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蔚山住商複合マンション、高層階が炎で包まれても人命被害がなかった背景は

登録:2020-10-10 08:41 修正:2020-10-10 10:48
建物の外壁のアルミニウムパネルの中に残り火 
強風などで鎮火が困難 
住民と消防当局の迅速・適切な対応が 
大規模惨事を防げた理由
9日午前、蔚山住商複合マンションの火災現場=蔚山消防本部提供//ハンギョレ新聞社

 8日夜に発生した蔚山(ウルサン)の33階建ての住商複合マンションの火災は、2時間後に大きな火は抑えられたが、強風により建物の外壁に残っていた火種が断続的に大きくなり、5時間40分を経て全ての火が消された。鎮火に長時間要したのにも関わらず、死亡または重傷者が発生しなかったのは、住民と消防当局の迅速かつ適切な対応が役立ったとみられる。

 蔚山消防本部は、9日午後2時50分にこのマンションの火災の火を完全に鎮火したと報告した。このマンションの火災は、前日夜11時7分に12階バルコニーで始まり、9日午前1時に大半の火は消されたが、同日午前まで、建物の上層部から黒い煙が噴き出て、火が広がっては消える状況が断続的に続いた。

 蔚山消防本部は「建物の外装材が、当初伝えらえていたドライビットではなくアルミニウム複合パネルだと確認された。パネルの中に隠れていた火種が風に乗り、断続的に不特定の階で火が再び強まり、鎮火に多少の時間を要した」と説明した。アルミニウム複合パネルは、二つのアルミニウム板の間をシリコンなどの化学樹脂で接着し、建物の外壁に付けるもので、アルミニウム自体が熱に強くないうえ、板の間に入った化学樹脂が火でよく燃えることから、火災に脆弱であることが知られている。

 消防当局はこれに対応し、同日、釜山(プサン)・大邱(テグ)・慶尚北道・慶尚南道など近隣の市・道の消防本部の高架はしご車・高性能化学車などの特殊消防車両やポンプ車、水槽車などの特殊車両を出動させ、消防ヘリも動員し、残り火の鎮火に総力をあげた。また、建物の屋上と15階・28階などの避難待機階にいた住民77人を救助し、煙を吸ったりかすり傷を負った負傷者93人を病院に搬送した。

 蔚山消防本部は「負傷者の中には消防隊員1人が含まれている。ほとんどは軽傷者で、治療後に退院し、重傷者3人も容体が好転し帰宅した。死亡者はいない」と述べた。127世帯の住民が住む高層マンションで、真夜中に建物全体を包むような大きな火災が発生したにも関わらず、大きな惨事にはならなかった。このマンションの14階に住むある住民(50代)は「初めに消防士8人ほどが『焦げたにおいがする』という通報を受けて来て、下の階に降りて確認作業をしていたが、その時急に13階から火柱が上がった」と語った。消防当局は当時、現場を確認していたところだったという。火災発生の初期の迅速な対応を傍証する部分だ。蔚山消防本部は当時、高架はじご車を動員しても高層部の火災鎮圧に限界が生じると、消防隊員をマンションの中に送り、各部屋を回らせ、内部に移った火を消し、人命捜索と救助を繰り広げるようにした。特に15階の避難待避空間に「前進指揮所」を設置し、交代で200人ほどの消防救助隊員を配置し、人命救助作業を進めた。

 マンションの住民たちも水で濡らしたタオルを口に当て、低い姿勢で非常階段を下りて外に抜け出るなど、迅速な退避をしたことが分かった。煙のために外に出られなかった高層階の住民たちも、待避空間が用意された15階と28階、屋上などの場所に行き、消防隊の救助を待ち、落ち着いて対応したことが分かった。当時のマンション内部のスプリンクラーは正常に作動したと消防当局は伝えた。

 蔚山消防本部は同日午後、関係機関と合同で1次現場検証を行い、正確な火災原因を調査した。蔚山地方警察庁は同日、40人の担当チームを設け、捜査をすることにした。

シン・ドンミョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/965157.html韓国語原文入力:2020-10-10 02:36
訳M.S

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