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貨物連帯の要請に応じたILO、「直ちに介入」

登録:2022-12-05 05:59 修正:2022-12-09 10:56
ILO、韓国政府の労働基本権侵害疑惑に「介入」 
「韓国政府に結社の自由に関する従来の立場を想起させた」 
民主労総「業務開始命令などに対する懸念表明と解釈すべき」
1日午後、仁川市中区の三票セメント仁川事業所前で、貨物連帯の組合員がプラカードを掲げて警察官と対峙している/聯合ニュース

 国際労働機構(ILO)は、民主労総全国公共運輸社会サービス労働組合・貨物連帯本部(貨物連帯)のストライキに対する韓国政府の労働基本権侵害疑惑に対して、直ちに介入に乗り出した。 今回の措置は、民主労総がILOのジルベール・ウングボ事務局長に「介入」(intervention)を要請してから5日後に行われた。貨物連帯のストライキに対して業務開始命令の発動など強硬対応中の韓国政府は、ILO基本条約批准の効力が発効してわずか8カ月で国際社会から条約違反に対する懸念を表明されることになった。

 本紙の取材によると、ILOは2日、民主労総のヤン・ギョンス委員長宛に書簡を送り「(民主労総が)提起した問題と関連して、政府当局に直ちに(immediately)介入(intervene)」し、「関連条約に記されている結社の自由の基準および原則に関連した監視監督機関の立場を(韓国政府に)伝え、想起(recall)させた」と明らかにした。ILOは「今後、政府が提供するすべての情報を民主労総に共有する」とも付け加えた。政府もILOの介入事実を確認する書簡を受け取ったことが分かった。

 ILOの介入は、加盟国の労働組合などの要請があれば、ILO条約の内容と当該政府に対する従来の勧告、事案の深刻性を総合的に評価して行われる。ILOには「結社の自由委員会」のような監督機関が存在するが、これを通じた提訴や条約違反の有無に対する判断あるいは勧告までは時間がかかるため、事案が深刻で緊急な場合、事務局長の職権で当該事案に「介入」できるようになっている。

 韓国政府が昨年批准し、国内法と同じ効力を持つILOの「結社の自由および団結権の保護に関する条約(第87号)」と「強制労働に関する条約(第29号)」違反に対する、事実上の「懸念表明」であるわけだ。

 今回の措置は、先月28日に民主労総、公共運輸労組、国際運輸労働組合連盟が「貨物連帯のストライキに関して韓国政府が業務開始命令を検討し代替輸送人材を投入したのは、ILOの『結社の自由および団結権の保護に関する条約(第87号)』と『強制労働に関する協約(第29号)』の違反」だとして、介入を要請したことに伴うものだ。

 ILOが韓国政府に想起させた「監督機関の立場」には、結社の自由委員会がこれまで行ってきた勧告内容も含まれる。結社の自由委員会は、すでに何度も貨物連帯に関して労働基本権を保障すべきという勧告をした。「貨物運転手など自営労働者(特殊雇用労働者)の結社の自由を保障する措置を取ること」(2011年)や「貨物運転手など自営労働者の団結権と団体交渉権を保障すること」(2015年)などがそれに当たる。

 ILOは、韓国政府が先月28日に発動した業務開始命令のようなストライキ参加者に対する「業務復帰命令」に対し、非常に厳格な条件を強調してきた。「経済の中核産業における長期間の全面ストが、生命、健康、安全を危険にさらしうる状況を招く恐れがある場合を除いた業務復帰命令は、結社の自由の原則に反する」と判断したことが代表的な事例だ。

 ILOの介入決定により、韓国政府は貨物連帯ストライキに関する対応事項および見解をILO側に伝えなければならない。ILOは朴槿恵(パク・クネ)政権当時、解雇された教師を組合員として認めた全国教職員労働組合(全教組)を法外労組とする通知、全国公務員労働組合の設立申告に対する差し戻し処分などにも、介入決定を下した。当時、政府は「意見照会の要請に過ぎない」として介入決定に対する意味を矮小化した。今回の介入に対しても、雇用労働部のキム・ウンチョル国際協力官は「労働組合の介入要請に関する通常の意見照会の要請と大きく変わらないとみている」と述べた。

 しかし、ILOが貨物連帯事案に対する判断を政府に「想起(recall)」させたという点が異例的だという意見もある。民主労総と共同でILOに介入を要請した国際運輸労連のルワン・スバシンゲ法律局長は「ILOが韓国政府に緊急介入開始の通知文を送付し、従来のILOの立場を添付したことを重要視しなければならない」とし、「これはILOが韓国政府の業務開始命令を条約第87号および結社の自由の原則に対する重大な違反と判断していることを意味する」と述べた。ILO基本条約を批准した加盟国は、立法と行政において条約順守義務がある。それだけでなく、国際労働基準の順守は欧州連合(EU)をはじめとする様々な国と締結した自由貿易協定(FTA)に伴う義務でもある。

 民主労総のリュ・ミギョン国際局長は「ILOの介入は韓国政府の国際労働基準違反に対する『懸念表明』と解釈すべきだ」としたうえで、「韓国政府は、ILO基本条約の批准以後、結社の自由の原則を順守する義務の重みが変わったことを自覚し、結社の自由の原則に反する貨物連帯弾圧を止めなければならない」と述べた。

パク・テウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1070096.html 韓国語原文入: 2022-12-05 01:20
訳H.J

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