国民の力のユン・ソクヨル大統領候補の妻、キム・ゴンヒ氏の「7時間通話記録」が公開された後も、キム氏の発言と行動には依然として疑問点が残る。政界の常識とはかけ離れた候補の家族の突発的な発言や、インターネットメディアの撮影記者であるL氏との長期間にわたる親交関係については、「国民の力」内部でもその背景を説明するのが難しいという声があがっている。国民の力は17日、録音内容を放送したMBCとインターネットメディアの「開かれた共感テレビ」、「ソウルの声」などに対し、「反論権の保障」や「人権とプライバシーの保護」を掲げ、圧力をかけ続けた。
特定の記者と5カ月間連絡を取り、親交関係を続けたわけは
先月、経歴詐称と関連した謝罪記者会見を通じて、公開の席上に初めて登場する前まで、キム氏はマスコミとの接触を避けて、静かに動いてきた。ライバル候補が妻と一緒にボランティア活動に参加し、地域支持者との会合などに出席するのとは異なる姿だった。
キム氏ががメディアに初めて登場したのは、昨年6月当時「ユン・ソクヨルXファイル」の疑惑について釈明した「ニュースバース(Newsverse)」だった。その6カ月後の先月、自身の虚偽の履歴に関する「YTN」の報道に強い口調で反論する声が公開され、断続的に大衆の前に現れただけだった。選挙対策本部ではキム氏の本格的な登場時期を見計らいながら、「配偶者フォーラム」など多様な方式を検討し、準備作業に取り組んできた。
しかし、キム氏が昨年7月から12月まで計約50回、7時間45分にわたってL氏と電話で話し、直接会った事実が明らかになり、国民の力でも困惑している様子だ。有力な大統領候補の配偶者が、与党寄りのインターネットメディアの撮影記者と数カ月間電話をして直接会っていたというのは、常識的とは言えない。
国民の力は前日「MBC」側に送った反論要請書で、「キム・ゴンヒ氏の母親が拘束された直後、L氏が先に近づき、『母親を20年間あらゆる訴訟で苦しめてきたC氏に対する対応を手伝う』と言った」とし、「L氏はC氏を批判し、近況を伝えて、キム氏の味方であるかのように行動し、歓心を買った」と主張した。
国民の力の関係者は本紙に「なぜ関係を維持してきたのかについては説明するのが難しい」とし、「選対委の管理なしに直接決定をしてきており、事前の調整なしにマスコミのインタビューに応じるなど、制御できなかったことが今回の事態につながった」と述べた。
スカウト・講演の要請も配偶者の活動領域?
公開の席上では見られなかったキム氏が、選対委運営と関連して直接介入した情況は、録音記録を通じていくつか確認された。実際、党内予備選挙の過程から、キム氏がユン候補の選挙業務全般に相当な影響力を行使しているという噂が繰り返し流れてきた。昨年10月、ユン候補の「全斗煥(チョン・ドゥファン)妄言」の謝罪直後、SNSにいわゆる「リンゴ(サグァ、韓国語では謝罪と発音が同じ)」写真が掲載された時も、キム氏の周辺の人物の介入が疑われた。
キム氏がL氏を自分が運営する会社で30分間講演する機会を設け、講義料105万ウォン(約10万円)を支払ったことに対しては、選挙法違反という指摘が出ている。キム氏はL氏との電話で「一度来て、私たち数人に陣営を構成する際の関連内容を講義してもらえないか」と提案し、その後、実際にコバナコンテンツの社員らと共に講演を聞いたという。また、L氏からユン候補の衣装や足を開いて座る姿勢、左右の聴衆を交互に見て話す癖を直す必要があるというアドバイスを受けたという。公職選挙法97条2項は「候補者又はその家族と関係のある会社等は、選挙に関する報道や論評、対談、討論と関連して、当該放送や新聞、通信、雑誌その他の刊行物を経営あるいは管理し、編集や取材、執筆、報道する者又はその補助者に金品や供応その他の利益を提供し、又は提供する意思の表示又はその提供を約束してはならない」と定めている。
国民の力側は配偶者の正常な活動領域だと主張している。キム・ウンヘ選対委公報団長は同日、「CBS」のラジオ番組に出演し「ユン候補のような大統領選挙運動の過程で、配偶者として通常できること以外には何の介入も関与もしていない」と強調した。ユン・ヒソク常任公報特別補佐官も「配偶者の立場としては、自分で会社も運営しているので、選挙を非公式に助けることができる人たちと何らかの意思疎通をすることもあり得るし、何か良い部分を吸収するためにそのような活動をしたと思う」とし、「それは理解するかしないかの問題ではなく、配偶者としてできる活動領域に属する、こう考えればいいと思う」と述べた。
世論をうかがう国民の力…「登場時期」早めるか
今回の録音記録の公開を機に、キム氏が本格的に政界に登場する時期がいつになるかに関心が集まっている。国民の力は、事態の推移を見守りながら慎重に反応している。クォン・ヨンセ選対本部長は同日、選対本部会議の後、「キム氏の選挙運動の時期」に関する記者団の質問に対し、「もう少し考えなければならない問題だ」と明言を避けた。クォン部長はまた、キム氏が先月26日に自身の経歴詐称疑惑に関する国民向けの謝罪会見で「反省し、省察する時間を持つ」と述べたことに触れ、「ある程度の時間は必要ではないかと思う」と述べた。
一方、党内では録音記録の反応が悪くないと自評し、これからはキム氏が選挙運動に直接乗り出すべきだという意見もある。国民の力のある重鎮議員は「録音記録が報道され、むしろ与党側に逆風が吹いている」とし、「配偶者リスクの峠は越えたと思う。公開活動を検討する時期」だと述べた。