韓国政府は、外国から韓国に入国する際に出発国で受けることが義務付けられている新型コロナウイルス検査を、秋夕(チュソク。中秋節)以降に段階的に廃止していく方向へと傾いていることが確認された。最終的には入国前検査の完全廃止を目標とするが、コロナの危険性が低い国から段階的に廃止していく可能性が高い。
防疫当局の関係者は28日の本紙の電話取材に対し「1日当たりの韓国入国者は約2万人で、1人当たりの検査費用が10万ウォン(約1万200円)だとすれば、それだけで20億ウォン(約2億500万円)かかっている。入国前検査の廃止を最終目標としつつも、まだ屋外でマスクを外していないなど、コロナウイルスに対して慎重な国民が多いことを考慮して、危険度が低い国から段階的に緩和する方向で検討している」と述べた。この関係者は「旅行客の多い秋夕(9月10日)の連休が終わった後に、段階的措置を発表する予定」と付け加えた。
段階的廃止の基準として確実視されているのは「コロナ危険度」だ。まず現在入国が禁止されているか、ウイルスが流行している「感染危険国」以外の国を対象に、検査を廃止する方式だ。韓国と近く飛行時間が短い国も検査廃止対象として名があがっているが、飛行機内で過ごす時間の長さとは関係なしに、機内で食べ物が提供される場合は感染が懸念されることから、慎重に検討しているという。コロナワクチンの3度目の接種を済ませているなど、接種の回数によって入国前検査を免除する方式は、「防疫パス」が再び適用されるということを考慮して除外したという。
現在の政府の「海外からの入国者の防疫管理対策」によると、外国から入国するすべての韓国人・外国人は入国前の48時間以内に受けたPCR検査、または24時間以内に受けた専門家用迅速抗原検査(RAT)による陰性確認書を提出しなければならない。予防接種を済ませているかどうかとは無関係に、陰性確認書がなければ韓国に向かう航空機への搭乗が制限される。また入国者は入国1日目(入国日の翌日も認められる)に保健所でPCR検査を改めて受けなければならない。政府は7月25日に、入国後PCR検査の期間を3日目までから1日目までに短縮している。
政府が入国前検査の緩和を検討しているのは、関連業界の要求はもちろん、外国の検疫緩和基調が影響を及ぼしているとみられる。旅行・観光業界は、入国前検査のコストや、陽性判定を受ければ外国で隔離を受けなければならないという負担の大きさのせいで、旅行心理が萎縮していると主張してきた。疾病管理庁は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、入国前のPCR検査を求めている国は韓国と日本のみだと説明した。日本は来月7日から、コロナワクチンを3度接種済みの人に限り、入国時のPCR陰性証明書提出を免除する。
専門家は、入国後の検査の実施、重症化・死者の最小化などの政府の防疫基調を考慮すれば、すべての入国者の入国前コロナ検査の緩和が望ましいと考えている。嘉泉大学医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学科)は「すでに国外で変異株が発生すれば1~2週間で韓国に流入する状況であるため、入国前検査を廃止したからといって(流行の状況が)より悪化することはないだろう。コロナウイルスの潜伏期間(平均5~7日)を考えると、飛行時間が長くなければ、韓国到着後1日目の検査と入国前検査に大きな違いはないため、入国前検査は効果に比べコストが非常にかかる政策」だと語った。ソウル大学病院のキム・ナムジュン教授(感染内科)は『外国から入国した人でコロナで死亡したというケースはあまりない。今の政府の防疫目標は重症患者数と死者数の最小化であるため、入国前検査の緩和は政府の全体的な防疫基調と合っており、悪い方向ではないと思う」と語った。
ただ、入国前検査の緩和で旅行客が増加した場合に発生しうる問題に対する対応策は慎重に準備すべきだとする意見はある。中央事故収拾本部(中収本)のパク・ヒャン防疫総括班長は24日の中央災害安全対策本部(中対本)のブリーフィングで「飛行機を使った旅行は密閉空間の中で食事などが行われるため、考慮すべき事項が様々あることを確認している」と述べている。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「入国前検査を緩和するにしても、変異株の発生国や広がっている国から入国する人を今より徹底して監視するシステムを作る必要がある」と語った。ある政府関係者は「入国前検査の緩和で旅行客が増えれば、現在は入国1日目に実施している保健所でのPCR検査を行う人材などの補充が必要になる」と語った。
疾病管理庁は来週の議論を経て、その後に検査緩和の可否を決定するとの立場だ。疾病庁はこの日、保健福祉部の記者団に「入国前検査の廃止が国内防疫に及ぼす影響などを総合的に考慮している。専門家および関係省庁と来週協議し、検討結果を中対本に報告した後に決定し、発表する予定」だと述べた。