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事業場で繰り返し発生する集団感染…政府の対応は“後手後手”

登録:2020-06-01 06:15 修正:2020-06-01 15:10
コールセンターから物流センターまで 
密集度高い労働環境で新型コロナ陽性率高いのに 
集団感染発生してから現場点検、細部指針 
クーパン物流センターなど防疫不十分135件 
 
物流施設4361カ所の点検を発表したが 
自主点検であり、改善も強制できず 
「体調が悪ければ休む」など強制案が必要 
「雇用部が事業所の防疫主体になるべき」
5月27日午後、従業員が新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けたソウル松坡区長旨洞のマーケットカーリーの常温第1物流センターで、防疫作業関係者が緊急防疫を行っている//ハンギョレ新聞社

 コールセンターや物流センターなど密集した労働環境で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染が相次いで発生しているにもかかわらず、韓国政府は遅れた対応を続けている。先月31日、中央災害安全対策本部(中対本)はコールセンターと情報技術(IT)産業など密集度の高い事業所と全国の物流施設の防疫状況を点検する計画を発表した。しかし、点検計画の多くが事業主や施設管理者に独自に点検した結果を提出させるうえ、改善を強制することもできず、積極的な防疫管理対策になるかは疑問だ。

事業所における新型コロナ集団感染の現況//ハンギョレ新聞社

 中対本は同日、クーパン物流センターなど23カ所を緊急現場点検したところ、作業服の共同使用など135件の防疫管理不十分事項が摘発されたと発表した。従業員のマスク着用や作業者間の距離置き、装備・設備消毒における不備などが主な内容だ。防疫管理者を指定していなかったり、独自の防疫指針がないところもあった。国土交通部は指摘された事例を一日も早く改善することを事業主に求める一方、各地方自治体と共に今月11日まで宅配ターミナルや食品倉庫など全国の物流施設4361カ所を点検する。雇用労働部はコールセンターやIT産業、肉加工業、電子部品の組立業など、労働者が密集して働く事業所で防疫管理の自主点検を実施した後、その結果を地方雇用労働官署に提出するようにした。また、産業安全保健公団と民間災害予防専門機関などは建設現場1万5千カ所と製造業2万1千カ所を担当し、防疫管理状況を確認する。

 労働環境が劣悪な事業所は、COVID-19の大規模感染の主な拠点となってきた。同日だけでも、クーパン物流センター関連の感染者は従業員75人を含め111人(31日正午基準)に増えた。中央防疫対策本部(防対本)は、物流センターのCOVID-19陽性率は30日現在、2.5~2.9%だと明らかにした。京畿道富川(プチョン)と高陽(コヤン)物流センターで働いた従業員のうち約83.5%に検査を実施して出た中間集計なので、これから陽性率はさらに高まる見通しだ。物流センターでは多くの人員が密集して働いており、安全帽や作業服も共同で使うところもあった。これに先立ち、ソウル九老区(クログ)のコールセンターでは、同じフロアー(11階)で勤務する労働者216人のうち94人がCOVID-19に感染し、43.5%に上る陽性率を記録した。狭い空間の勤務環境がCOVID-19の感染拡大にどれほど大きな影響を及ぼすかを如実に示した事例だ。

5月28日、京畿道高陽市徳陽区元興洞のクーパン高陽物流センター入口で保安要員と市の公務員たちが慌ただしく動いている//ハンギョレ新聞社

 にもかかわらず、政府の対策は依然として遅れた防疫点検の水準にとどまっている。これに先立ち、3月初めには九老コールセンターに初の感染者が発生し、大規模な感染拡大が起きたことを受け、政府は3月中旬、大型コールセンターの現場点検と専担監督官の指導・管理方案などを対策として打ち出した。しかし最近、KB生命保険のコールセンターで、再び労働者8人が集団感染した。

 点検の実効性も追求すべき問題だ。労働部は事業所に防疫管理指針のチェックリストを作成してもらい、問題のある事業所を抜き打ち点検する計画だと説明した。事業主が偽りのチェックリストの提出や改善要求事項を履行しなくても、これといって制裁手段はない。パク・ヨンマン雇用労働部労災予防補償政策局長は「事業所が多いため、労働監督官は高危険事業所を中心に、民間機関が小規模事業所を管理せざるを得ない状況だ」と述べた。緑色病院のイム・サンヒョク院長(職業環境医学)は「対面業務が必ず必要な販売・訪問労働者や介護労働者、未登録移住労働者など、防疫に脆弱な死角地帯を政府が直接探し回りながら、先制する防疫対策を講じなければならない」と指摘した。

 政府は「体調が悪ければ3~4日間休む」という防疫守則を強調しているが、最近確認された労働者の多くは「体調が悪くても休めない」状況だ。クーパン物流センターの従業員の大多数は、日雇い労働者や契約職、外注会社の所属であることが分かった。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「政府が『体調が悪ければ休む』という防疫守則を勧告するだけではなく、『体調が悪くても休めないように』する企業や事業主に強い制裁を加える案を講じるべきだ」と指摘した。

ファン・イェラン、チェ・ハヤン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/947294.html韓国語原文入力:2020-06-01 02:42
訳H.J

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