(1の続き)
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「漁師との共生が切実に求められている」
これまで政府、環境団体、イ・ヨンラン教授は、世界的な絶滅危惧種であるスナメリの保護の重要性を訴えてきた。海洋水産部は2016年にスナメリを海洋保護生物に指定し、2019年にはスナメリが生息する慶尚南道固城(コソン)の周辺海域を海洋生物保護区域に指定している。イ教授が海洋保全チーム長として在職していた世界自然保護基金(WWF)は、混獲被害を減らせる脱出網を漁師と一般市民に知ってもらうキャンペーンを展開してきた。しかし、依然としてスナメリ研究のインフラや大衆の認識などは期待にはるかに満たない。
イ・ヨンラン教授は「国内でクジラの解剖や研究ができる公的機関はクジラ研究センターだけ。斃死(へいし)するスナメリは1年で1100頭あまりに達するが、クジラ研究センターはこのすべての個体を解剖・研究する予算や人材が不足しており、だからほとんどのスナメリはなぜ死んだのかも分からないまま廃棄される」と述べた。
国立水産科学院の調査によると、朝鮮半島近海に生息するスナメリの数は2005年時点で3万6000頭あまりだった。しかし沿岸の開発、環境汚染、混獲などの被害によって個体数は急激に減り、2016年には1万7000頭に。斃死するスナメリの数は年間で1000頭あまりと推定されているが、漁業者の推定はその数を何倍も上回る。
アンフン食品のチョ・ハンオ代表は「届け出があるのは1000頭だが、漁業者の推定では5000~7000頭にはなると思う。2017年から鯨肉の流通が禁止されているため、漁師は混獲を届け出ずに海に捨ててくる。政府の集計は正確ではない」と説明した。
研究者たちが正確なデータや生態研究、クジラ保護のために漁業者との共生を強調する理由もここにある。イ教授は「政府が混獲を低減する道具を普及させるとしても、漁師にそれを強制することはできない。韓国の漁師は比較的混獲を積極的に届け出ているが、届け出の手続きが難しく、複雑なのも問題」だと語った。このため、今回の解剖は学術だけが目的ではなく、住民懇談会の開催などのネットワーキングも強調された。
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スナメリの死が発する警告
スナメリの死を惜しむのは研究者や一般市民ばかりではない。意図せずクジラやイルカを捕ってしまった漁師たちも同じだ。水産加工業を営んできたチョ・ハンオ代表は、スナメリの解剖は何度も見たが、この日はいっそう気持ちが重いと語った。「この世に生まれてくることもできず、母親の腹の中で赤ちゃんが死んでいたのが不憫」。同氏は解剖の間中、依然として多くの人は知らないと述べつつ、スナメリがどれほどかわいいか、どれほど神秘的な動物なのかを説明した。
なぜ私たちはスナメリを守り、研究しなければならないのか。イ・ヨンラン教授は、スナメリだけのためではないと語った。「私たちの周辺の生物が一つ、また一つといなくなるということは、生態系のバランスが崩れているということです。スナメリに危険が迫っている、それは私たちに発せられる警告である可能性が高いのです。私はスナメリを愛していますが、結局のところ私が守りたいのは海であり、自然なんです」(了)