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THAAD基地正常化秒読み… 問わなければならない3つのポイント(1)

登録:2022-09-06 06:32 修正:2022-09-06 08:02
9月4日深夜、ブルドーザーなど基地に搬入 
「ハンギョレ21」で再び問う「THAAD配備の虚と実」

慶尚北道星州韶成里(ソソンリ)にある在韓米軍THAAD(高高度防衛ミサイル)基地に、2022年9月4日午前1時30分頃、ブルドーザーなどの工事装備と油類車、ワゴン車などが入りました。前日(9月3日)、ここで500人余りが集まって開かれた「THAAD配備反対のための第13回汎国民平和行動集会」が終わるやいなや、夜中を狙って起きたことです。

基地周辺の韶成里住民が反対する「週7日工事資材搬入」を定着させようとしているようです。これまで在韓米軍と国防部は臨時配備中のTHAAD基地に週2~3回、工事資材などを搬入してきましたが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後の6月から搬入回数を週5回に増やしました。

米国と中国の戦略競争の中、国内で起きているTHAAD配備をめぐる議論は2016年から7年間続いています。基地周辺の村にある1車線道路は軍用トラックが通る軍事道路になり、公民館の向かい側にある、ゴルフ場のキャディーのための寮として使われていた建物は軍人と警察が駐留する場所になりました。

村の住民をはじめとする全国の市民団体が7年間も反発しているTHAAD配備は、朝鮮半島に一体どのような影響を及ぼすのでしょうか。「ハンギョレ21」は2016年7月18日、「THAADに関する3大惑世誣民(世人を欺き惑わすこと)」というコリア研究院のキム・チャンス院長の寄稿を載せました。これを通じて、THAAD配備の虚と実をもう一度問うてみます。(イ・ジョンギュ記者)

9月3日午後、円仏教のジンバッ平和祈祷2000日とTHAAD追加搬入から5年を機に行われた第13回汎国民平和行動が星州郡ジンバッ橋で開かれ、参加者たちが不法THAADの撤去および基地工事中止を求める祈りをささげている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 米国と中国の首脳たちは、韓国と首脳会談を行うたびに、THAAD(高高度防衛ミサイル)問題を取り上げてきた。THAAD配備のせいで朝鮮半島は周辺国が神経戦を繰り広げる角逐の場となった。近現代史における経験から、韓国ほど「角逐の場」という言葉が与える否定的ニュアンスを痛感する民族もあまりないだろう。韓国と米国がTHAAD配備を電撃的に決めたことに対し、中国とロシアが激しく反発している。中ロの強硬派の間では経済報復と軍事的措置が公然と取り上げられている状況だ。列強の隙間で道を失った近現代史の痛ましい記憶が蘇る状況だ。

盾は決して防御用ではない

 2014年以後、米国でTHAAD配備が議論されるたびに、韓国政府はこれを否定した。米国からTHAAD配備に対する要請もなく、協議もなかったため、それに関する決定もないという論理を掲げてきた。だが、2015年末から雰囲気が変わる兆しが見え、7月8日、THAAD配備を発表した。大韓民国という国の進路に影響を及ぼす事案であるにもかかわらず、公論化過程が極めて不十分だった。

 だからなのか、THAAD配備の必要性に対する政府の論理もその都度変わってきた。最初は、米国が北朝鮮の核とミサイルから在韓米軍の資産を守るためにTHAADを配備するというのが主な説明だった。米国が自分のお金で配備するのに、なぜ反対するのかという論理だ。そうするうちに、THAADを配備すれば首都圏をはじめ韓国の防衛に役立つという説明が加わった。だが、THAAD配備地域で慶尚北道星州(ソンジュ)を決めてからは、THAADが首都圏を防衛できないという指摘もあった。すると、首都圏はTHAADではなくパトリオットミサイルで守るという論理が作られた。

 政府の論理がこのように変わるのは、本質的なことを隠蔽しているためとみられる。THAAD配備を発表した韓米両国の論理とハン・ミング国防部長官の説明は、3つにまとめられる。第一に、THAADは防衛用だ。第二に、THAADは北朝鮮の核とミサイル対応が目的であり、中国牽制用ではない。第三に、THAADは北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も迎撃できる。しかし、3つとも国民を欺く「惑世誣民」だ。

 THAADは盾の機能を果たす防御用だと主張するのは、攻撃と守備の力学関係をあまりにも単純にとらえるものだ。国際政治における矛と盾の機能はそう単純ではない。盾を用意するのは決して単なる防御用とはみなされない。

 通常、先制攻撃を第1撃、相手の先制攻撃で生き残って報復攻撃を加えられる能力を第2撃能力という。Aが頑丈な盾を用意すると、Bは自分の第2撃能力が弱くなると判断する。Aが先制攻撃をした後、Bが辛うじて戦列を整えて報復攻撃(第2撃)をしても、Aの盾が防げると思うからだ。この場合、Aが用意した盾はAとBの間のバランスを崩す。

 Bはこれに対抗するため、盾を突き破られるより丈夫な槍を用意する。その結果、AとBの間の軍拡競争が続く。Aの盾はBがより鋭い槍を作るよう刺激する攻撃用となる。THAADは相手が発射した弾道ミサイルを破壊する迎撃ミサイルであるため盾だというが、THAADは決して防御機能だけを担当するわけではない。

 THAADは北朝鮮の核とミサイルに対応するためのもので、中国を牽制するためのものではないというのも、見え透いた嘘だ。THAADで約1千基にのぼる北朝鮮のスカッドミサイルとノドンミサイルを阻止することは難しい。北朝鮮のミサイルが5分前後で韓国全域に到達できるため、迎撃する時間は十分ではない。一部を迎撃しても、数多くの短距離ミサイルと放射砲が同時に夕立のように飛んでくる場合は成すすべがない。

(2に続く)

キム・チャンス|コリア研究院院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://h21.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/52531.html韓国語原文入力: 2022-09-0518:09
訳H.J

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