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「自由」叫びつつ集会の自由たたく尹大統領、「朴正熙集会抑制法」へ回帰?

登録:2023-05-30 02:49 修正:2023-05-30 07:33
尹錫悦大統領が27日、ソウル鍾路区の曹渓寺で開催された仏紀2567年灌仏会の奉祝法要式で祝辞を述べている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足以降、憲法に保障されている「集会の自由」が脅かされている。政府与党が「集会および示威に関する法律(集示法)」の改悪を推進しているためだ。集示法そのものが「朴正煕(パク・チョンヒ)軍部」時代に集会を抑制することを目的として制定された法律であるため、正当性が疑われているうえ、最近では「集会資格制」の導入が狙われているため「反憲法的」だとの批判にさらされている。

■尹大統領の一言で…変化した集会対応

 「いかなる違法行為も放置・無視せず、容認しない」

 尹錫悦大統領の23日の国務会議での発言以降、警察の集会・デモ対応が変化した。民主労総全国建設労働組合(建設労組)の1泊2日ソウル都心上京集会を契機として、政府与党は違法集会の前歴がある団体の集会を制限・禁止するとの方針を明らかにした。建設労組の集会に「暴力行使や器物破損などの法違反事項はなかった」としていた警察も態度を変え、建設労組の1泊2日集会は違法集会だとして執行部に対する捜査に乗り出した。

 集会への対応も変わった。「違法集会の素地がある」という恣意的判断にもとづき、25日のソウル瑞草区(ソチョグ)の最高裁前での非正規労働者の闘争文化祭を完全封鎖し、これを防ごうとした参加者たちを公務執行妨害容疑で逮捕した。暴力性のない集会を強制解散させるのは不当だとした司法判断は気にも留めず、警察はこの日午後9時ごろから労働者を強制解散させた。

 さらに国民の力のキム・ギヒョン代表は28日、自身のSNSに書き込み、国民を「強と弱」に分けて分裂させはじめた。キム代表は民主労総が31日に大規模な都心集会を予告したことについて「巨大貴族労組はもはや韓国社会の弱者ではなく『スーパー強者』だ。集会とデモの自由を誤用・乱用し、善良な他人の自由を侵害しても許される特権は誰にも与えられていない」とし、「本当の弱者はスーパー強者のために巨大な被害を受けながらも言い出せずに悩んでいる小商工人たちと庶民たちだ。(集会・デモ)改革には抵抗が伴うものだが、それでも改革は中断できない」と述べた。

■国家再建最高会議で制定された集示法…再び退行か

 申告制である集会・デモを「許可制」のように扱う政府に対して、「権威主義政権への退行」だとする批判の声があがっている。そもそも集示法は誕生そのものが集会の自由の保障ではなく、むしろその抑制・統制のために作られたものだ。その後は国会での改正によって民主的正当性を回復してきたが、恣意的な解釈によって再び憲法上の基本権である集会・結社の自由を制約しようとしているというわけだ。

 実際に集示法の制定過程を見れば、最初の集示法を制定したのは朴正煕軍部の作った最高統治機関である国家再建最高会議で、1962年12月のことだ。公の制定目的は「国民の自由と権利の本質的な内容を侵害しない範囲での最小限の制限」だ。

 しかし学界は「憲法上の基本権である集会の自由を具体的に規定するというより、無秩序な状況の中で実効的に集会を抑制する」ことを目的として制定されたと分析する。当時の集示法には「裁判に影響を及ぼす恐れがあるか、民主的基本秩序に違反する集会の絶対禁止」条項もあった。国会議事堂や裁判所、大統領官邸に加え、駅周辺200メートル以内の集会も禁止した。

 学界の一部では、国家再建最高会議の性格をあげて集示法そのものの正当性を否定してもいる。国家再建最高会議は「非常立法機関」に過ぎないからだ。国家再建最高会議は国会を解散した後、独自の立法権を行使して集示法などを制定した。釜山大学法学専門大学院のキム・ヘウォン教授は「(集示法は)制定後、国会で数回改正されたが、そもそも国会とはいえないところで法律という名前がつけられて誕生しているため、憲法第40条(立法権は国会に属する)に違反しているのではないかという疑いがある。国会で現行の集示法を廃止し、新たに制定することが望ましい」と述べた。

■憲法裁「集会禁止は最終的手段」

 集示法の正当性とは別に、政府与党の集示法改正の主張の内容が反憲法的だとの指摘も相次いでいる。特に「違法集会の前歴がある団体の集会は不許可」という内容は、申告制である集会を「許可」とすることを禁止した憲法に真っ向から反する。慶煕大学法学専門大学院のチョン・テホ教授は「そもそも違法集会に対する責任は団体ではなく個人が負うもの。違法集会の前歴があるからといって集会を禁止するのは一種の許可制であり、『集会資格制』導入であるため、違憲の素地が非常に大きい」と指摘した。

 夜間集会の禁止に関して憲法裁判所は、2014年に憲法違反と判断している。2003年には「集会の自由は民主的共同体が機能するための不可欠な根本要素」であるため、「集会の禁止は、条件を付けて集会を許容する可能性がすべてなくなった後に初めて考慮しうる最終的手段」だと述べている。

チョン・グァンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1093657.html韓国語原文入力:2023-05-29 10:00
訳D.K

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