韓国と米国が11日、龍山(ヨンサン)米軍基地の返還手続きを開始することに合意したことによって、韓国近代史において100年以上外国の軍隊が駐留してきた龍山が完全に市民のもとへ戻ってくる第一歩が踏み出されることとなった。韓米が2004年に「ソウル地域からの国連軍司令部・連合軍司令部および在韓米軍司令部の移転完了に必要な原則・日程および履行手続きを定めた」 いわゆる「龍山基地移転協定(YRP)」を締結してから15年を経てのことだ。
韓米の今回の決定により、政府とソウル市が進めている龍山公園化計画にも拍車がかかる見通しだ。当初、政府は今年から龍山基地一帯の土壌の浄化作業を開始する計画だったが、返還手続きが進まず、進展が見られなかった。龍山公園化は2005年当時、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が国立公園推進案を発表し、2007年には「龍山公園造成特別法」が制定されたことで、「新しい龍山」プロジェクトとして注目された。
現在、龍山基地には韓米連合軍司令部と米軍の宿舎として使われているドラゴンヒルホテルぐらいしか残っていない。在韓米軍司令部は昨年6月に、米第8軍司令部はそれより1年ほど前の2017年7月に、平沢(ピョンテク)基地に移っている。龍山基地移転協定では、2008年12月31日までに国連軍司令部・連合軍司令部および在韓米軍司令部の移転を完了することになっていたが、韓米連合軍司令部の位置をめぐって論争が続き、10年以上遅れている。韓米連合軍司令部の移転は文在寅(ムン・ジェイン)政権の任期中に行われると予想される戦時作戦統制権(戦作権)転換と連動している。
韓米が龍山基地の返還手続きに着手しても、実際の返還までには解決すべき課題が山積している。在韓米軍地位協定(SOFA)によると、施設区域分科委員会による施設および面積の調査、環境分科委員会の環境評価、合同委員会の承認を経てようやく返還が完了する。核心は環境評価だ。ここで汚染浄化の責任についての合意がなされなければ、特別合同委員会に持ち込まれることになる。基地汚染に対する責任を認めてこなかった米国のこれまでの態度からすれば、順調な合意は期待できない。
SOFAは、環境汚染の浄化に対する米国の義務を規定していない。「米国は施設と区域を返還する際に、提供された当時の状態に原状回復する義務を負わず、大韓民国政府に補償する義務も負わない」と規定されている。米国はこれを根拠に、米軍基地の汚染に対する責任を回避している。米国は実際、ドイツや日本などでも米軍基地の返還に際し、汚染浄化費用を一切負担しなかった。しかし、憲法裁判所は2001年、このような規定が米軍の汚染浄化義務を免除するものではないと決定している。
韓米はこれに従い、2001年にSOFAの付属文書として「環境保護に関する特別了解覚書」を採択したが、汚染の程度についての評価基準において明確な立場の違いを見せている。米国は、環境了解覚書で規定している「人間の健康に対して広く知られ差し迫った実質的な危険」(KISE原則)をもたらす汚染に対してのみ責任を認められるという立場を固守している。韓国は危険の度合いを等級化する案を提示しているが、米国はこれまで基地に勤務していた将兵に特に差し迫った健康上の問題はなかったとして拒否しているという。
韓米は今回、米軍基地の返還を決定しつつ、SOFA関連文書の改正の可能性について協議を続けることにした。「可能性についての協議」という表現から、米国の消極的態度が推測できる。このため、米国が汚染浄化の責任を協議する過程で今の態度を変えなければ、結局は税金で浄化することになるのではないかという懸念も出ている。政府は、龍山基地の浄化費用を1000億ウォン(約91億円)あまりと推定しているが、環境団体は1兆ウォン(910億円)前後に達するものと見ている。緑色連合はこの日、声明を出し、「汚染浄化のない米軍基地の返還はありえない」とし、「政府は米軍に免罪符を与える交渉を撤回せよ」と求めた。