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南北-朝米関係、「2018年板門店宣言」以前に逆戻りか

登録:2022-05-23 02:17 修正:2022-05-23 08:12
21日の韓米首脳会談共同声明 
板門店宣言などへの言及なし 
北朝鮮に対し軍事対応策ばかりを強調 
北朝鮮が対話に応じる理由は消える
尹錫悦大統領と米国のバイデン大統領が22日午後、京畿道の米軍烏山空軍基地内にある航空宇宙作戦本部(KAOC)の作戦調整室を訪れ、任務遂行状況に関する報告を受けている/聯合ニュース

 21日に発表された韓米首脳の共同声明は、ちょうど1年前の昨年5月21日にワシントンで発表された韓米首脳の共同声明とはいくつかの明らかな違いがある。昨年の声明にはあった「2018年の板門店宣言とシンガポール共同声明」に対する言及が今回は抜けているのが代表的な例だ。代わりに拡大抑止と連合防衛態勢の強化、戦略資産の展開のような、これまで北朝鮮側が強く反発してきた事案が目立って強調されている。対話局面が作り出された2018年以前へと、朝鮮半島情勢が急速に逆戻りしつつあるとの分析が出ている。

 昨年5月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)と米国のジョー・バイデン大統領は首脳会談後の共同声明で「2018年の板門店宣言とシンガポール共同声明などの既存の南北間、朝米間の約束にもとづいた外交と対話が、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和の定着を成し遂げるためには必要不可欠だとの共同の信念を再確認した」と述べた。非核化を対話と交渉の前提ではなく、最終結果とするという従来の合意を土台として交渉を続けるとの意思を、北朝鮮側に伝えたわけだ。

 しかし尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とバイデン大統領の今回の共同声明では、このような内容は削除され、北朝鮮の脅威に対する認識の共有▽武力示威糾弾▽国連安全保障理事会(安保理)決議の履行と交渉への復帰の要求▽国際社会との協力が言及されている。さらに、核・通常兵器およびミサイル防衛能力を含む拡大抑止▽合同演習および訓練の範囲と規模の拡大▽戦略資産の適時展開など、北朝鮮の「脅威」に対する軍事的対応策を細かく羅列している。今回も「対話の道は依然として開かれている」と述べてはいるが、北朝鮮がいわゆる「対北朝鮮敵視政策」の指標として名指ししてきた内容を強調したのだ。北朝鮮にとっては対話に応じる大儀名分も、理由もなくなった格好だ。

 バイデン大統領も北朝鮮に対する冷淡な態度を隠さなかった。バイデン大統領は22日午前、宿舎のハイアットホテルで、ある記者の「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に伝えるメッセージはあるか」との問いに対し、「ハロー、以上(Hello. Period)」と答えた。北朝鮮を対話の場へと導くためにさらに積極的に動く意思がないことを示したものと分析される。バイデン大統領は、前日の韓米首脳会談後の共同記者会見でも、「北朝鮮と会うための前提条件」について問われ、「金総書記が会談について真剣かつ本気であるかにかかっている」と述べている。バラク・オバマ政権の対北朝鮮政策基調である「戦略的忍耐」を思い起こさせる。

 「戦略的忍耐」とは、北朝鮮に対する制裁と中国役割論を両軸とし、一定水準の圧迫を維持しつつ、北朝鮮を対話へと導くという構想。オバマ政権の8年間で、北朝鮮は4回の核実験を実施し、核とミサイルの能力を高度に引き上げた。オバマ政権は5回にわたる国連安保理の対北朝鮮制裁決議で応酬しただけで、それを阻止することはできなかった。バイデン政権が発足100日後の昨年4月末、対北朝鮮政策の枠組みを発表した際に、「(ドナルド・トランプ政権式の)一括妥結に焦点を絞ることはなく、戦略的忍耐にも依存しないだろう」と強調したのも、このような脈絡からだ。

 当時、米政府の高官は「我々のアプローチは、シンガポールおよびそれ以前の合意に基づくものとなるだろう」と語っている。朝米シンガポール共同声明は、新たに朝米関係を改善することを通して朝鮮半島の平和体制を構築すれば、朝鮮半島の完全な非核化は実現できるとする内容を骨子とする。その基礎は「南北関係の改善→軍事的緊張の緩和→終戦宣言・平和協定締結→朝鮮半島の非核化」という過程を提示した4・27板門店宣言だった。

 しかし米国メディアでさえ、今回の韓米首脳会談の結果について、バイデン大統領は「戦略的忍耐」と変わり映えせず、韓米の指導者は前任者から方向を転換したと評している。

 昨年の韓米首脳会談の準備に参加した外交安保消息筋は「板門店宣言とシンガポール共同声明は、それぞれ文在寅政権とトランプ政権の成果だ。新たに発足した尹錫悦政権も、中間選挙を控えたバイデン政権も、それを高く評価する国内政治的な動機がない」とし、「米中、米ロ関係の悪化の中で、北朝鮮側がさらなる核実験などを行えば、2018年以前より危険な情勢が作られる恐れがある」と述べた。

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1043852.html韓国語原文入力:2022-05-22 17:49
訳D.K

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