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[社説]板門店・シンガポール合意を基に「北朝鮮との対話」でまとまった韓米首脳

登録:2021-05-24 06:29 修正:2021-05-24 07:01
バイデン大統領、文大統領との会談で立場を変える 
ソン・キム氏を対北朝鮮特別代表に予告なしの任命…北朝鮮も応じるか 
ワクチン支援の規模は残念だが「包括的パートナーシップ」に期待 
「ミサイル制限」42年ぶりに解除…中国けん制の意図も 
「中国に対する圧迫」の要求には“国益”を中心に据え対処を
文在寅大統領とジョー・バイデン米大統領が21日午後(現地時間)、ホワイトハウスで首脳会談後に共同記者会見を行っている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領は21日(現地時間)、米国のホワイトハウスで首脳会談を行い、対北朝鮮政策、新型コロナワクチンにおける協力、半導体やバッテリーのサプライチェーンについての協力、対中国政策についての協力などを論議した。

 今回の首脳会談で文大統領とバイデン大統領が、2018年4月の「南北板門店宣言」と同年6月の「朝米シンガポール共同声明」に基づき、対話と外交を通じた北朝鮮に対するアプローチを模索することに合意したのは、意味ある成果だ。当初、バイデン政権は、首脳会談を中心とするトランプ大統領のトップダウン型の北朝鮮との対話に批判的だった。しかし、韓米首脳会談でバイデン大統領がこれまで否定的だったシンガポール共同声明を認める方向に立場を変えたのだ。韓国政府がバイデン政権を粘り強く説得した結果だという。

 バイデン大統領は首脳会談後の記者会見で、米国務省のソン・キム東アジア太平洋次官補代行を、北朝鮮と交渉する「対北朝鮮特別代表」に予告なしに任命した。対北朝鮮特別代表をバイデン政権発足の4カ月後に文大統領との首脳会談後の記者会見の場で発表することで、北朝鮮に対話再開のシグナルを送ったということだ。バイデン大統領はソン・キム特別代表を紹介する際、英文の役職名に、通常使われる「北朝鮮(North Korea)」ではなく北朝鮮の正式な国号である「朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)」を用いた。北朝鮮を交渉相手として尊重するという態度と読み取れる。バイデン政権が新型コロナの防疫や経済回復、中東問題に集中するために、対北朝鮮政策の優先順位が下がるのではないかという懸念があったが、今回の首脳会談でそれが払拭されたことは幸いだ。

 米国が様々な形での南北交流への協力を含めた板門店宣言を認めたことも、南北関係の自主性と独自性を広げるきっかけになると期待される。トランプ政権は対北朝鮮制裁を持ち出し、インフルエンザ治療薬であるタミフルの北朝鮮への支援や南北の道路・鉄道連結事業などの韓国政府の南北関係改善への動きを妨げた。文大統領は首脳会談後の記者会見で「バイデン大統領は南北の対話と協力に支持を示した」とし、「米国との緊密な協力のもとで南北関係の増進を促進し、朝米対話の好循環を成し遂げる」と明らかにした。

ジョー・バイデン米大統領は21日(現地時間)、ツイッターに文在寅大統領とのホワイトハウスでの昼食を兼ねた単独首脳会談の様子を公開した//ハンギョレ新聞社

 ただし、北朝鮮が対話に応じるかは不透明だ。北朝鮮が対話の条件として提示した対北朝鮮制裁の緩和や韓米合同演習の調整など、北朝鮮敵視政策の撤回についての言及がないうえ、北朝鮮も当面は防疫や経済、国民の生活などの内部の問題に集中するため余力はない。韓国と米国政府が北朝鮮と多方面からの接触に積極的に乗り出し、今回両国首脳が合意した対北朝鮮政策を十分に説明する必要がある。今年8月に予定されている韓米合同演習についても、両国が方針をすみやかに決める必要がある。北朝鮮もせっかく対話の環境が造成されたのだから、この機会を逃さず応じてほしい。

 国民的な関心を集めたバイデン政権の新型コロナワクチンの支援については、米国が55万人の韓国軍全員にワクチンを提供することにした。また両国は、米国のワクチン技術と韓国の生産能力を結合し、グローバル・パートナーシップを構築する案も協議した。韓国国民が期待したほどの大規模なワクチン支援は行われないのは残念だが、今後両国がワクチンについての協力を拡大する可能性は残しておいたわけだ。両国のワクチン協力は、全世界へのワクチン供給を増やし、新型コロナの終息を早めることに貢献できるという点で意味が大きい。

 韓国のミサイルの射程距離を800キロメートルに制限してきたミサイル指針が、首脳会談を機に42年ぶりに終了した。韓国がミサイルとロケットの開発主権を確保したという意味がある。しかし、米国が北朝鮮対応用としては十分な800キロメートルの射程距離の制限廃止に同意した背景には、中国に対するけん制の意図があるものとみられる。

 今回の首脳会談では、クアッドや南シナ海の航海の自由、台湾海峡における平和と安全なども議論された。この問題は米国が中国と鋭く対立している懸案だ。文大統領は「台湾問題について中国に強硬な立場を取るよう(韓国に)求める米国の圧迫はあったか」という記者の質問に「そのような圧迫はなかった」と答えたが、米国の中国に対する圧迫への参加要求は続く可能性が高い。米中対立の渦中では、何より韓国の国益を中心に据え、冷徹かつ賢明に対処することが重要だ。

 サムスン、現代、SK、LGなどの国内の大企業は、今回の首脳会談を機に、半導体、バッテリー、バイオなどの先端産業分野で44兆ウォン(約4兆2000億円)規模の対米投資計画を発表した。この投資が両国間の経済協力を強化し、未来への成長動力をつくるきっかけとなることを期待する。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/996232.html韓国語原文入力:2021-05-23 14:42
訳M.S

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