ユン・ソクヨル前検察総長が29日、ソウル瑞草区(ソチョグ)の梅軒・尹奉吉(ユン・ボンギル)記念館で開かれた大統領選挙出馬記者会見で、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の韓日関係の悪化と関連し、「理念偏向的な『竹槍歌』を歌っているうちに、今日に至った」と批判した。「竹槍歌」は日本政府の一方的な半導体材料輸出規制措置で非常事態に陥った2019年7月、チョ・グク元法務長官が自身のフェイスブックに掲載した歌(東学農民戦争を唄った歌詞で、1980年代の民主化運動当時広く歌われた)だ。
ユン前総長は「政府が政権末期に収拾しようとしているが、うまくいっていないようだ」と現状を分析したうえで、「韓日関係において、過去のことについては、後代が歴史を正確に記憶するよう、真相を明らかにしなければならない問題があるが、未来については、将来世代のためにも実用的に協力していかなければならない関係だと思う」と述べた。
そして「現政権が発足してからめちゃくちゃになった慰安婦問題や強制徴用問題、韓日間の安保協力や経済・貿易問題、このような懸案を全部一つのテーブルに乗せて『グランドバーゲン』を目指す形で問題にアプローチすべきだ」と主張した。明確には言及しなかったものの、日本が執拗に要求してきた安保協力分野で歩調を合わせる見返りに、歴史問題などで多少譲歩を得ようという構想と言える。しかし、日本政府がこれまで堅持してきた冷ややかな態度からして、「グランドバーゲン」構想に好意的な反応を示すと期待するのは難しい状況だ。日本は、強制動員被害者への賠償問題などの懸案で、韓国が先に受け入れられる譲歩案を示すべきという立場を貫いている。
ユン前総長はまた、韓国政府が進むべき外交・安全保障政策について、「韓国が(世界に)文明国家の普遍的価値に基づいているという明確な立場を示すべきだ」と述べた。「国際社会は人権と法治、自由民主主義の価値を共有する国家間だけで核心先端技術と産業施設を共有する体制へと急速に変化している。外交・安全保障と経済、国内問題と国際関係が切り離すことのできない一つの問題になった」と述べた。米国のジョー・バイデン政権が進めている「サプライチェーン再編」の動きに触れ、韓国が「自由民主主義の価値を共有する国」と協力を強化し、中国などにも「普遍的価値に基づいているという明確な立場」を示し、断固たる態度で臨むべきという立場を明らかにしたわけだ。
ユン前総長は自分の立場を改めて確認するように、「大韓民国がどんな国なのか、はっきりとしたアイデンティティを示し、敵と友人、競争者と協力者すべてに予測可能性を与えなければならない」と付け加えた。米中間で「戦略的バランス」を維持するため、苦心してきた文在寅政権とは異なり、自由民主主義的価値を共有する米日と安保協力を深めていく方向に重きを置いたものとみられる。この主張は韓国の保守主流派の主張を事実上代弁するもので、彼と同じ小学校を卒業し、外交・安保分野の諮問をしているキム・ソンハン元外交部第2次官の影響を受けたものと推定される。