共に民主党が2月末に退職を控える釜山(プサン)高裁のイム・ソングン部長判事の弾劾手続きに事実上突入したことで、憲政史上初の判事弾劾が早ければ2月初めにも国会で可決されるか、関心が集まっている。29日現在、弾劾訴追案の発議に名を連ねる意思を明らかにしている議員は可決定足数の151人に達し、弾劾が国会で可決されるとの予想が優勢となっている。保守野党は「判事飼い馴らし」として強く反発している。
民主党、一日中「押印」集めに奔走
民主党のイ・タンヒ議員室は、キム・ヨンミン、パク・チュミン、イ・ソヨン、ミン・ヒョンベの各議員室などとともに、イム部長判事の弾劾訴追案発議のために一日中議員の「押印」を集めて回った。29日午後6時現在、「弾劾訴追案に名を連ねる」との意思を明らかにしている議員は、イ・ナギョン民主党代表を含め151人に達することが確認された。同党関係者はこの日「来月1日午前までに各議員の合意を取れば、可決定足数『151人』をはるかに超える議員が発議案に名を連ねるとみられる」と述べた。
弾劾訴追案が来月1日に発議されれば、2日に開かれる国会本会議に報告され、3日または4日の本会議で表決処理される可能性が高い。国会法は、弾劾訴追が発議されれば、その後初めて開かれる本会議に報告し、報告された時点から「24時間以降72時間以内」に無記名投票で表決することを定めている。
民主党内では可決されるとの見通しが優勢だ。同党のソル・フン議員はこの日午前のYTNラジオに出演し、「裁判官弾劾を党の方針として決定する必要はない。しなくても十分に弾劾まで持って行けるだろう。4日までにはおそらく弾劾されるだろう」との見通しを示した。弾劾訴追案を準備中のイ・タンヒ議員はフェイスブックに「(イム判事は)裁判所も判決によって、裁判の独立を侵害した反憲法行為者と公認した人物」とし「裁判の独立を侵害した人物を憲法裁判に付すのは国会の憲法上の義務だ。汚職をした判事が名誉の退職をし、元判事弁護士として活躍し、再び公職に就くようなことがあってはならない」と指摘した。
民主党内では、可決の見通しが高いとみる理由として、イム部長判事による憲法違反行為が判決文に明記されていること、ユン・ソクヨル検察総長やチョン・ギョンシム教授の一審などを経たこどで、支持者の間で司法改革を支持する世論が強まっていることなどが挙がっている。
ただ、意外な結果が出る可能性があるという慎重論もある。裁判官弾劾推進派のある議員は「多くの議員が支持者の顔色をうかがって発議者リストには名を載せると思う。しかし、個人的に会うと『主犯はヤン・スンテ(前最高裁長官)、イム・ジョンホン(元裁判所行政処次長)なのに、彼らは弾劾せずにイム部長判事だけでよいのか』と言う人がいる。弾劾案の投票は無記名のため、結果は断言できない」と述べた。
過去2度の裁判官弾劾は失敗
裁判官弾劾訴追案の発議は憲政史上、今回が3度目だ。1985年のユ・テフン元最高裁長官に対する弾劾訴追案は、在籍議員247人のうち賛成95票、反対146票、棄権5票、無効1票で否決された。2009年、米国産牛肉輸入反対ろうそく集会の裁判介入疑惑が浮上したシン・ヨンチョル最高裁判事の弾劾訴追発議は、72時間以内に採決が行われず自動廃棄された。最高裁判事ではない第一線の裁判官に対する弾劾案発議は今回が初。
弾劾案が発議されれば、民主党議員は党の方針ではなく個別の判断に従って自由投票することになる。裁判官弾劾案も人事関連の表決であることから、党の方針としての表決の強制はできないというのが民主党指導部の判断だ。国会在籍議員の過半数の151人が賛成すれば、弾劾は可決される。最終決定は憲法裁判所が担う。弾劾可決後、国会は憲法裁に弾劾審判を請求する。9人の憲法裁判官のうち6人以上が同意すれば、弾劾が最終決定される。
保守野党、「裁判所の飼い馴らし」と激しく非難
保守野党は、民主党による判事弾劾推進に強く反発している。「国民の力」のペ・ジュニョン報道担当はこの日、論評を発表し「万が一『見せしめ』とか『裁判所から政権寄りの人事や判決を引き出すための飼い馴らし』の弾劾であることが明らかとなれば、強い国民的逆風に耐えねばならないだろう」とし、「キム・ミョンス最高裁長官も責任を持って裁判官と裁判所を総括するというのなら、当然にも国民の前でこれに対する立場を明らかにすべき」と主張した。前日夜の与党による弾劾推進発表の直後には、国民の力は公式論評は出さずに慎重な立場を守っていたものの、積極的な攻勢に転じて民主党に対抗する構えを見せている。
ソウルと釜山の市長補欠選挙に出馬した候補や国民の力の議員たちも、民主党による判事弾劾推進は事実上の「判事飼い馴らし」だと一斉に主張した。元判事でソウル市長選候補として名乗りを上げるナ・ギョンウォン前議員はこの日、フェイスブックで「判事弾劾、今度は大韓民国を完全に崩壊させるということ」とし「司法府は自由民主主義を守る最後の砦だ。その司法府さえこれからは文在寅(ムン・ジェイン)支持権力にひざまずかせるということだ」と反発した。くわえて「判事弾劾の時計がこんなにも速くなっているのは、明らかにチェ・ガンウク議員の一審判決に対する報復とみられる。『身の程知らずにもチョ・グク防衛隊を傷つけた罪』を問うということ」とし、「判事の手足すら政治権力によって縛られてしまえば、文在寅政権は、はばかることなく独裁の道を疾走するだろう」と述べた。前日にソウル中央地裁がチョ・グク元法務部長官の息子の虚偽のインターン経歴確認書を作成した容疑で起訴されていた「開かれた民主党」のチェ・ガンウク代表に対して、懲役8月、執行猶予2年を言い渡したことと無関係ではないということだ。
オ・セフン元ソウル市長も「憂慮していた通り、民主党は憲政史上初の『判事弾劾』を開始した」とし「自らの陣営に不利な判決を下す判事を公然と脅して飼い馴らし、口をつぐませるということでないなら何なのか。この傍若無人で傲慢な民主党の暴走を止められるのは、国民とソウル市民の皆さんしかいない」と述べた。