衛艦旗の掲揚を義務化しています。
これに先立ち、1998年の金大中(キム・デジュン)政権のときと、2008年の李明博(イ・ミョンバク)政府のときも、海上自衛隊の艦艇は韓国海軍が主催した国際観艦式に旭日旗を掲揚して参加しました。しかし、2010年以降、サッカーや野球などの各種スポーツイベントで旭日旗をめぐり両国民の感情が悪化していきました。韓日関係が悪化するほど、旭日旗をめぐる論争が増幅されたりもしました。
文在寅(ムン・ジェイン)政権のときの2018年11月、韓国軍は済州で開かれた国際観艦式に海上自衛隊を招待し、旭日旗の掲揚自制を要求したことがありました。当時日本は「非常識な要求」だとして拒否し、激しく抗議しましたが、最終的には済州国際観艦式の出席要請を拒否しました。
(3)旭日旗は「軍国主義の象徴」ではない?
自衛隊の艦艇が「自衛艦旗」を掲げて釜山港に入港したとしても論争の火種は残り、いつでも再燃する可能性があります。日本の旭日旗は、ナチスドイツが使った「ハーケンクロイツ」と同じとみなす人が多いためです。しかし、日本は「旭日旗はハーケンクロイツとは違う」と主張し続けています。ハーケンクロイツはナチスが作った象徴であるのに対し、旭日旗は日本の伝統模様であり、数百年前から使われ続けていたという主張です。
日本の外務省は、現在に至るまで、慶事と繁栄の象徴として日常で使われる旭日旗を広報しています。当然この広報には、日本がこの旗を前面に掲げ、1905年には日露戦争に勝って朝鮮半島の支配権を確保し、1931年には満州事変、1937年には日中戦争、1941年には太平洋戦争を起こしたという事実は抜けています。
日本が過去の帝国主義時代の日本軍旗をそのまま自衛艦旗として使用し、日常で広く使いながらも特別の問題意識を感じないでいるという事実自体が、旭日旗論争の本質だという指摘もあります。
大型スポーツイベントが開かれるたびに日本のファンが「旭日旗を掲げて応援」するのが代表的な事例です。2017年には、FIFAのアジア太平洋支部であるアジアサッカー連盟(AFC)は、旭日旗を掲げた日本の観衆に対する責任を日本に求め、「差別的な象徴」として罰金を科したことがあります。
過去の日本帝国主義の被害者が今なおアジアに広範囲に存在する現実のもとでは、旭日旗は単純に「日本の文化」としては受け入れがたい状況です。
旭日旗を「ハーケンクロイツ」より「アメリカ南部連合旗」に例えるほうがより適切だとする見方もあります。法的に掲揚が禁止されたことはなくても、「人種差別」の象徴とみられているためでしょう。南部連合旗は、米国の南北戦争当時、奴隷制に賛成した南軍が「分離独立」を要求して用いた戦闘旗です。
2020年の東京五輪を控え、「旭日旗応援」をめぐる議論を扱ったBBCは、上智大学国際教養学部の中野晃一教授の発言を引用して、「ハーケンクロイツよりも適切な比較対象は、アメリカ南部連合旗」だとしたうえで、「この旗は禁止されておらず、今なお南部の州の全域で掲げられているが、人種差別と優越感の象徴という批判を受けている」と指摘したことがあります。
現在でも米国では南部連合旗の使用は違法でなく、今なお南部の地域のあちこちでよくみかけますが、この旗は「人種差別」と切り離しては説明できません。南部連合旗自体が「奴隷制賛成」という人種差別を内包しているうえ、今でも白人優越主義の組織である「KKK(クー・クラックス・クラン)」が好んで使うためです。
米国社会は数十年間議論を続け、人種差別の象徴である南部連合旗を消しつつあります。2020年にはミシシッピ州が州旗を変え、これにより、米国の公式の州旗としては南部連合旗は完全に消えました。