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尹大統領夫人のこの写真、「貧困ポルノ」と何が違うのか(2)

登録:2022-11-18 06:27 修正:2022-11-30 11:29
KCOC「児童の権利保護のためのメディアガイドライン」 
子どもを無気力な受恵者ではなく、能動的な主体として描くべき
キム・ゴンヒ女史は12日、カンボジア・プノンペンで14歳の先天性心臓疾患の少年の家を訪れ、少年を抱いて回復を祈った=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

(1から続く)

国際開発協力青年活動家たちの怒り

 キム女史が非公開で行った12日の日程と関連し、大統領室がマスコミに提供した写真と映像も評価の対象になるのが当然だ。ここで重要に考えなければならない点は、写真と映像に14歳の心臓疾患を患う少年が主人公として登場したという事実だ。チャン最高委員がこれを「貧困ポルノ撮影」と批判した理由も、写真の中の主人公が14歳の少年患者だったことと無関係ではない。

 狭義の「貧困ポルノ」(Poverty Porn)は「貧困を刺激的に描写し、人々に同情心を呼び起こす写真や映像」を指す。「苦しむ肉体が映った写真を見ようとする欲望は裸体が映った写真を見ようとする欲望と同じくらい激しい」(『他者の苦痛へのまなざし』、スーザン・ソンタグ)という比喩は、貧困ポルノという用語が告発しようとする人間の闇の部分をよく表している。

 貧困ポルノは、主に国内外の救援団体が寄付金を募る場合や広報効果を狙うときに活用されてきた。もちろん、社会的弱者の不幸な境遇を写真や映像に収めて伝えることで目的の達成を目指すすべての視覚物が貧困ポルノとは限らない。さらに重要なのは、これを記録に残して知らしめようとする人の意図と態度だ。「貧困ポルノか否か」が常に激しい論争の対象にならざるを得ない理由がここにある。

 各種メディアと救援団体の活動をめぐり、「貧困ポルノ」という議論が絶えないことを受け、国際開発協力民間協議会(KCOC)は数年前に「児童の権利保護のためのメディアガイドライン」を示した。ここには「新聞や放送などメディアが開発途上国の児童と関連した内容を報道する際、報道に関係したすべての人々が児童の権利を侵害しないために守るべき原則」が含まれている。KCOCは、国際救援開発と人道支援活動を行う140以上の韓国のNGOの連合体だ。

国際開発協力民間協議会(KCOC)が提案している「児童の権利保護のためのメディアガイドライン」の一部//ハンギョレ新聞社

 カンボジアのプノンペンで心臓疾患を患う14歳の少年の家を訪ね、一緒に写真を撮ったキム女史の態度や、その姿を撮影して公開した大統領室の意図を推測し、あえて「貧困ポルノ」という等級を付ける必要はないかもしれないが、少なくともキム女史と大統領室の行為がこのガイドラインを満たしているかどうかは判断できる。

 このガイドラインで最も重要視しているのは「児童および保護者に対する能動的描写」だ。児童と保護者を他人の支援だけを望んでいる無気力な受恵者ではなく、人生の条件を改善するために努力する能動的主体として描くべきという意味だ。「児童のプライバシー保護」の原則も強調されている。単に撮影に同意が求められるというレベルではなく、児童に撮影の趣旨を十分に説明したのか、写真使用の危険性を児童と保護者に事前に知らせたのか、無理な再撮影がなかったかなどまで細かくチェックしなければならない。

 特にキム女史が会った「貧困・疾病状況の児童」と関連した撮影および報道のガイドを見ると、「疾病に対する現象だけを扱うよりは、原因と治療方法も一緒に明示」することや「飢えと病気に苦しむ児童のイメージを利用して同情心を呼び起こす形から脱皮」すること、「感情的な反応を引き出すためにさらに深刻な状況を演出しないこと」などを勧告している。これもまた、開発途上国の児童と家族が先進国の援助にただ受動的に頼っているような印象を与えてはならないという趣旨だ。

 児童の権利保護のためのメディアガイドラインをかなり長く紹介した理由は、大統領室が公開したキム女史の写真は概ねこのガイドラインの勧告内容と衝突しているように見えるからだ。

 まず、大統領室が公開した写真のうち一枚は、キム女史が「あえて」暗い表情の14才の少年を抱いている姿だが、YTN「突発映像」が報道した映像を見る限り、この少年は撮影中に比較的明るい表情で楽に座っている姿で登場する。むしろ写真に撮られた「暗い表情の14才の少年を抱いているキム女史の姿」の方がはるかにぎこちなく不自然に見える。

 何よりも「健康な成人が病気の少年を抱いている」構図の写真は、上記のガイドラインで紹介した「不適切な事例」と主役が違うだけで、大きな違いはない。

国際開発協力民間協議会(KCOC)の「児童の権利保護のためのメディアガイドライン」で紹介された不適切な画像使用の事例。「特定の人種の児童のイメージ使用により偏見を助長した事例」と書かれている//ハンギョレ新聞社

 また、キム女史は先立って現地病院で病床に座った患児とグータッチをする時も、最初の撮影分の角度が気に入らなかったようで、患児に直接カメラの方向を指さして視線を向けるよう声をかけてから、再びグータッチを行った。あえて正面写真を求め2度も挨拶を交わすキム女史の姿は、やむを得ず児童の写真を使う場合はプライバシー保護のために顔をモザイク処理したり、正面よりは横顔、あるいは代役写真にするという最近の流れとはかけ離れていた。

「YTN」の「突発映像」画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
「YTN」の「突発映像」画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 最後に、KCOCのガイドラインでは「撮影による事後被害の予防」の原則として「児童を対象にした報道の政治的、社会的、文化的影響を慎重に考慮し、否定的な影響を事前に予防しなければならない」という点を強調している。すでに国内ではキム女史の医療脆弱階層訪問写真をめぐり、政治・社会的波紋が広がった状況だ。その被害が最も大きく及ぶのは他の誰でもなく、プノンペンにいる14歳の少年であることが懸念される。

 これと関連し、国際開発協力青年活動家コミュニティの「公的で私的な会」は15日からオンラインプラットフォームの「キャンペーンズ」で「キム・ゴンヒ女史と大統領室の貧困ポルノを糾弾します」という題名で署名キャンペーンを進めている。17日基準で約3千人が署名した状態だ。

 同団体はここにあげた文で「貧困問題の解決の前後過程もなく、心臓疾患児童の家庭を突然訪ねたキム・ゴンヒ女史と大統領室の行動一切を、政権の危機を打開するための『貧困ポルノ』と規定し、糾弾する」とし、「大統領室が公開した『マスクを外して患児の家庭を訪問し、大統領夫人自身が写真の主な被写体となり、14歳にもなる青少年をまるで赤ん坊を抱きしめるような不自然な姿勢で撮影した』写真は、貧困の脈絡を無視し、暗く悲劇的な印象を演出した」と批判した。

 さらに「『幸いなことに児童の話が伝えられた後、韓国国内から後援の問い合わせが殺到』し、キム女史などは『ついに命が助かる道が開かれたと安堵した』という大統領室副報道官の書面ブリーフィングは、貧困を歪曲して描写し、物神主義を刺激するとともに、外部の救援者だけが現地の問題を解決できるという錯覚を引き起こす」とし、「今回のキム・ゴンヒ女史の患児家庭訪問は、貧困ポルノと判断できるすべての要素を備えている」と指摘した。

 彼らは「キム・ゴンヒ女史と大統領室が、今回のカンボジアでの患児の自宅訪問で児童と家族の権利を守るためにメディアガイドラインを調べるなどの事前措置をしたのか問いたい」とし、「そして、誰も疎外されない世の中を作るために『ドゥ・ノー・ハーム(Do No Harm 害は及ぼさないこと)』の原則を守り、国内と世界各地で熱意と誠意を尽くしている国際開発協力活動家の努力を考えたことがあるかも問いたい」と付け加えた。

チェ・ソンジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/media/1067627.html韓国語原文入:2022-11-18 00:29
訳H.J

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