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北朝鮮「極超音速ミサイル発射実験」…韓国軍「探知・迎撃可能なレベル」

登録:2021-09-30 06:16 修正:2021-09-30 07:23
韓国軍「開発の初期段階…迎撃可能」 
大統領府、直ちに対応せずに慎重な態度 
対話再開のムードの維持に苦心
今月29日午前、ソウル駅で市民が北朝鮮の極超音速ミサイル「火星-8型」発射実験のニュースをテレビで見ている/聯合ニュース

 北朝鮮が29日、前日に発射したミサイルについて「極超音速巡航ミサイル火星-8型」だと公式発表した。北朝鮮が「次世代ゲームチェンジャー」と呼ばれる極超音速ミサイルの発射実験を行う段階に入ったことで、朝鮮半島内の軍拡競争の激化が懸念されている。ただし、韓国軍当局は「開発の初期段階にあり、実戦配備までにはかなりの時間がかかるだろう」と述べた。

 北朝鮮の国防科学院は「28日午前、慈江道龍林郡都陽里(チャガンド・リョンリムグン・トヤンリ)で新たに開発した極超音速ミサイル『火星-8型』の(初の)発射実験を行った」と、29日付「労働新聞」で報じた。また「初の発射実験」は、「目的したすべての技術的指標が設計上の要求を満たした」と付け加えた。前日、北朝鮮が東に向けて発射した短距離ミサイルと推定される飛翔体が極超音速ミサイルであると公表したのだ。極超音速ミサイルは、北朝鮮が今年1月に開かれた第8回党大会で近いうちに開発を進めると「公言」した先端兵器システムの一つだ。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は当時、「新型弾道ロケットに適用する極超音速滑空飛行戦闘部をはじめとする各種の弾頭開発研究を完了した」と述べたが、8カ月後に発射実験に成功したわけだ。

 米議会調査局(CRS)は昨年3月に発表した「極超音速兵器」に関する報告書で、極超音速ミサイルを「実際の使用可能性は低い、核兵器に代わる国際安保秩序の『ゲームチェンジャー』」だと評した。同ミサイルはマッハ5(時速6120キロメートル)を超えるほど速く、低高度飛行で目標物に向かう途中に方向を変えることもできる。レーダーと防空網で探知し、迎撃することは難しい。全世界で米国、ロシア、中国が実戦配備あるいは実戦配備に近い段階にある先端兵器だ。北朝鮮がこの兵器を開発して実戦配備すれば、米国が莫大な金を投じて構築した在韓米軍と在日米軍基地のミサイル防衛システム(MD)を突破し、有事の際、太平洋と朝鮮半島周辺の米空母戦団を脅かす恐れがある。

 ただし、韓国軍当局は「極超音速ミサイル」の発射実験を行ったという北朝鮮の主張に対し、「大きな脅威ではない」と明らかにした。合同参謀本部は「現在、韓米連合資産で探知・迎撃が可能なレベルだと見ている」と明らかにした。「探知された速度など諸元から見ると、開発の初期段階にあり、実戦配置まではかなりの時間がかかる」と判断したのだ。軍関係者は「北朝鮮の報道などを総合すると、北朝鮮が公開したミサイルは極超音速ミサイルの特性に到達していない初期段階とみられる」と述べた。極超音速ミサイルは速度が音速の5倍のマッハ5(時速6120キロメートル)以上だが、今回の北朝鮮ミサイルの速度はマッハ3(時速3672キロメートル)前後で、「極超音速」ではなく、「超音速」ということだ。軍関係者は「韓米情報当局が探知した北朝鮮ミサイルの飛行距離や高度、速度などを精密に分析している」と述べた。

 ロシアと米国の開発事例を見ると、極超音速ミサイルを実戦配備するまでは、20年前後の長い時間と大金が必要だ。米国が昨年、長距離極超音速滑空体の開発に使った予算だけでも4億400万ドルだ。南北が本格的にこのミサイル開発競争に乗り出した場合、消耗的な軍拡競争になると指摘されるのもそのためだ。

 実戦配備までかなりの時間を要するにもかかわらず、北朝鮮が今月に入って相次いでミサイル発射実験を行ない、新型兵器の開発と高度化に乗り出していることについては、懸念の声が高まっている。米国、イギリス、ドイツなど国際社会は「北朝鮮が国連安保理の北朝鮮決議に伴う義務を再び違反した」とし、北朝鮮のミサイル試験発射を糾弾した。

 大統領府は即時の対応を控え、慎重な態度を示している。パク・スヒョン大統領府国民疎通首席は同日、ある放送局のインタビューで「まず、北朝鮮が発表したミサイルに対する規定を、韓米協力の下で正確に分析しなければならない。それが終わってから、何らかの立場表明があるだろう」と述べた。ただし、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の終戦宣言の提案と北朝鮮のキム・ヨジョン労働党中央委員会副部長の相次ぐ談話で再び動き始めた朝鮮半島平和プロセスのモメンタムを続けていくため、状況管理に努めている様子だ。パク首席はインタビューで「北朝鮮の行動には常に重層的な意味があるため、正確な分析を通じて北朝鮮の意図を正確に把握して対応するのが、今我々が持つべき態度だと思う」と述べた。

クォン・ヒョクチョル記者、イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1013278.html韓国語原文入力:2021-09-30 02:33
訳H.J

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