本文に移動

北朝鮮男性、ウェットスーツで泳いで韓国へ…軍、再び「警戒失敗」

登録:2021-02-18 02:17 修正:2021-02-18 08:02
東海岸上陸後、破れた排水路経て国道へ移動 
監視装置に数回捉えられたが、適切な措置なし 

国防長官「申し訳ない…徹底的に調査する」
海岸の哨所。ただし、今回東海の民間人立入統制線で捕らえられた北朝鮮男性が韓国へと越境した地域の部隊とは関係のない哨所だ=資料写真//ハンギョレ新聞社

 16日に東海(トンへ)の民間人立入統制線(民統線)で捕らえられた北朝鮮の男性は、東海を泳いで越南(北朝鮮から韓国へと渡ること)したことが明らかとなった。この男性は、軍の監視装置に何度も捕捉されていたものの、現場では対応措置を取らなかったことも明らかとなった。これについてソ・ウク国防部長官は「申し訳ない」と謝罪した。

 合同参謀本部は17日、資料を発表し、その中で「昨日、東海の民統線北方で身柄を確保した人員(亡命と推定)は、潜水服と足ヒレを着用し、海上を通ってGOP(全般前哨)以南の統一展望台付近の海岸に上陸したと推定される」と明らかにした。20代前半とみられるこの男性は、海岸から鉄条網下の排水路を通った後、国道7号線に沿って南に移動していたところ、16日午前4時20分ごろに民統線検問所の映像(CCTV)に捕捉された。軍当局は、この人物を民間人と見て、具体的な越南経路や動機などを調査しているという。

 潜水服と足ヒレは海岸付近で発見された。軍当局者は「潜水服だが、軍が使うスーツではなく防水服のようなもので、漁師が海産物を採る際に着る『モグリ』と呼ばれる潜水服だと理解すればよい」と語った。この北朝鮮住民が通った海岸沿いの鉄条網下の排水路の遮断幕は、破れていることが確認された。

 合同参謀本部は「排水路の遮断施設が不十分だったことを確認した」と認めた。鉄条網下の排水路は昨年7月の江華島越北(韓国から北朝鮮に渡ること)事件の際も問題となっている。20代の脱北男性が排水路を通って鉄条網を突破し、その後、漢江(ハンガン)を泳いで北朝鮮に渡ったことが明らかとなったためだ。当時、軍当局は全前線にわたって鉄条網の排水路を点検するという対策を打ち出したが、口先だけだったことがあらわになったかたちだ。野党「国民の力」のハ・テギョン議員はこの日の国会国防委員会で「昨年8月1日付で、排水路を全数調査して措置を終えたという報告を受けている」とし「新しい鉄条網がたった6カ月でさびついて開いてしまったのか」と皮肉った。これに対し、合同参謀本部のパク・チョンファン作戦本部長は、「(事件が発生した)22師団には排水路が48本あるが、唯一その排水路だけは補強が行われていないことを把握した」と釈明した。

 現場の部隊のお粗末な警戒態勢も確認された。合同参謀本部は「その人物は、上陸後に我が軍の監視装置によって数回捕捉されているが、適切な措置は取られなかった」と現場調査の結果を明らかにした。ただし軍当局者は「現在、現場調査が進められているところなので、具体的にどこでどのように、何回くらい軍の監視装置に捉えられたかは、断定的には言えない」と述べた。海岸の警戒哨所には海岸レーダーをはじめ、海岸複合監視カメラや赤外線戦場監視システム(TOD)などが、重層的に監視網を形成するように設置されており、東海岸に沿って南北をつなぐ国道7号線上の前方地域の周辺にも、韓国軍の監視装置が設置されているという。これらの装置が無用の長物だったわけだ。

 現場の部隊は16日午前4時20分にこの男性が検問所の監視カメラに捉えられてから3時間後の午前7時20分になって、ようやく身柄を確保した。合同参謀本部は「民統線内の不明人員を識別した際の作戦手順に沿って」作戦兵力を投入したことを明らかにしたものの、「遅きに失した対応ではないか」との指摘も出ている。

 警戒作戦の失敗が明らかになったことから、徹底的な調査、問責、対策などが相次ぐとみられる。合同参謀本部は「今回の状況を重く認識し、地上作戦司令部と合同で現場調査を進めており、調査結果に基づいて後続対策を立て、厳正な措置を取る」と付け加えた。ソ・ウク国防部長官はこの日の国会国防委員会に出席し「長官として、失望を抱かせたことを申し訳なく思う」とし「まず調査を通じて明確に確認し、後続措置を取る」と述べた。ソ長官はまた、このところ警戒の失敗が相次いでいることについて、前方の警戒態勢について全数調査を実施し対策を立てるべきとの議員の指摘に対し、「全般的な実態調査を行い、後続措置を取る」と述べた。

 東海岸沿いの東部戦線のはずれにあるこの地域は、北朝鮮住民などによる越南事件などがしばしば起きているところだ。北朝鮮住民が非武装地帯(DMZ)のGOPの鉄条網を越えて来た昨年11月のいわゆる「越柵越南」事件や、2012年10月に北朝鮮軍の兵士が鉄条網を越え、GOP部隊哨所の戸を叩いた「ノック亡命」事件も、すべて同じ師団の管轄地域で発生している。

パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/983285.html韓国語原文入力:2021-02-17 09:38
訳D.K

関連記事