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「大統領執務室を見せる」として開放する龍山公園…全区域で毒性物質検出

登録:2022-06-08 06:32 修正:2022-06-15 10:21
「テスト開放」される龍山公園の全区域環境報告書を入手 
10日に公開される予定の区域は、いずれもヒ素や鉛まみれ 
「安全を担保にした見せかけのコミュニケーションはやめるべき」
今月10日から10日間開放される龍山公園を大統領執務室の南側から眺めた風景。昨年の環境調査の結果、この地域の土壌から毒性物質であるヒ素が基準値以上に検出され、近隣の米軍病院区域の地下水からは基準値の195倍を超える濃度の全石油系炭化水素(TPH)が検出された/聯合ニュース

 韓国政府が在韓米軍から返還され、今月10日から10日間テスト開放する龍山(ヨンサン)公園の主要区域である「大統領執務室南側区域」の3分の2以上が、全石油系炭化水素(TPH)やヒ素など毒性物質で汚染されていることが確認された。国立中央博物館北側のスポーツフィールドや、ソウル地下鉄4号線の新龍山駅周辺の龍山基地14番ゲート側の在韓米軍将軍宿舎、大統領執務室東側の在韓米軍宿舎および学校区域なども汚染されていることが分かった。9月に正式に開放される龍山公園の全区域で、公園造成が可能な基準値を超える汚染物質が検出され、性急な公園開放に対する懸念の声が高まっている。

 本紙が7日、国会環境労働委員会所属のイ・スジン議員(共に民主党比例代表)から入手した米軍龍山基地「サウスポスト環境調査報告書」(米軍基地区域名称 A4c、A4d、A4e)を分析した結果、総面積16万4830平方メートルのうち、66.1%にあたる10万8920平方メートルが土壌汚染憂慮基準(公園など1地域)を超えていることが分かった。この地域は大統領執務室の南側に広がる区域で、大統領執務室を見ることができるうえ、野球場など緑地帯、米軍基地病院と建物が並んでいるため、今回のテスト開放の目玉に挙げられるところだ。

 報告書によると、国土交通部が展望台を設置する野球場(A4d)区域の土壌では、毒性物質のヒ素が1キログラム当たり234.86ミリグラムで、公園基準値の9.4倍が検出されており、発がん物質であるTPHは1キログラム当たり4436ミリグラムで、基準値の8.9倍が出た。

 比較的よく管理されていたとみられている龍山米軍病院(A4e)とその周辺地域(A4c)の土壌も、TPHやベンゼン、キシレン、銅など発がんの危険性があったり、有害な化学物質で汚染されていた。特に、米軍病院区域で採取した地下水に含まれたTPHの濃度は、地下水浄化基準の195.4倍に達することが確認された。今回の報告書は、環境部が韓国環境公団に依頼し、昨年8月11日の韓米共同現場訪問調査後に現場調査を経て作成された。

 龍山公園内の他の地域もひどく汚染されていることが分かった。本紙が別途入手したスポーツフィールド(A1、A2)の環境調査報告書によると、この区域のTPHが基準値より36倍高い最大1キログラム当たり1万8040ミリグラムが検出されたのをはじめ、鉛が5.2倍、水銀が3倍など、9項目で汚染基準を上回った。国立中央博物館の北側にあるスポーツフィールドは、今回のテスト開放に先立ち、政府が主要観覧ポイントとして掲げた地域で、今後体育施設として活用される予定だ。

 14番ゲート側の将軍宿舎団地(A4b、A4f)一帯で行われた土壌調査では、TPHやキシレンなどが公園基準値より高いことが分かった。10日のテスト開放からは外されたが、9月の開放時には含まれるとみられる在韓米軍の宿舎や学校(A4a)地域からは、ダイオキシンが基準値の34.8倍検出された。ダイオキシンは表土層にあるため、人体露出の可能性が高く、人体に半永久的に蓄積され、がん発生の原因となる。

 国土交通部は10日から19日まで、大統領執務室南側区域を中心にスポーツフィールドや将軍宿舎団地をテスト開放し、9月には開放区域を広げて公園に再整備する計画だ。週に3回、2時間の訪問の頻度で危害性評価をした結果、散歩道をつくり、人工芝で舗装するなど土壌と人体接触を遮断すれば問題がないというのが政府の主張だ。環境部のイ・ジョンヨン土壌地下水課長は「土壌汚染憂慮基準を超過しても、危害性低減措置を取れば臨時開放できる」と述べた。ただし「基準を超過したため、今後は環境汚染浄化作業を行うのが原則」と付け加えた。

 環境団体は、汚染浄化作業どころか汚染源に対する精密調査もなしに開放を急ぐことは危険だと主張する。団体は、公園として開放する全区域で汚染が確認されただけに、9月の公式開放までに土壌と地下水の汚染原因と拡散様相に対する精密調査、さらに汚染浄化作業を行うには時間が足りないとみている。

 イ・スジン議員は「龍山公園開放地域の深刻な汚染が確認されたにもかかわらず、政府は国民の健康と安全を担保にした見せかけのコミュニケーションを図っている」とし、「米軍返還敷地に対するきちんとした汚染浄化作業に直ちに乗り出さなければならない」と述べた。

キム・ユンジュ、ナム・ジョンヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1046099.html韓国語原文入力:2022-06-0723:17
訳H.J

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