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[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦10]不信の日本、韓国海軍の一挙一動を低空監視

登録:2020-11-21 11:31 修正:2021-01-28 08:49
多くの自衛隊関係者は、(韓国政府が)経済制裁を受けている北朝鮮漁船を、韓国海軍まで出動させて国全体で助けていると疑った。そのような光景がばれたことに腹を立て、レーダーを放ったというのだ。
日本の海上自衛隊の哨戒機(P-3)が韓国海軍の駆逐艦の大祚栄艦付近に超低高度の威嚇飛行を行った写真を、国防部が2019年1月24日に公開した。日本の哨戒機が高度約60メートルで飛行しながら大祚栄艦の右舷を通過している=国防省提供//ハンギョレ新聞社
日本の哨戒機が大祚栄艦から防衛距離140度540メートル離れたところを低高度飛行している=国防省提供//ハンギョレ新聞社

 2018年12月21日夕方7時。2カ月前に韓国最高裁判所(大法院)が出した強制動員被害賠償判決で、韓日関係が破局に突き進んでいた頃だった。薄暗くなった東京市ヶ谷の防衛省庁舎玄関で、岩屋毅防衛相(当時)が落ち着かない表情で記者団の前に姿を現した。この会見は、同日行われた岩屋防衛相の二度目の記者会見だった。午前10時半に開かれた最初の会見で2019年度防衛予算に関する15分ほどの記者団の質問に答えてから1日もたたず再び緊急記者会見を要望したのだ。

 岩屋防衛相は「20日午後3時ごろ、(本州中部の)能登半島海域で警戒監視中だった自衛隊P-1哨戒機に、韓国軍の駆逐艦が火器管制レーダー(韓国では射撃統制レーダーと呼ぶ)を照射した。韓国側の意図は明確に分からないが、レーダーを照射するのは火器使用の前に行われる行為だ。これは予測できない事態を招きかねない非常に危険な行為だ」と述べた。岩谷防衛相の突然の会見に、韓国国防部は当日夜、出入記者らにショートメールを送り「軍は正常な作戦活動中だった。作戦活動の間にレーダーを運用したが、日本の海上哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と明らかにした。その後、韓日国防当局間の信頼関係を破綻に追い込む「海上自衛隊哨戒機威嚇飛行および韓国海軍レーダー照準」問題が始まった。

 この事態についての韓国・日本の軍当局の発表とマスコミ報道などを集めてみると、神奈川県厚木に駐留中の海上自衛隊第4航空群所属の海上哨戒機P-1は20日、東海(トンヘ)で定期哨戒活動を行っていた。この過程でP-1のアクティブ・フェーズドアレイレーダーが、韓日の排他的経済水域(EEZ)が重なる独島北東方100キロの海上で、複数の未確認物体を捉えている。

 現場に到着した日本の哨戒機は、レーダーに捉えられた物体が韓国海軍の広開土大王艦(基準排水量3200トン)と海洋警察庁所属の巡視船サムボン号(5000トン)であることを把握した。韓国の駆逐艦はここで一体何をしていたのだろうか。日本の哨戒機は、広開土大王艦の高度150メートル、距離500メートル地点まで低空飛行し、様々な角度から現場の様子を撮影した。撮影を終えて遠ざかった頃、隊員たちは機器の警報音を通じて機体が広開土大王艦の照射したと推定されるレーダーの電波に当たったことを直感した。事実ならば、韓国が友好国である日本に対し、してはならない「敵対行為」を行なったことになる。

 その時刻、韓国海軍は、北朝鮮船舶が漂流しているという情報にもとづき、当該海域に出動して捜索作業を行なっていた。捜索は10時間も続く難作業だった。のちに現場の映像を確認した香田洋二元自衛艦隊司令官は朝日新聞に「軍艦が任務をこなしているなか、日本の自衛隊機が接近してきたことに指揮官以下、乗組員の感情が高ぶった」という感想を残した。

 日本の最初の抗議は事件翌日の21日午後、在韓日本大使館を通じて行われた。韓国外交部は「国防部と協議する。抗議事実を公表しないでほしい」という立場であり、国防部は「北朝鮮船舶を捜索中だった。捜索用として照射したが、狙いを定めたわけではない」と釈明した。しかし、日本は翌朝まで待たずに、当日夕方に関連事実をメディアに公開した。

 その後、韓日軍当局間で凄絶な「真実攻防」が始まる。日本の抗議直後、韓国軍が見せた反応は、捜索過程で「すべてのレーダー」を稼動したというものだった。ハンギョレは21日夜の速報記事で、「当時、波が高く気象条件が悪かったため、駆逐艦のすべてのレーダーを総動員した。この過程で火器管制レーダー(STIR-180)に装着した探索レーダー(MW-08)が360度回転しながら照射した信号が探知されたものと聞いている」という軍関係者の反応を伝えた。翌日の22日、聯合ニュースも「遭難した北朝鮮船舶を迅速に見つけるため、火器管制レーダー(射撃統制レーダー)を含むすべてのレーダーを稼動した」という表現を使っている。

 これに対して日本防衛省は22日、「火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではない」と反論した。韓国軍が放ったのは探索レーダーではなく火器管制レーダーであることを再度明らかにしたのだ。すると韓国国防部は24日の定例記者会見で、「日本側が脅威を感じるようないかなる措置も取らなかった」と強調し、「火器管制レーダーを放ったことはない」「一切の電波放射はなかった」と主張した。事件直後の「すべてのレーダーを稼働させた」という趣旨の発言を撤回し、今回の事態の本質は「日本の哨戒機の威嚇飛行」という逆攻勢に出た。すると防衛省は25日、再反論する資料を通じて、日本の哨戒機が受けた「電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果」、広開土大王艦から火器管制レーダーの電波を「一定時間継続して複数回照射されたことを確認した」と対抗した。結局、27日にキム・ジョンユ合同参謀本部作戦部長と池松英浩統合幕僚監部首席参事官がテレビ会議を開き、事態収拾を図るに至る。

 この頃、韓日は10月の済州島での観艦式に参加予定だった日本艦艇の「旭日旗」掲揚問題と、12月初めの韓国海軍の独島海上訓練問題によって、この上なくこじれていた状況だった。相互信頼が地に落ちた状況で真実が隠れた瞬間に、どちらかが深刻な被害を受けざるを得ない「ギロチンマッチ」(徹底した真相調査)が行われるわけがなかった。日本の言い分通りなら、広開土大王艦では友好国の哨戒機を火器管制レーダーで狙った(ロックオン)とみられる行為を3回も繰り返す容認できない「軍紀を乱す」行為が起こったことになる。逆に、韓国の主張が正しければ、日本が誇る最先端P-1哨戒機が深刻な機器の誤作動を起こしたと結論を出すしかない。「人のせいか、機械のせいか」というこの質問については、信頼できる消息筋からの話があるが、ここで詳しい言及は避けたい。結局、妥協するしかなかった。

 しかし、安倍晋三首相(当時)の考えは違った。29日付の産経新聞によると、安倍首相は27日、岩屋防衛相を首相官邸に呼び、日本の哨戒機が撮影した現場の映像を公開するよう指示した。岩屋防衛相は「韓国との関係改善を重視する観点から難色」を示したが、安倍首相が「自衛隊員の命にかかわる問題を曖昧に見過ごすことはできない」として公開を決断した。こうして公開された防衛省の13分7秒の映像を見ると、6分4秒地点から「(広開土大王艦が)FC(射撃統制用)電波を撃っている」「避けた方がいい」「ものすごい音(警告音)だ」(電波の強度が強いという意味)と反応する隊員の音声が確認できる。同時に、韓国の軍艦が砲を狙うなど「明白な敵意」を示してはいなかった事実も把握できる。

 安倍首相が事態を拡大すると、大統領府も強硬対応に出た。年明けの2019年1月3日に開かれた国家安全保障会議(NSC)常任委員会は「日本の哨戒機が低高度で近接飛行した事件の深刻性を議論し、正確な事実関係に基づいて必要な措置を取っていくことを決定」するに至る。その翌日、国防部は4分26秒の「対抗動画」を公開し、「日本の哨戒機はなぜ人道主義的救助作戦現場で低空威嚇飛行をしたのか」と問いただした。

 国防部の問いのとおり、なぜなのだろうか。日本の作家の麻生幾氏は2019年3月の月刊『文藝春秋』(文芸春秋)への寄稿で、日本の自衛隊関係者らによる推論を載せている。このころ、海上自衛隊は北朝鮮が国連安保理の制裁から逃れるために行う「瀬取り」(公海上で船から別の船に物を移す行為)方式の密輸行為の取り締まりに血眼になっていた。南北が露骨に接近する中、国連安保理決議の実効性を担保するには、日本が監視を強化するほかなかった。防衛省ホームページでは2018年1月20日から2020年1月12日までに海上自衛隊の護衛艦・哨戒機が取り締まった16件の瀬取りの現場写真を確認できる。麻生氏は、韓国海軍が本当に人道主義的救助活動を行っていたのなら、日本の海上保安庁に共同捜索を要請しただろうと主張し、「多くの自衛隊の関係者は、(韓国政府が)経済制裁を受けている北朝鮮漁船を、韓国海軍まで出動させて国全体で助けている」と疑っていたと伝えた。そのような光景がばれたことに腹を立ててレーダーを放ったというのだ。

 過去の事件に対するわだかまりが残っていた2019年1月23日、チョン・ギョンドゥ国防部長官は午後2時3分に始まった新年懇談会を40分で緊急中断した。離於島(イオド)付近の海上で、自衛隊機が韓国海軍の軍艦に再び低空威嚇飛行を試みたからだ。激昂した国防部は、一時「自衛権的措置」にまで言及し、それまでに確認されていた3件の低空近接飛行事態を公開した。防衛省は21日、広開土大王艦1隻に対して3回も低空飛行を試みたことも認めた。日本の自衛隊は、相手が嫌だというのになぜこのような行動を繰り返したのだろうか。深い不信のためだった。韓国をこれ以上信じられないため、怪しい動きが捉えられるたびに低空飛行で精密監視を試みていたのだった。(続)

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|統一外交チーム長。大学で政治外交学を専攻。駆け出し記者時代から強制動員の被害問題と韓日関係に関心を持ち、多くの記事を書いてきた。2013年秋から2017年春までハンギョレ東京特派員を務め、安倍政権が推進してきた様々な政策を間近で探った。韓国語著書に『私は朝鮮人カミカゼだ』、『安倍とは何者か』、『26日間の光復』など、訳書に『真実: 私は「捏造記者」ではない」(植村隆著)、『安倍三代』(青木理著)がある。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/970328.html韓国語原文入力:2020-11-1802:09
訳C.M

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