尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が韓米首脳会談(米国時間26日)を前に、「100年前のことで(日本に対して)『無条件にひざまずけ』と言うのは受け入れられない」と海外メディアとのインタビューで述べたことが波紋を広げている。歴史はないがしろにして韓日関係の改善を前面に掲げ、「未来」ばかりを強調する尹大統領の対日認識が改めてあらわになった、との批判の声があがっている。
尹大統領は2年前の大統領選への出馬宣言の際、「未来」を強調しつつも「歴史は歴史として真相を明確にしなければならない」と述べていた。これまでの尹大統領の「対日発言」を考えると、大統領の対日認識は表面的には180度変わってしまったようだ。
出馬当時は「歴史の真相を明確に」
歴史についての尹大統領の立場を初めて確認できたのは、2021年6月29日に梅軒尹奉吉(メホン・ユン・ボンギル)義士記念館で大統領選への挑戦を宣言した時だ。その場で尹大統領は「韓日関係改善の方法」を問われ、「韓日関係は未来に育つ世代のために実用的に協力すべき関係」と述べつつも、「歴史は歴史として、私たちの後の世代が歴史を記憶するために真相を明確にしなければならない」との前提を付けた。日本軍「慰安婦」問題、強制動員問題についても「文在寅(ムン・ジェイン)政権になって『めちゃめちゃになった』として解決の意志を示した。
「日本の謝罪を必ず引き出す」と言っていたのに
大統領候補を選ぶ党内予備選の候補として「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんを訪ね、「日本の謝罪を必ず引き出す」と約束してもいる。2021年9月11日に大邱中区(テグ・チュング)のヒウム日本軍慰安婦歴史館を訪ねた尹大統領は、慰安婦問題を必ず解決してほしいとイさんに言われ、「必ず謝罪を引き出す」と約束した。大統領選挙の公約集にも「正しい歴史認識」、「歴史・主権問題は堂々とした立場を堅持」などの表現が見られる。
光復節なのに…自由ばかりを33回叫ぶ
だが尹大統領の就任から100日がたっても、日本軍「慰安婦」問題の解決策は打ち出されなかった。尹大統領は昨年8月15日の第77周年光復節(クァンボクチョル)の祝辞で、自由民主主義、自由国家などを含めて「自由」に33回も言及した。しかし日本軍「慰安婦」、強制動員問題などの敏感な懸案への言及はなかった。
これに対しイさんは昨年8月15日の光復節に声明を発表し、その中で「光復節の祝辞では日本との関係改善についてばかり語り、解決されていない歴史問題と慰安婦問題については一言も話していないではないか」、「日本がいくら歴史を歪曲し、私たちの名誉を踏みにじっても、日本の機嫌を取ることの方が重要なのか」と批判した。
「過去の侵略者から協力パートナーへと変化した」
尹大統領の「対日認識」が本格的にあらわになったのは今年の3月1日だ。尹大統領はソウル中区の柳寛順(ユ・グァンスン)記念館で開催された第104周年三一節記念式で「3・1運動から1世紀が過ぎた今、日本は過去の軍国主義侵略者から、韓国と普遍的価値を共有し、安保と経済、グローバルアジェンダで協力する協力パートナーへと変化した」と述べた。強制動員の被害者に対する賠償問題などの敏感な懸案は直接言及しなかった。
今年の三一節記念演説でも歴史に関する要求や提案がなかったことから、イさんは同日に行われた水曜集会に参加した際に「尹大統領は『慰安婦』問題解決の約束を守ってほしい」と要求した。
「過去に足を引っ張られてはならない」
尹大統領の三一節記念式での発言の真の意味は、3月16日に東京で行われた韓日首脳会談で明らかになった。首脳会談を通じて、日本企業が強制動員被害者に支払うべき賠償金を国内の財団が肩代わりする尹錫悦政権の「第三者弁済案」が現実化したことに対し、「屈辱外交」との批判が相次いだ。
しかし尹大統領は3月21日の国務会議の冒頭発言で、韓日首脳会談について「過去は直視し記憶しなければならないが、過去に足を引っ張られてはならない。韓日関係も今や過去を乗り越えなければならない」と述べた。