裁判所が「龍山(ヨンサン)大統領室」前は集会禁止場所ではないとし、同所での集会を禁止した警察の処分の取り消しを命じる判決を下した。
集会および示威に関する法律(集示法)が100メートル以内の屋外集会を禁止している場所である「大統領官邸」に、大統領執務室は含まれないとの理由からだ。これまで集示法の条項を拡大解釈し、恣意的な集会禁止通告が日常的化していた警察の処分慣行にはブレーキがかかるとみられる。
ソウル行政裁判所行政13部(パク・ジョンデ裁判長)は12日、参与連帯がソウルの龍山警察署を相手取って起こした屋外集会禁止通告処分取り消し訴訟で、原告勝訴の判決を下した。裁判所は「昨年4月29日に龍山署が参与連帯に下した大統領執務室近くでの集会禁止処分は取り消されるべき」と宣告した。参与連帯は韓米首脳会談が予定されていた昨年5月21日に龍山の大統領室の近くで集会を行うために集会届を提出したが、警察から禁止を通告された。これに対し参与連帯は、警察の集会禁止通告の執行停止を申し立てるとともに、処分の取り消しを求める訴訟を起こした。
裁判所は「この事件の争点に関する様々な解釈を総合的に考慮した結果、『大統領執務室』は集示法11条3号の定める屋外集会と示威の禁止場所である『官邸』には含まれ得ないとの結論に至った」と判決の理由を明らかにした。大統領執務室は集会禁止場所ではないため集会は可能だと判断したのだ。
この事件の争点は、集示法が屋外集会と示威を禁止する場所であると規定する「大統領官邸」に龍山大統領室が含まれるかどうかだった。青瓦台(旧大統領府)敷地内には大統領の執務空間と生活空間である官邸が存在していたことから、この条項は通常「青瓦台の境界から100メートル以内の集会の禁止」と受け取られてきた。しかし、昨年5月に就任した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が大統領府に入居せず、大統領執務室と生活空間である官邸が離れたことから、集会の禁止された場所である「官邸」の意味について論争が起きたわけだ。
警察は「官邸は官庁と邸宅を両者とも含む概念」だとし「大統領執務室と邸宅が分離された状況では、両空間とも屋外集会が禁止されると解釈すべき」だと主張し、龍山の大統領室付近での集会を禁止する処分を日常的に下してきた。いっぽう参与連帯は「官邸に執務室も含まれると解釈することは法文の範囲を越える違法な解釈」だとし、「通常、官邸は居住空間だと考えるのが妥当であり、執務室前の集会は認められるべき」だと反論した。裁判所は参与連帯側の主張を妥当とした。
公益人権弁護士会「希望を作る法」のパク・ハンヒ弁護士は「仮処分段階でも同じ趣旨の判断が繰り返されてきたが、警察は本案の判断が出されるまで待つとして集会禁止通告処分を下し続けてきた。本案でも『官邸』の意味を明確に解釈した以上、もはや警察にこのような強引な主張をしてはならないと確実に釘を刺したとみられる」と語った。
一方、今回の事件で争点となった「大統領官邸100メートル以内の集会・示威の禁止」条項は先月、憲法裁判所で憲法不合致決定が下されてもいる。2018年12月にソウル中央地裁がこの条項について「具体的な危険状況が存在したり発生したりする可能性がない小規模、平和的な集会や示威の場合も、何の例外もなくこれを禁止している。いかなる合理的根拠や基準もなしに『100メートル以内』という制限を設けて集会やデモを絶対的に禁止している」として、違憲法律審判を請求したことにともなう決定だった。先月の憲法裁の決定により、集示法11条3号は2024年5月31日までに改正されなければ効力を失うことになる。