川から大量のプラスチックの生活ゴミを排出するフィリピンやインドよりも、大規模な漁業活動を行ってきた日本、中国、韓国などの方が「巨大太平洋ゴミ地帯」を漂うプラスチック廃棄物の主な起源国であることが明らかになった。
巨大太平洋ゴミ地帯とは、ハワイと北米の間の大洋で韓国の16倍の面積に広がるゴミの海を指す。プラスチックごみなど7万9000トンの廃棄物が、島の形態ではなくゆるいスープのようにぐるぐる回る海流に沿って集まっている。
大洋のプラスチックゴミ回収技術を開発するオランダの非営利機関「オーシャンクリーンアップ」は、2019年、巨大太平洋ゴミ地帯で大きさが5センチ以上のプラスチックゴミ6000点を回収し、起源地の追跡に取り組んだ。手がかりはゴミに書かれた言語、会社名、商標、ロゴ、住所、電話番号などだった。
オーシャンクリーンアップの活動家のローラン・ルブルトンさんらは5日、科学ジャーナル「サイエンティフィック・リポート」に掲載された論文で、「海に流れ込むプラスチック廃棄物は、大半が途上国の川からやって来ると思われているが、北太平洋の還流地帯のプラスチックゴミは、主に産業化した5つの漁業国から出たもの」と明らかにした。
起源国のうち最も比重が大きい国は日本で34%を占め、中国は32%。続いて韓国・北朝鮮が10%、米国7%、台湾6%、カナダ5%の順だった。韓国と北朝鮮は区分せず、朝鮮半島にまとめて分類した。
研究に参加した同団体の海洋学者マティアス・エッガー博士は、「今回の研究の結果、大洋の巨大ゴミ地帯は、川を通じた流入を防ぐだけでは浄化できないということが明らかになった」として「海洋プラスチックをなくすためには、漁業と養殖業が重要な役割を果たさなければならない」と、団体のホームページで発表した。
今回、プラスチックゴミの主な起源国として明らかになった日本、中国、韓国、米国、台湾は、世界的に産業規模の漁業活動も最も活発な国々だ。研究者たちは「今回は起源地を推定するのに活用できなかったが、主な漁具廃棄物である網やロープの排出もこれらの国が同じくらいの比重を占めるだろう」と論文で明らかにした。
これまでは、海洋プラスチック廃棄物の主な排出源は開発途上国の海岸都市や川で、世界的にフィリピン(36%)、インド(13%)、マレーシアと中国(各7%)が主要な排出国として知られてきた。
ではなぜ太平洋ゴミ地帯でこれらの国の比重は微々たるもので、代わりに漁具ゴミが大きな比重を占めたのだろうか。エッガー博士は「川起源のプラスチックゴミはほとんどが沿岸を漂いながら海岸や海底に沈む」として「漁具から排出された水に浮かぶプラスチックゴミが太平洋ゴミ地帯に到達する可能性は、川起源ゴミより2~10倍高い」と明らかにした。
研究者たちは、太平洋で回収した大型ゴミの3分の1はどんな物体からきたのか分からなかったが、残りはたいていブイ(浮標)、箱、バケツ、カゴなどの漁業関連のプラスチックゴミだったと明らかにした。用途が識別できるゴミの中で最も多いのは、カキ養殖場のゴミだった。
今回回収した大型プラスチックごみの中で最も古いものは、1966年に製造されたブイだった。エッガー博士は「これらのゴミは大半が数十年経ったもので、今後も長期間存続しマイクロプラスチックに分解され、環境に害を及ぼすだろう」と述べた。
引用論文:Scientific Reports, DOI: 10.1038/s41598-022-16529-0